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10-エビフライに挑戦
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実体化実験をした翌日、俺は粘土を前に頭を抱えていた。
「エビフライって、どうやって作るんだ……」
俺は無性にエビフライが食べたくなっていた。
どうしてエビフライなのかというと、昔録画していたバラエティ番組を見ていてそこに出てきたからだ。
タレントが美味しそうにエビフライを頬張る姿にどうしてもエビフライが食べたくなり、粘土で作れば実体化して食べられるのではと制作準備したまではよかったが俺はミニチュアのエビフライを作ったことがない……。
中身は多分なんとかできる。
樹脂粘土に透明粘土を粘土を混ぜて馴染ませエビフライの細長い形を形成、しっぽ部分は平たく潰してカッターで切れ目を入れ形を整える。この時しっぽにだけ削ったパステルを水に溶いたもので着色しておく。
これを乾燥させればエビフライの中身になる、はずだ。
透明粘土を混ぜたことでエビのほんのり透き通るような感じが出ると思う。
問題は衣!
揚げ物の命ともいえる衣なのである!
あのサクサクした感じをどうやって粘土でだせばいい?
揚げ物色に着色した粘土をピンセットで摘み貼り付けるとか……いや、それは細かすぎて一つ作るのにかなり時間と手間がかかる。
それに揚げ物の衣には透明感があるんだ、着色した粘土だけじゃ揚げ物らしさに欠ける……!
そもそも、本物のエビフライですら俺は作ったことがない。
作り方は知識として知ってるが作ろうと思ったこともない。
食べたくなったら近所のスーパーに行けば良かったしな。
参考にできないかと俺の知ってるエビフライの作り方を思い出してみる。
確か……エビに小麦粉をはたいて卵液に潜らせ、パン粉をつけて揚げるんだったよな……?
粘土を本物のように調理なんてできない。
要はなにか、衣に見えるものをまとわせることができればいい。そしてそれは透明感のあるものであれば……。
そこでふと透明粘土が目に入った。
これ単体なら透明感がある、少量のアクリル絵の具を混ぜれば透明感を保ったまま色付けできるのだ。
それを乾燥させた後、おろし金でパン粉のように削って削った粉を粘土のエビに纏わせればエビフライらしくなるかもしれない。
早速、物は試しと適量の透明粘土に着色する。
黄色と茶色の絵の具を混ぜ合わせ揚げ物らしい色を作ったら、それを透明粘土に色がなじむまで混ぜ合わせる。
あとは丸めてさっき作った中身のエビと一緒に乾燥だ。
今すぐ完成させて食べられないのは残念だけどこればっかりは仕方ない。
美味しいものも、ミニチュアも、完成には時間がかかるものなのだ。
今回は仕方ないが、次回食べたくなった時に時短で作れるように今のうちに中身のエビだけでも作り置きしておこう。
そのまま作業に熱中して三十本くらいのエビを作った。
これだけ作り置きしておけば大丈夫だな!
あ、クッキーとかお菓子の土台もそろそろなくなって来たし作り置きしとくか。
ひたすら粘土の作業に夢中になっているとふと家の中から何やら物音が聞こえてくるのに気がついた。
泥棒か……?
