夫の浮気

命の誕生

洋介と沙織の入れ替わり生活が始まってから、ついに出産の日が近づいてきた。沙織の体に宿った命が日に日に成長し、洋介はその不思議で奇妙な感覚を愛おしく思うようになっていた。お腹の赤ちゃんが動くたびに、そこに新しい命がいるのだという実感がわき、自分が「母親」としての役割を果たす覚悟が固まっていった。

**出産当日**

ある夜、洋介が寝室でうとうとしていたとき、突然お腹に鋭い痛みが走った。「あ…始まったのかもしれない…」と思いながら、沙織を起こし、病院に向かうことになった。車の中、沙織はハンドルを握りながら必死に洋介に声をかけ、落ち着かせようとしたが、洋介の顔には緊張と不安の色が浮かんでいた。

「大丈夫だよ、私もここにいるから」

沙織の励ましの言葉が、洋介の心を少しずつ穏やかにしてくれた。

**陣痛と試練**

病院に到着し、洋介は陣痛と格闘することになった。体の中でどんどん強くなる痛みに、洋介は必死で耐え、沙織の手を握りしめた。沙織も自分の手が痛くなるほど握られながら、洋介を支え続けた。

「こんなに痛いものなんだな…」と洋介が息を切らせながらつぶやくと、沙織はうなずきながら、彼の顔を見て微笑んだ。

「そうだよ。でもその先には、新しい命が待ってるんだから、頑張ろう」

陣痛がピークに達し、洋介の体がもう限界だと思えるとき、医師の「いきんでください！」という指示に合わせて、洋介は全力でその瞬間を迎えようとした。痛みとともに、心の中にある不安や恐怖が一瞬で吹き飛び、「この子を守りたい」という純粋な気持ちだけが胸を満たした。

**新しい命の誕生**

そして、ついに赤ちゃんの泣き声が響いた。洋介は息を切らしながらも、涙を浮かべて笑顔になり、沙織と一緒に新たな命を見つめた。自分がこの体で母親として命を授かったこと、その奇跡の瞬間を二人で共有できたことが、何よりもかけがえのない体験だった。

沙織が赤ちゃんを抱き上げ、洋介の顔の横にそっと寄り添わせたとき、洋介の目には涙が溢れ出していた。沙織も同じく涙を流し、二人はその小さな命を抱きしめた。

「あなたが私たちに来てくれて、本当にありがとう」

小さな命を抱きしめながら、二人は新しい家族としての一歩を踏み出した。