夫の浮気

廣瀬純一

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妻の願掛け

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沙織は夜遅くまで眠れず、布団の中でスマートフォンを握りしめていた。最近、洋介の帰りが遅く、言い訳もどこか曖昧なことが多くなっていた。浮気の証拠はないが、不安が募るばかりだった。

その夜、彼女は思い切って「浮気防止のおまじない」や「夫婦円満のお祈り」といったワードでネット検索を始めた。たくさんのページが出てくる中、「ネットの神社で願掛けできる」という不思議なサイトに辿り着いた。神社の境内がバーチャルで再現されていて、お賽銭を振り込むと、祈りを捧げられるらしい。

「ネットでお参りって、本当に効果があるのかな…?」

疑いつつも、どうしても試してみたい気持ちが勝った。画面の指示に従いながら、沙織は仮想の鳥居をくぐり、バーチャルの賽銭箱の前に立った。画面には、「お賽銭を入れて願い事をしてください」というメッセージが表示されている。沙織はクレジットカードを取り出し、少額のお賽銭を「振り込む」ボタンを押して送金した。

**願い事**

彼女は心を込めて、静かに祈り始めた。

「どうか、どうか、洋介が浮気なんてしていませんように。そして、私たちの関係がまた前のように穏やかでありますように…」

画面の中で、小さな鈴が鳴るアニメーションが流れた。「願いが神様に届きました」というメッセージが表示され、彼女は何となく心が軽くなったような気がした。現実的には何も変わっていないが、「神様にお願いした」という事実が、心の中で少しの安心感を生んだのだ。

**その後の変化**

数日後、驚くことに洋介が以前よりも早く帰宅するようになり、「今日は少しでも一緒に過ごそうと思って」と優しく声をかけてくれるようになった。彼の態度が変わった理由はわからなかったが、沙織は心の中で「もしかして、ネットの神社の力…?」と密かに思った。些細なことかもしれないが、二人の間に少しずつ温かい空気が戻ってきた気がした。

ネットの神社にお参りしたことが、果たして本当に効果があったのかどうかはわからない。でも、そのおかげで一歩踏み出す勇気が湧き、少しずつ不安が薄れていったのは確かだった。
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