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26.脱走
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「……取引?何、金目のものやるからここから出せって?」
少年は眉を寄せてこちらを見る。
「いいえ、使ったら無くなってしまうお金よりもっと良いものよ。自由、なんてどうかしら」
「自由……?」
服の裾から覗く少年の腕や足にはいくつも痣や切り傷が見えた。
彼は主犯の男にぞんざいに扱われているのだろう。
「アンタをここから逃がしたらアンタが俺をアイツらから逃がしてくれるってか。そんな力あるように見えないけど」
少年はふんと鼻をならし再び手元に視線を落として木彫りを再開する。
「私には無いけど私の村には力自慢の人達が多いんだから!それにあなたの協力があればあの人達の悪事を止められる。あの人達は王族を狙うって言ってたでしょ?悪人から王族を守れば報償金だって出るかもしれないわよ」
「こんなガキとアンタみたいな女一人で何ができるんだよ」
「出来るわ。絶対に」
はっきり言い切ると少年はじっとこちらを見つめた。
絶対なんて保証はどこにもない。
だけど私が動かなくてはジークさんが危ないのだ。
もう二度と大事な人を亡くすような、あんな想いはしたくない。
少年の目をまっすぐ見つめ返すと彼はゆっくり立ち上がりこちらに近付いてきた。
そして手にしたナイフで私の手足を縛るロープを切り始める。
「アンタみたいな威勢がいいヤツ、嫌いじゃないよ。期待はしないけど手は貸したげる。ヤバイと思ったら俺はアンタを捨てて逃げるから」
ぱらりとロープが落ちて手足が自由になる。
私は嬉しくなって少年の頭を撫でた。
「ありがとう、助かるわ」
「っ……子供扱い止めろ」
撫でた手はすぐにはたき落とされてしまったけれどそっぽを向いた少年の耳はほんのり赤く染まっていた。
案外可愛いげがあるのかもしれない。
◇◇◇
少年の手引きで私は捕まっていた場所から逃げ出すことが出来た。
「……で。これからどうするの?」
森の中を歩きながら少年――名前はニトと言うらしい――が尋ねる。
「私の村に戻るわ。狙われてる人達がそこにいるの」
「武器は?まさか丸腰でやつらと戦おうなんて思ってないだろうな」
「村に行く途中にあるきこり小屋に斧とか弓矢とかあったはずよ」
「へぇ、あんた斧とか弓矢とか使えんの?」
問われて答えに詰まる。
斧は力強い男性用のものだし弓矢は扱ったことがない。
私が返答に困っているとニトは大きなため息をついた。
「駄目じゃん」
「で、でも何もないよりはいいでしょ?」
「アンタバカなの。扱えない武器なんて荷物にしかならないし危険なだけ」
「っ……」
もっともな指摘にぐうの音も出ない。
「それでよくやつらに立ち向かおうなんて無謀なこと考えるね」
「……無謀でも失いたくない人の為ならなんだってやるわ」
私はジークさんを失いたくない。
この気持ちは確かなものだ。
例え嫌われてしまっていたとしても、ジークさんがマリーナを好きになったとしても。
私はジークさんを守りたい。
そんな想いを抱えながら私はニトを連れて村に向かい休むことなく歩き続けた。
少年は眉を寄せてこちらを見る。
「いいえ、使ったら無くなってしまうお金よりもっと良いものよ。自由、なんてどうかしら」
「自由……?」
服の裾から覗く少年の腕や足にはいくつも痣や切り傷が見えた。
彼は主犯の男にぞんざいに扱われているのだろう。
「アンタをここから逃がしたらアンタが俺をアイツらから逃がしてくれるってか。そんな力あるように見えないけど」
少年はふんと鼻をならし再び手元に視線を落として木彫りを再開する。
「私には無いけど私の村には力自慢の人達が多いんだから!それにあなたの協力があればあの人達の悪事を止められる。あの人達は王族を狙うって言ってたでしょ?悪人から王族を守れば報償金だって出るかもしれないわよ」
「こんなガキとアンタみたいな女一人で何ができるんだよ」
「出来るわ。絶対に」
はっきり言い切ると少年はじっとこちらを見つめた。
絶対なんて保証はどこにもない。
だけど私が動かなくてはジークさんが危ないのだ。
もう二度と大事な人を亡くすような、あんな想いはしたくない。
少年の目をまっすぐ見つめ返すと彼はゆっくり立ち上がりこちらに近付いてきた。
そして手にしたナイフで私の手足を縛るロープを切り始める。
「アンタみたいな威勢がいいヤツ、嫌いじゃないよ。期待はしないけど手は貸したげる。ヤバイと思ったら俺はアンタを捨てて逃げるから」
ぱらりとロープが落ちて手足が自由になる。
私は嬉しくなって少年の頭を撫でた。
「ありがとう、助かるわ」
「っ……子供扱い止めろ」
撫でた手はすぐにはたき落とされてしまったけれどそっぽを向いた少年の耳はほんのり赤く染まっていた。
案外可愛いげがあるのかもしれない。
◇◇◇
少年の手引きで私は捕まっていた場所から逃げ出すことが出来た。
「……で。これからどうするの?」
森の中を歩きながら少年――名前はニトと言うらしい――が尋ねる。
「私の村に戻るわ。狙われてる人達がそこにいるの」
「武器は?まさか丸腰でやつらと戦おうなんて思ってないだろうな」
「村に行く途中にあるきこり小屋に斧とか弓矢とかあったはずよ」
「へぇ、あんた斧とか弓矢とか使えんの?」
問われて答えに詰まる。
斧は力強い男性用のものだし弓矢は扱ったことがない。
私が返答に困っているとニトは大きなため息をついた。
「駄目じゃん」
「で、でも何もないよりはいいでしょ?」
「アンタバカなの。扱えない武器なんて荷物にしかならないし危険なだけ」
「っ……」
もっともな指摘にぐうの音も出ない。
「それでよくやつらに立ち向かおうなんて無謀なこと考えるね」
「……無謀でも失いたくない人の為ならなんだってやるわ」
私はジークさんを失いたくない。
この気持ちは確かなものだ。
例え嫌われてしまっていたとしても、ジークさんがマリーナを好きになったとしても。
私はジークさんを守りたい。
そんな想いを抱えながら私はニトを連れて村に向かい休むことなく歩き続けた。
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