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第3章 立身出世編

01.奉公人義藤殿

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志太家の当主である祐村は売買の為、商人の屋敷を訪れていた。
そこでは兵士が使う武具などを志太家は仕入れている。
しかも、家臣を通さず直接祐村が直々に交渉に毎回出向いているのだ。
家臣を通した場合は、いわゆるピンハネなどの不正が行われることを防ぐのも一つの理由ではある。
もう一つの理由としては、相場調査を行うことで各大名家との交渉事を有利に進める為でもあり、実際のところ志太家はそういった知識を得ることで損をしない取引で利益を得ている部分があった。

祐村は商人の屋敷に入ると、一人の見慣れない青年が祐村に向かって挨拶をしてきた。

「拙者、今日より貴殿の交渉を担当させて頂きます大村義藤と申します。以後、お見知りおきをお願いいたします。」

・大村義藤(おおむら よしふじ)
貧しい農民の家系に生まれる。
幼少時より頭脳明晰で神童と呼ばれており、志太家領内の奉公の面接に一発で合格して採用される。

祐村は、義藤のその若さゆえに商業経験が豊富でない為、交渉事では今回は自分が有利に進むであろう。
そう考えていたが、交渉を進めていくうちに一縄筋ではいかないどころか逆に不利に事が進んでしまった。
祐村から見ると、つい先日元服を済ませたという青二才の若造に翻弄されていたのである。

結局、今回の交渉は祐村が一度持ち帰って再度交渉を行うということで落ち着いた。

祐村
「あの若造、なかなかやりおるな。当家の家臣に取り入れれば天下を狙えるやもしれぬな。」

祐村は帰路に着く途中、一人呟いた。
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