令和の俺と昭和の私

廣瀬純一

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朝の戸惑い

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(第2章)

朝、紗江が目を覚ますと、優斗の部屋の天井が見えていた。あの不思議な入れ替わりが、また起こっていたのだ。

目をこすり、布団から起き上がろうとしたその瞬間、彼女は違和感に気づいた。身体の中心に、妙な重さと張りつめたような感覚がある。布団に隠れたまま、おそるおそるその感覚を確かめようとする。

「…な、何これ?」

紗江は一瞬、息を呑んだ。心臓がどきどきと早鐘のように打ち始める。この奇妙な感覚は、彼女にとってまったく未知のものだった。少しずつ冷静になろうとするが、どうしてもその現象に対する理解が追いつかない。

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彼女の頭の中で、どうにか冷静になろうと、まずは記憶を辿りながら状況を整理し始めた。彼女は今、男子高校生である優斗の体で目覚めている。ということは、この「現象」も、彼の体に特有のものなのかもしれない、と考えた。

「男子って…こんなこと、毎朝あるのかしら…」

しかし、友人にも家族にも、男子特有の「生理現象」について詳しく聞いたことはない。昭和の時代では、そういった話題はなおさらタブーであり、女子が男子の体のことについて知る機会などなかったのだ。紗江は、どう扱っていいか分からないまま、ただ戸惑うばかりだった。

しばらくそのまま布団に隠れてやり過ごそうとしたが、いつまでもその場にいるわけにもいかない。紗江は意を決して布団を押しのけ、起き上がった。彼の体が言うことを聞いてくれないかのように、少しぎこちなく足を動かしながら洗面所へと向かう。

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洗面所の鏡に映る優斗の顔は、どこかまだ幼さが残る少年の表情だった。紗江は、鏡の前で自分に語りかけるように呟いた。

「これが男子の体なのね…」

顔を洗い、冷たい水でなんとか気を落ち着かせる。しばらくすると、その異変も少しずつおさまり、なんとか落ち着きを取り戻すことができた。

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登校の時間になると、紗江は優斗の体で教室に向かった。教室に入ると、すぐにクラスメートの男子たちが何気ない会話を始める。

「なぁ、お前、朝はいつもどうしてる?なんか色々大変だよな」

「おう、分かる分かる。もう慣れたけど、最初は恥ずかしかったわ。」

一見、何でもない日常会話のようだが、紗江にはそれが男子特有の「生理現象」についての話だと気づき、顔が赤くなった。男子たちは、朝に起こる現象について、冗談交じりに軽く話し合っている。

彼らにとっては「自然なこと」なのだと、紗江はそこで初めて知った。どうやら、この不思議な現象は男性には当たり前のことらしい。

「男子って、案外大変なのね…」

そう小さく呟く紗江だったが、心のどこかで、異性としての新しい理解と、少しだけ成長した自分を感じていた。そして、入れ替わりの経験を通じて、ただ表面的なことではなく、異なる性別や視点に対する理解が少しずつ深まっていくのを感じていた。
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