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番外編-後日談《前編》-
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ある天気のいい休日。
私は自室の鏡の前で悩んでいた。
手元にはいくつかのリボンと髪飾り。
これで少しでも女性らしく着飾ろうと思ったのだが、どうすれば異性の目に女性らしく魅力的に写るのかよく知らないのだ。
いつもなら動きやすい服を来て、邪魔にならないように髪を束ねるだけで済むのだが今日ばかりはそれでは駄目だ。
なぜなら今日は――。
(ジークさんと、初めての……デートだから)
大事な人の姿を思い浮かべれば、自然と頬が熱くなる。
手で顔をパタパタと仰ぎ熱を冷ますと、時間を気にしながら私は身支度を始めた。
待ち合わせは村の入り口。
ここで落ち合って一緒に街へいく約束をしている。
ジークさんの到着を待ちながら自分の姿を改めて見下ろす。
今日は滅多に着ない上質な生地のワンピースを着ている。
襟つきの水色のワンピースで胸元にはジークさんからもらったブローチをつけ、髪はハーフアップにしてみた。
家を出る前にソニアさんにおかしなところはないか確認してもらったから、大丈夫だと思いたい。
何度も髪や服を確認しているうちにジークさんがやってきた。
「スザンナ、待たせてしまってすまない」
私の姿を見つけるなり駆け寄ってきてくれるその姿は、いつも見ている服装より落ち着いていてジークさんに似合っていた。
「いえ、私が少し早く来てしまっただけですから気にしないでください」
そう告げると安心したように微笑まれる。
「それじゃ行くか」
「はいっ!」
差し出された手を繋ぎ、私は胸を高鳴らせながら街へと歩き出す。
今日はきっと素敵な一日になるはずだ。
そう思っていた。
街でマリーナと出会うまでは。
――――
まさかこんなところで出会うなんて。
「ジークさん!こんなところで会えるなんて!!運命なのかもしれませんね」
うっとりとした表情でジークさんの名前を呼びながらこちらにかけてくるのはマリーナだ。
彼女は公爵家が取り潰しになった際、下級貴族の養子に出されたと聞く。
なぜこんなところにいるのかとか、まだジークさんに気があるのかとか。
疑問が沸き上がるが、何よりもこの子をジークさんに近付けたくない。
その一心でジークさんを庇うように前に出る。
「あら?お姉様もいらっしゃったんですね」
私の姿は眼中になかったらしい。
あと、私とマリーナはもうとっくに他人なのだけれどそのことすら理解していないようだ。
これは喧嘩を売られているのだろうか?
昔父に強い言葉をぶつけられた時も、アルトくんから嫌がらせを受けた時も、リエナが私を裏切っていたと知った時もショックは受けたがここまで感情が濁るような事はなかった。
それなのにマリーナを目の前にすると……特にマリーナがジークさんに絡もうとすると、どうしても『憎い』と思ってしまう。
ジークさんが私を大事に思ってくれてると知っているのに、マリーナに心変わりしてしまうのではと焦るような気持ちが込み上げてきて排除してしまいたいと考えてしまう。
「いこう、スザンナ」
不意に声をかけられ振り返ればジークさんが優しく微笑んでいる。
ジークさんが見ているのは私だ。マリーナじゃない。
「はい」
微笑んでくれたことに安堵して、頷きながらそっと腕を絡ませてみるとジークさんは目を細めて私の腕に手を添えてくれた。
マリーナの事など気にするなといってくれているようで嬉しい。
「酷いわお姉様!!」
立ち去ろうとした瞬間、逃がさないと言うように突然マリーナが声を上げた。
私は自室の鏡の前で悩んでいた。
手元にはいくつかのリボンと髪飾り。
これで少しでも女性らしく着飾ろうと思ったのだが、どうすれば異性の目に女性らしく魅力的に写るのかよく知らないのだ。
いつもなら動きやすい服を来て、邪魔にならないように髪を束ねるだけで済むのだが今日ばかりはそれでは駄目だ。
なぜなら今日は――。
(ジークさんと、初めての……デートだから)
大事な人の姿を思い浮かべれば、自然と頬が熱くなる。
手で顔をパタパタと仰ぎ熱を冷ますと、時間を気にしながら私は身支度を始めた。
待ち合わせは村の入り口。
ここで落ち合って一緒に街へいく約束をしている。
ジークさんの到着を待ちながら自分の姿を改めて見下ろす。
今日は滅多に着ない上質な生地のワンピースを着ている。
襟つきの水色のワンピースで胸元にはジークさんからもらったブローチをつけ、髪はハーフアップにしてみた。
家を出る前にソニアさんにおかしなところはないか確認してもらったから、大丈夫だと思いたい。
何度も髪や服を確認しているうちにジークさんがやってきた。
「スザンナ、待たせてしまってすまない」
私の姿を見つけるなり駆け寄ってきてくれるその姿は、いつも見ている服装より落ち着いていてジークさんに似合っていた。
「いえ、私が少し早く来てしまっただけですから気にしないでください」
そう告げると安心したように微笑まれる。
「それじゃ行くか」
「はいっ!」
差し出された手を繋ぎ、私は胸を高鳴らせながら街へと歩き出す。
今日はきっと素敵な一日になるはずだ。
そう思っていた。
街でマリーナと出会うまでは。
――――
まさかこんなところで出会うなんて。
「ジークさん!こんなところで会えるなんて!!運命なのかもしれませんね」
うっとりとした表情でジークさんの名前を呼びながらこちらにかけてくるのはマリーナだ。
彼女は公爵家が取り潰しになった際、下級貴族の養子に出されたと聞く。
なぜこんなところにいるのかとか、まだジークさんに気があるのかとか。
疑問が沸き上がるが、何よりもこの子をジークさんに近付けたくない。
その一心でジークさんを庇うように前に出る。
「あら?お姉様もいらっしゃったんですね」
私の姿は眼中になかったらしい。
あと、私とマリーナはもうとっくに他人なのだけれどそのことすら理解していないようだ。
これは喧嘩を売られているのだろうか?
昔父に強い言葉をぶつけられた時も、アルトくんから嫌がらせを受けた時も、リエナが私を裏切っていたと知った時もショックは受けたがここまで感情が濁るような事はなかった。
それなのにマリーナを目の前にすると……特にマリーナがジークさんに絡もうとすると、どうしても『憎い』と思ってしまう。
ジークさんが私を大事に思ってくれてると知っているのに、マリーナに心変わりしてしまうのではと焦るような気持ちが込み上げてきて排除してしまいたいと考えてしまう。
「いこう、スザンナ」
不意に声をかけられ振り返ればジークさんが優しく微笑んでいる。
ジークさんが見ているのは私だ。マリーナじゃない。
「はい」
微笑んでくれたことに安堵して、頷きながらそっと腕を絡ませてみるとジークさんは目を細めて私の腕に手を添えてくれた。
マリーナの事など気にするなといってくれているようで嬉しい。
「酷いわお姉様!!」
立ち去ろうとした瞬間、逃がさないと言うように突然マリーナが声を上げた。
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