サクラ・アンダーソン

サクラと秘密基地

サクラ・アンダーソンが9歳のとき、放課後の時間は彼女にとって特別だった。学校の宿題を急いで片付けると、リュックを背負い、近所の森へと向かうのが日課だった。その森の奥には、近所の男の子たちが作った「秘密基地」があり、そこが彼女の冒険の舞台だった。  

最初にその場所に誘われたのは、同級生のトムだった。クラスで新しいロボットの設計図を描いていたサクラを見て、「それ、面白そうだな！」と声をかけてきたのがきっかけだった。彼女が描いたロボットの手には「秘密基地で使えるアームがついている」という設定があり、それを聞いたトムは興奮して「サクラも秘密基地に来てよ！」と誘ったのだ。  

秘密基地は、古い木製のパレットや段ボールを組み合わせて作られていた。そこでは毎日、男の子たちが「宇宙戦争ごっこ」や「モンスター退治ゲーム」に夢中になっていた。サクラは初めて遊びに行ったとき、男の子たちが木の棒や壊れたおもちゃを道具に見立てて、果てしない想像力を広げている様子に驚いた。そしてその日から、彼女はすっかりその遊びの虜になった。  

「サクラ、宇宙船のコントロールパネル作れる？」と誰かが聞けば、彼女は段ボールとマーカーを持ち出し、すぐに見た目だけは本格的なパネルを作り上げた。トムや他の男の子たちが「これ、本当に宇宙船みたいだ！」と感嘆するたびに、彼女の心は踊った。女の子たちがやる「おままごと」も楽しかったが、サクラにとっては、こうしてアイデアを形にして遊ぶことの方が何倍も刺激的だった。  

ある日、男の子たちと新しいゲームのルールを考えていると、クラスメートのリサがやってきて、少し不満そうに言った。「サクラ、最近全然一緒に遊んでくれないじゃない。私たち、またドレスアップゲームするつもりだったのに！」  

サクラは少し考えてから、笑顔で答えた。「ドレスアップも好きだけど、今はこっちの方が面白いんだ。だってここでは、私のアイデアがすぐにみんなの冒険になるから。」  

その後もサクラは、秘密基地で過ごす時間を大切にした。彼女が男の子たちと遊ぶ中で学んだのは、発想力やチームワークの楽しさだった。それが、後に彼女がITの世界で画期的なアイデアを形にしていく力の原点だったのかもしれない。