作業の手を止め机の引き出しから撃退用の唐辛子スプレーを取り出し、なるべく物音を立てないようにしてリビングへ向かう。
ドアをそっと開ける。人影はない。
どうやら音はリビングのテーブル付近か聞こえるらしい。
見てみれば以前デリックに貰ってテーブルに置きっぱなしにしていた鏡がカタカタ動いてる音だった。
泥棒じゃなったことに安堵しながら鏡を手に取ってみると、スイッチを入れたテレビのようにぱっとデリックが映し出された。
『こんにちは、ニロ。先日はお世話になりました。お取り込み中でしたか?』
「デリックさん……!こんにちは、少し作業してまして」
どうやらさっき鏡が動いていたのはデリックからの通信を受信した合図のようだ。
スマホのバイブ機能の様なものなのだろう。
『それはお邪魔してしまってすみません』
「いえ、気にしないで下さい。それで何かあったんですか?」
つい先日街に戻っていったはずなのに連絡してくるなんてなにかあったのだろうかと思い尋ねればデリックは苦笑いしながら話し始めた。
『実は……街に戻るなり少々トラブルがありまして。エリシアが一人でそちらに戻ってしまったんです』
「ひ、一人で!?大丈夫なんですか!?」
魔物が出るような世界で女性が一人で出歩くなんて危ないと慌てればデリックは大丈夫ですよと微笑む。
『エリシアはああ見えてその辺の傭兵団より強いんです。ですから心配なさらないで下さい』
「傭兵団より……す、すごいですね……」
『そうなんですよ、以前もデリックさんと口論になった時なんて怒りのあまり彼の事を投げ飛ばしてましたから』
「えぇ……!?」
俺の中のエリシアのイメージがガラガラと崩れていく。
『そんなわけで道中は大丈夫だと思います。ただちょっと、トラブルのせいで少し機嫌が悪いので……エリシアさんが到着する前にニロに報告しておいた方がいいと思いまして』
「それはありがとうございます、心構えができるので助かります。あの、ちなみにトラブルって何が起きたのか聞いてもいいですか?」
『それは…………私達というよりエリシア個人の問題なので、本人に聞いてみてください。他人の口から話すのは良くないと思いますし』
「なるほど、わかりました。聞いてみます」
『すみません、うちの仲間がご面倒おかけして』
「いえいえ。俺は大丈夫ですから」
『そういっていただけると助かります。私達はこちらで少しやる事があるのでそれが終わり次第、エリシアさんを迎えに行きますから。迎えに行くときはまた連絡しますのでよろしくお願いします』
「わかりました」
『それでは失礼しますね』
ぷつりと通信が切れ、写っていたデリックが消えた。
鏡の通信機、便利だなあ……おっとそれよりも。エリシアさんが来るなら家の中を片付けておかなくては。
どのくらい居るのかはわからないけど、泊まることになったらリビングで寝起きしてもらうのは申し訳ない。
前回は人数も多かったしリビングで寝てもらったけど一人なら落ち着ける部屋の方がいいだろう。
少し狭いけど物置部屋を片付けて、そこに滞在してもらおう……ちょっと狭いかもしれないけど。
「エビフライって、どうやって作るんだ……」
俺は無性にエビフライが食べたくなっていた。
どうしてエビフライなのかというと、昔録画していたバラエティ番組を見ていてそこに出てきたからだ。
タレントが美味しそうにエビフライを頬張る姿にどうしてもエビフライが食べたくなり、粘土で作れば実体化して食べられるのではと制作準備したまではよかったが俺はミニチュアのエビフライを作ったことがない……。
中身は多分なんとかできる。
樹脂粘土に透明粘土を粘土を混ぜて馴染ませエビフライの細長い形を形成、しっぽ部分は平たく潰してカッターで切れ目を入れ形を整える。この時しっぽにだけ削ったパステルを水に溶いたもので着色しておく。
これを乾燥させればエビフライの中身になる、はずだ。
透明粘土を混ぜたことでエビのほんのり透き通るような感じが出ると思う。
問題は衣!
揚げ物の命ともいえる衣なのである!
あのサクサクした感じをどうやって粘土でだせばいい?
揚げ物色に着色した粘土をピンセットで摘み貼り付けるとか……いや、それは細かすぎて一つ作るのにかなり時間と手間がかかる。
それに揚げ物の衣には透明感があるんだ、着色した粘土だけじゃ揚げ物らしさに欠ける……!
そもそも、本物のエビフライですら俺は作ったことがない。
作り方は知識として知ってるが作ろうと思ったこともない。
食べたくなったら近所のスーパーに行けば良かったしな。
参考にできないかと俺の知ってるエビフライの作り方を思い出してみる。
確か……エビに小麦粉をはたいて卵液に潜らせ、パン粉をつけて揚げるんだったよな……?
粘土を本物のように調理なんてできない。
要はなにか、衣に見えるものをまとわせることができればいい。そしてそれは透明感のあるものであれば……。
そこでふと透明粘土が目に入った。
これ単体なら透明感がある、少量のアクリル絵の具を混ぜれば透明感を保ったまま色付けできるのだ。
それを乾燥させた後、おろし金でパン粉のように削って削った粉を粘土のエビに纏わせればエビフライらしくなるかもしれない。
早速、物は試しと適量の透明粘土に着色する。
黄色と茶色の絵の具を混ぜ合わせ揚げ物らしい色を作ったら、それを透明粘土に色がなじむまで混ぜ合わせる。
あとは丸めてさっき作った中身のエビと一緒に乾燥だ。
今すぐ完成させて食べられないのは残念だけどこればっかりは仕方ない。
美味しいものも、ミニチュアも、完成には時間がかかるものなのだ。
今回は仕方ないが、次回食べたくなった時に時短で作れるように今のうちに中身のエビだけでも作り置きしておこう。
そのまま作業に熱中して三十本くらいのエビを作った。
これだけ作り置きしておけば大丈夫だな!
あ、クッキーとかお菓子の土台もそろそろなくなって来たし作り置きしとくか。
ひたすら粘土の作業に夢中になっているとふと家の中から何やら物音が聞こえてくるのに気がついた。
泥棒か……?
作業の手を止め机の引き出しから撃退用の唐辛子スプレーを取り出し、なるべく物音を立てないようにしてリビングへ向かう。
ドアをそっと開ける。人影はない。
どうやら音はリビングのテーブル付近か聞こえるらしい。
見てみれば以前デリックに貰ってテーブルに置きっぱなしにしていた鏡がカタカタ動いてる音だった。
泥棒じゃなったことに安堵しながら鏡を手に取ってみると、スイッチを入れたテレビのようにぱっとデリックが映し出された。
『こんにちは、ニロ。先日はお世話になりました。お取り込み中でしたか?』
「デリックさん……!こんにちは、少し作業してまして」
どうやらさっき鏡が動いていたのはデリックからの通信を受信した合図のようだ。
スマホのバイブ機能の様なものなのだろう。
『それはお邪魔してしまってすみません』
「いえ、気にしないで下さい。それで何かあったんですか?」
つい先日街に戻っていったはずなのに連絡してくるなんてなにかあったのだろうかと思い尋ねればデリックは苦笑いしながら話し始めた。
『実は……街に戻るなり少々トラブルがありまして。エリシアが一人でそちらに戻ってしまったんです』
「ひ、一人で!?大丈夫なんですか!?」
魔物が出るような世界で女性が一人で出歩くなんて危ないと慌てればデリックは大丈夫ですよと微笑む。
『エリシアはああ見えてその辺の傭兵団より強いんです。ですから心配なさらないで下さい』
「傭兵団より……す、すごいですね……」
『そうなんですよ、以前もデリックさんと口論になった時なんて怒りのあまり彼の事を投げ飛ばしてましたから』
「えぇ……!?」
俺の中のエリシアのイメージがガラガラと崩れていく。
『そんなわけで道中は大丈夫だと思います。ただちょっと、トラブルのせいで少し機嫌が悪いので……エリシアさんが到着する前にニロに報告しておいた方がいいと思いまして』
「それはありがとうございます、心構えができるので助かります。あの、ちなみにトラブルって何が起きたのか聞いてもいいですか?」
『それは…………私達というよりエリシア個人の問題なので、本人に聞いてみてください。他人の口から話すのは良くないと思いますし』
「なるほど、わかりました。聞いてみます」
『すみません、うちの仲間がご面倒おかけして』
「いえいえ。俺は大丈夫ですから」
『そういっていただけると助かります。私達はこちらで少しやる事があるのでそれが終わり次第、エリシアさんを迎えに行きますから。迎えに行くときはまた連絡しますのでよろしくお願いします』
「わかりました」
『それでは失礼しますね』
ぷつりと通信が切れ、写っていたデリックが消えた。
鏡の通信機、便利だなあ……おっとそれよりも。エリシアさんが来るなら家の中を片付けておかなくては。
どのくらい居るのかはわからないけど、泊まることになったらリビングで寝起きしてもらうのは申し訳ない。
前回は人数も多かったしリビングで寝てもらったけど一人なら落ち着ける部屋の方がいいだろう。
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