架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

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第5章 祐藤の野望編

54.米村山の戦い(11)

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長継率いる援軍が志太軍との合戦に破れ、村上軍は退却。
そして単騎で敵陣に乗り込んだ康虎も志太軍の本陣において総大将の祐藤と刀を交えての激闘の末、敗北。
康虎は志太軍に捕らえられるが祐藤の温情により解放されていた。
これで村上軍の兵たちは援軍という頼みの綱を絶たれたこととなり、この様子を米村山城の天守から見ていた元兵衛は絶望に満ちた表情であった。

米村山城は貞道と崇数の猛攻を受けており、城内にも兵たちが流れ込んでいた。
さらに次々と櫓が制圧されており、天守への攻撃を始めようとしていた。

貞道
「よし、後は天守の元兵衛を討ち取るのみ。全軍、一斉に攻撃せよ。」

貞道は兵たちに全軍で総攻撃をかける号令をかけた。
兵たちは天守へ向けて火矢と鉄砲を雨のように一斉に発射し始めた。

天守は瞬く間に火矢によって炎上し、さらに鉄砲により天守の損壊があちこちで発生した。
そして損壊した箇所から志太軍が天守を目指してわらわらと侵入を始めていた。

元兵衛
「最早これまでか。忠益殿よ、拙者も今からそちらへ参りますぞ。」

元兵衛はそう言い残し、天守で自害して果てた。
米村山城主の坂上元兵衛が自害したことを知ると城内は志太軍の勝鬨の声が鳴り響いた。

崇数
「貞道殿、やりましたな。こたびの戦は大手柄でございましょう。」

貞道
「いやはや、こたびの戦は崇数殿のお陰で勝てたようなものじゃ。崇数殿よ、改めて礼を申す。」

貞道は謙遜した態度で言った。

今回の戦において共に村上軍と戦った崇数と貞道の間には友情が芽生えていた。
やがて二人は莫逆の友と呼ばれ、様々な逸話が残されるようになるのはもう少し先の話である。
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