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第6章 風雲志太家編
16.夜襲
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秋庭軍は立天野城を目指し、兵を進めていた。
時間は丑三つ時、暗闇の中で気付かれぬようかつ急いで駆け抜けて行く大勢の兵たちの姿があった。
それからしばらく経った後に家春が兵たちに向けて言った。
家春
「志太祐藤は、人縄筋ではいかぬ男と聞く。志太軍による伏兵には十分に気を付けられよ。」
家春は真剣な顔つきで兵たちに諭していた。
志太軍の強さは秋庭家にも伝わっていた。
草木も眠る丑三つ時とは言えど、相手は百戦錬磨の大名家。
いかなる時でも徹底した警備を敷いているかも知れぬ故、決して油断はできないであろう。
場合によっては志太軍による奇襲を逆に受ける可能性も十分に有り得るのだ。
最悪のストーリーとしては、志太軍に返り討ちにされて秋庭軍が退却する事だ。
陰で立天野城の攻略を命じた柳家は、立天野城を攻略出来なかった事に対して厳しい処断を下すであろう。
家春自身が斬首に処される事によって秋庭家が取り潰されるかも知れない。
或いは、見せしめの為に人質を皆殺しにされるも知れない。
こうした様々な不安を胸に家春らは立天野城を目指して進軍を続けていた。
が、しかしその心配も杞憂に終わったようであり、何と秋庭軍は志太軍と一度も遭遇する事無く立天野城付近にまで辿り着いたのであった。
晴正
「かような事もあるのでございますな。どうやら天は我ら秋庭家に味方されたようですな。」
晴正は驚きながら家春にそう言った。
家春
「うむ、志太軍による罠を警戒しておったのじゃが、何事も無くここまで辿り着くとは儂も驚いておる。」
家春もまた同じく驚きの表情を見せていた。
実はこの時、立天野城下に送られた志太家の家臣たちは、翌日に控えた志天城での評定に出席する為に出払っていた。
その為、立天野城は残された郷田家の家臣や兵たちだけの手薄な状態となっていたのである。
それにしても今の郷田家の兵は城の周りの警備をも行えない程の手薄な状態だったのであろうか。
否、そうでは無かった。
郷田家の兵は手薄とは言えど警備を行える程の人数は存在していたが、誰もがそれを行おうと思わなかったのである。
ーそれには理由があった。
立天野城の内政に行き詰まりを感じていた郷田家は、家名存続の為に志太家の傘下となり、以後は志太家の庇護を受けるようになった。
やがて志太家による内政で立天野城は復興し始め、志太家の傘下に入る前の郷田家からは想像がつかぬほど安定した情勢になりつつあった。
そしてこの復興に費やした費用は志太家がほぼ全てを負担し、郷田家としての負担は皆無に等しい程であったと言われている。
郷田家は自らが動かなくとも志太家が良い様に処理をしてくれる、まさに負んぶに抱っこという状態であった。
そうした至れり尽くせりの状態が続いた事で郷田家の意識は変えられていった。
「何かあったとしても志太家が守ってくれるから大丈夫。」
「郷田家は志太家の傘下でいる限りは安泰であろう。」
そういった安全神話が郷田家の中でいつしか生まれてきた。
しかし、その安全神話も間もなく崩壊をし始めようとしている事を郷田家は知る由もなかった…
時間は丑三つ時、暗闇の中で気付かれぬようかつ急いで駆け抜けて行く大勢の兵たちの姿があった。
それからしばらく経った後に家春が兵たちに向けて言った。
家春
「志太祐藤は、人縄筋ではいかぬ男と聞く。志太軍による伏兵には十分に気を付けられよ。」
家春は真剣な顔つきで兵たちに諭していた。
志太軍の強さは秋庭家にも伝わっていた。
草木も眠る丑三つ時とは言えど、相手は百戦錬磨の大名家。
いかなる時でも徹底した警備を敷いているかも知れぬ故、決して油断はできないであろう。
場合によっては志太軍による奇襲を逆に受ける可能性も十分に有り得るのだ。
最悪のストーリーとしては、志太軍に返り討ちにされて秋庭軍が退却する事だ。
陰で立天野城の攻略を命じた柳家は、立天野城を攻略出来なかった事に対して厳しい処断を下すであろう。
家春自身が斬首に処される事によって秋庭家が取り潰されるかも知れない。
或いは、見せしめの為に人質を皆殺しにされるも知れない。
こうした様々な不安を胸に家春らは立天野城を目指して進軍を続けていた。
が、しかしその心配も杞憂に終わったようであり、何と秋庭軍は志太軍と一度も遭遇する事無く立天野城付近にまで辿り着いたのであった。
晴正
「かような事もあるのでございますな。どうやら天は我ら秋庭家に味方されたようですな。」
晴正は驚きながら家春にそう言った。
家春
「うむ、志太軍による罠を警戒しておったのじゃが、何事も無くここまで辿り着くとは儂も驚いておる。」
家春もまた同じく驚きの表情を見せていた。
実はこの時、立天野城下に送られた志太家の家臣たちは、翌日に控えた志天城での評定に出席する為に出払っていた。
その為、立天野城は残された郷田家の家臣や兵たちだけの手薄な状態となっていたのである。
それにしても今の郷田家の兵は城の周りの警備をも行えない程の手薄な状態だったのであろうか。
否、そうでは無かった。
郷田家の兵は手薄とは言えど警備を行える程の人数は存在していたが、誰もがそれを行おうと思わなかったのである。
ーそれには理由があった。
立天野城の内政に行き詰まりを感じていた郷田家は、家名存続の為に志太家の傘下となり、以後は志太家の庇護を受けるようになった。
やがて志太家による内政で立天野城は復興し始め、志太家の傘下に入る前の郷田家からは想像がつかぬほど安定した情勢になりつつあった。
そしてこの復興に費やした費用は志太家がほぼ全てを負担し、郷田家としての負担は皆無に等しい程であったと言われている。
郷田家は自らが動かなくとも志太家が良い様に処理をしてくれる、まさに負んぶに抱っこという状態であった。
そうした至れり尽くせりの状態が続いた事で郷田家の意識は変えられていった。
「何かあったとしても志太家が守ってくれるから大丈夫。」
「郷田家は志太家の傘下でいる限りは安泰であろう。」
そういった安全神話が郷田家の中でいつしか生まれてきた。
しかし、その安全神話も間もなく崩壊をし始めようとしている事を郷田家は知る由もなかった…
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