6 / 6
未来への決意
しおりを挟むある日、優斗と紗江はそれぞれの時代で衝撃的な出来事を目にする。
昭和の街で紗江(優斗)は、働き盛りの男性たちが無表情で工場へ向かう姿や、生活に追われる家族たちの姿を目撃した。高度経済成長の時代である一方で、労働環境の過酷さや社会の歪みを肌で感じたのだ。
一方、令和の街で優斗(紗江)は、ニュースで議員たちのスキャンダルや、若者の政治参加率の低さを目の当たりにした。高齢化や環境問題など、山積みの課題に対して、有効な解決策が見いだせないまま議論だけが空回りしている状況に憤りを覚えた。
---
### 時代を超えた対話
入れ替わりの翌日、二人は縁側に座りながら話し合った。
「紗江、このままじゃダメだ。俺たちの時代も問題だらけだけど、そっちはそっちでいろいろ大変なんだな。」
「ええ、優斗。でも、どうすればいいのかしら。私たちができることなんて…」
紗江は不安そうに俯いた。しかし、優斗は拳を握り締めて答える。
「俺たちにしかできないことがある。昭和と令和、両方を知ってる人間なんて、他にいないだろ?俺たちが変えなきゃいけないんだよ!」
その言葉に紗江もはっとする。そして、思い出すのはあの日記に書かれていた「使命」という言葉だ。
> **「時代を超えて、未来を繋げる架け橋となれ。」**
二人は決意した。自分たちの体に戻り、それぞれの時代で政治の世界に飛び込むことを。
---
### 元の体に戻るための試練
二人は再び、篠田家と佐藤家に伝わる「願いが叶う木」と「神社のお守り」を調べ始めた。どうやら、二人が元の体に戻るには、心からの強い決意を持ち、その決意を証明する行動が必要だということが分かった。
「つまり…私たちが本気で政治に関わる覚悟を決めなきゃ、戻れないってこと?」
「そういうことだな。じゃあやるしかない!」
優斗は昭和の社会問題を調査し、紗江は令和の政治課題を研究した。それぞれの時代で住民に話を聞いたり、図書館で資料を集めたりしながら、具体的に何が問題なのか、どうすれば改善できるのかを学んでいった。
---
### 体が戻る瞬間
ある日、二人は同時に同じ夢を見た。昭和の街と令和の街が重なり合い、過去と未来の風景が入り混じる幻想的な光景だった。そこには、篠田家の木と佐藤家の神社が並んで立っていた。
> **「二人の決意は本物か?」**
どこからともなく声が響く。優斗と紗江は互いに顔を見合わせ、力強く頷いた。
「俺たちが未来を変える。」
「私たちが未来を繋ぐ。」
すると、強い光に包まれ、二人の体が元に戻る感覚が訪れた。
---
### それぞれの道へ
元の体に戻った二人は、それぞれの時代で行動を開始した。
**昭和の紗江**
紗江は女性としては珍しく政治の世界を志し、家族や周囲の反対にも屈せず勉強を重ねた。労働者の権利や女性の社会進出を訴え、時代に新しい風を吹き込む政治家として頭角を現していった。
**令和の優斗**
優斗は学生団体を立ち上げ、若者の政治参加を促す活動を始めた。SNSやイベントを通じて多くの同世代に呼びかけ、次第にその影響力を拡大していった。やがて環境問題やデジタル政策の専門家として政界へと進出した。
---
### 再会の日
それから数十年が経ち、昭和の紗江は人生を全うし、彼女の功績は歴史の一部となった。そして令和の優斗は、紗江の名前を調べる中で、彼女が自分と同じ志を持ち、未来を変えた人物だと知る。
ある日の国会議事堂の図書館で、彼は一冊の本を見つける。それは紗江の伝記であり、彼女が篠田優斗という名を心に刻み、行動を起こしたことが記されていた。
本の最後のページにはこんな言葉があった。
> **「未来を託された二人の決意が、時代を超えて世界を繋いだ。」**
優斗は静かに本を閉じ、紗江に想いを馳せた。
「紗江…俺たち、やったんだな。」
それは、時代を超えて繋がった二人の使命が果たされた瞬間だった。
0
お気に入りに追加
9
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる