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第6章 風雲志太家編
12.柳家の策略
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立天野城より南方の方角に柳城という城が存在していた。
この地を拠点とする大名の柳幸盛は、周辺大名国への侵略計画を着実に進めていたのである。
その手始めとして隣国である秋庭家の所領である海原城の制圧を目標に掲げた。
度重なる柳軍の攻撃により最終的には秋庭家は降伏し、従属化させるまでに至った。
幸盛
「海原城を抑えた当家は、国力も豊かなものとなった。この勢いで他の大名家も制圧致そうぞ。」
幸盛は、自信満々げに言った。
彼の豪快な笑い声があたりにこだましていた。
すると、一人の家臣が幸盛に対して言葉を発した。
家臣の名は、柊晴清(ひいらぎ はるきよ)といった。
・柊晴清(ひいらぎ はるきよ)
柳家 参謀。
農民の出身で貧困にあえぐ家族を救う為に一念発起し、柳家へ士官。
その後は天性の才能を発揮し、数々の功績をあげた。
その結果、異例の速さで若くして参謀の地位に就く。
幸盛による悪政については当初は否定的な意向を見せていたが、出世を重ねていく過程でその罪の意識も薄れていき、挙げ句の果てに自身の家族をも自らの手によって粛清したという。
晴清
「幸盛様、次なる目標ですが立天野城がよろしいかと。」
幸盛
「ほう、立天野城か。最近、志太家が傘下に加えた地では無いか。」
幸盛は少し驚いた表情で答えた。
志太家は将軍守護職を三浦将軍家より賜っている。
その志太家を理由もなく攻めるとなれば、それは将軍家に刃を向けるのと同じ意味があると言っても良い。
さらに将軍家に仇をなす逆賊の烙印を押され、将軍家の名誉を守る為という名目で周辺大名家によって目の敵にされ、自家を滅ぼされかねない。
そんなリスクを背負ってまでして志太家を攻める理由があるのだろうか。
幸盛は、晴清の今回の策略には気持ちが進まない様子であった。
晴清
「出兵の際は秋庭の軍を使えばよろしいかと。さらに立天野への出兵は秋庭が勝手に起こした事であると各国に思わせられれば、我らが狙われる事はございませぬ。」
晴清の策略とは、こうである。
従属させている秋庭家に立天野城の制圧を命じる。
その際には、秋庭家が勝手な判断で立天野城に攻め込んだという噂を各国に流し、秋庭家に非があるように見せる工作を行う。
そこで柳家は、秋庭家を成敗するという名目で立天野城に攻め込み、これを滅ぼす。
このどさくさで立天野城はもちろん、海原城も柳家の支配下に置いてしまうというものである。
全くもってとんだ茶番のようには見えるが、工作次第ではそれが真実のように見える事も十分に有り得るのだ。
時に戦国の世とはそういう物なのである。
幸盛
「ふむ、それは実に面白いのう。では晴清よ、そのようにやってみよ。此度の件はお前に任せようぞ。」
幸盛は先程のもやもやとした表情から一転し、不気味な笑みを浮かべていた 。
この地を拠点とする大名の柳幸盛は、周辺大名国への侵略計画を着実に進めていたのである。
その手始めとして隣国である秋庭家の所領である海原城の制圧を目標に掲げた。
度重なる柳軍の攻撃により最終的には秋庭家は降伏し、従属化させるまでに至った。
幸盛
「海原城を抑えた当家は、国力も豊かなものとなった。この勢いで他の大名家も制圧致そうぞ。」
幸盛は、自信満々げに言った。
彼の豪快な笑い声があたりにこだましていた。
すると、一人の家臣が幸盛に対して言葉を発した。
家臣の名は、柊晴清(ひいらぎ はるきよ)といった。
・柊晴清(ひいらぎ はるきよ)
柳家 参謀。
農民の出身で貧困にあえぐ家族を救う為に一念発起し、柳家へ士官。
その後は天性の才能を発揮し、数々の功績をあげた。
その結果、異例の速さで若くして参謀の地位に就く。
幸盛による悪政については当初は否定的な意向を見せていたが、出世を重ねていく過程でその罪の意識も薄れていき、挙げ句の果てに自身の家族をも自らの手によって粛清したという。
晴清
「幸盛様、次なる目標ですが立天野城がよろしいかと。」
幸盛
「ほう、立天野城か。最近、志太家が傘下に加えた地では無いか。」
幸盛は少し驚いた表情で答えた。
志太家は将軍守護職を三浦将軍家より賜っている。
その志太家を理由もなく攻めるとなれば、それは将軍家に刃を向けるのと同じ意味があると言っても良い。
さらに将軍家に仇をなす逆賊の烙印を押され、将軍家の名誉を守る為という名目で周辺大名家によって目の敵にされ、自家を滅ぼされかねない。
そんなリスクを背負ってまでして志太家を攻める理由があるのだろうか。
幸盛は、晴清の今回の策略には気持ちが進まない様子であった。
晴清
「出兵の際は秋庭の軍を使えばよろしいかと。さらに立天野への出兵は秋庭が勝手に起こした事であると各国に思わせられれば、我らが狙われる事はございませぬ。」
晴清の策略とは、こうである。
従属させている秋庭家に立天野城の制圧を命じる。
その際には、秋庭家が勝手な判断で立天野城に攻め込んだという噂を各国に流し、秋庭家に非があるように見せる工作を行う。
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時に戦国の世とはそういう物なのである。
幸盛
「ふむ、それは実に面白いのう。では晴清よ、そのようにやってみよ。此度の件はお前に任せようぞ。」
幸盛は先程のもやもやとした表情から一転し、不気味な笑みを浮かべていた 。
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