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第6章 風雲志太家編

09.立天野の地

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先刻の評定において立天野城の郷田家を攻略目標に掲げた祐藤であったが、家臣たちは納得のいかない表情であった。
そこで、祐藤は再び口を開いた。

祐藤
「攻略するとて今回は戦するのではない。儂の考えた方法で郷田家を我が志太家の傘下に加えるのじゃ。」

祐藤の考えた方法とは、次の通りである。

①信常の発明品を郷田家に提供する
立天野城下に信常の発明品した豊作布屋根の設置を行う。
常に安定した米の収穫が行われる事により、不作から引き起こされる飢饉に歯止めをかける。
また、安定した収穫が望めるまでは志太家の領内で収穫した米を援助する。

②蛭間玄名を立天野城に派遣して説法を行う
度重なる飢饉によって家臣及び領民の郷田家に対する不満が積りに積もっている状況である。
そこで、志栄城において不満を持つ兵たちを納得させたという実績がある玄名の説法を聞かせる事で家臣や領民の不信感を無くさせる。

これらの条件と引き換えに、郷田家は志太家の傘下に加わるように決断を迫らせるのだ。
相手は国力低下の中で家名存続の危機に直面している。
そのような状態であれば間違いなくこの話に食い付くであろうという祐藤の考えがあった。

貞勝
「なるほど、それならば戦わずとも郷田家の領地は比較的楽に手に入りますな。しかし、何故に郷田家の領地を手に入れようとされるのですか。」

祐藤の出した戦略には納得した貞勝ではあったが、郷田家をそうまでして手に入れたい理由がまだ分からなかった。
すると、祐藤は横に構えていた葛籠を開けた。

祐藤
「うむ、立天野城を手に入れたい真の理由はこれじゃ。」

祐藤は葛籠の中から一欠片の鉄鉱石を取り出し、貞勝に手渡した。

貞勝
「むぅ、これはこれは、見事な鉄鉱石にございますな。かような物で武具を造ればさぞかし素晴らしい作品が出来る事でしょうな。」

祐藤
「その鉄鉱石は、立天野山で採れた。どうじゃ、ここまで立派な鉄鉱石はなかなか見られぬぞ。」

祐藤は、志栄島の統治を始めてすぐに立天野城の東に広がる立天野山に忍びを送り込んでいた。
そこで、立天野山には鉄鉱石が豊富に存在している事を知った。
その鉄鉱石は一般的な鉄鉱石よりも極めて良質であり、非常に質の高い武具が生産可能になると言われている。

領内では混乱が起き始めてようとしている不安定な状態の郷田家をあえて志太家の傘下に加えたい本当の理由。
それは、この良質な鉄鉱石が豊富に採取できる立天野山を抑えておく為であった。

貞勝
「祐藤様はそこまでお考えになられていたのですか。いやはや恐れ入りました。そうとあらば、我ら一丸となって郷田家を攻略いたしましょう。」

貞勝は祐藤の思惑を全て理解し、納得した表情であった。
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