架空戦国伝

第５章 祐藤の野望編

18.村上家の意地

村上家当主の村上長継は、ある決心を固めようとしていた。
先代の村上長馬が掲げた本土進出である。

長馬が統治していた時代の村上家は、九条信常による革新的な発明品の存在もあってか国力の増強に力を注がれていた。
しかし長馬の死後、長継が家督を相続すると戦に対して消極的な意向を見せた為に家臣たちの不満が募っていった。
そして結果として信常という貴重な人材が志太家に流れてしまい、村上家は停滞の道を歩もうとしていた。

この状況を打破すべく長継は家臣たちを集めて評定を開いた。

長継
「知っての通り我が村上家は存続の危機にさらされておる。我らのご先祖様が守り抜かれてきたこの地を誰にも渡さぬ為にも我らの力が試される時ぞ。皆の者よ、今が団結の時ぞ。」

家臣たち
「我ら家臣一同、長継様の為とあらばこの命惜しまず差し出す覚悟でございます。」

長継と家臣たちとの間に出来ていた溝が一気に塞がり、強固な団結力になろうとしていた。
代々続いてきた村上家としての意地を貫き通すことが村上家に生まれてきた者の使命なり。
父である長馬の背中を必死になって追いかけようと夢中になっていた長継の姿に家臣たちはたいそう心を惹かれたという。

長継
「父上の成し遂げられなかった本土進出、この長継めが果たしてみせましょう。見ていてくだされ。」

長継は野望に満ちた表情でつぶやいた。

一方その頃、志太家の吉江貞勝は交渉の為に村上島へ向けて馬を進めている最中であった。