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謎の女性
しおりを挟む主人公の**浅野 和真**(あさの かずま)は普通の男子大学生。ある日、友人で科学オタクの**本田 隆一**が、部屋いっぱいに奇妙な機械を並べながら言った。
「これで未来に行ってみないか?」
和真は苦笑いを浮かべて首を横に振ったが、隆一は真剣な顔で言葉を続ける。
「ただ、ちょっとした副作用がある。性別が反転するんだ。タイムトラベルすると、君は女性になる。戻ってくればまた元通りだよ」
不安が湧いたが、好奇心がそれを押しのけた。未来の自分がどんな人生を歩んでいるのか、どうしても見てみたくなったのだ。
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機械のスイッチが入ると、激しい光と音に包まれた。目を開けると、見知らぬ未来の街が広がっている。何よりも驚いたのは、自分の姿だった。鏡の前に映っているのは、間違いなく女性だ。肩まで伸びた髪、柔らかな輪郭、どこか華奢で儚げな印象の顔立ち。全てが見慣れない自分の姿だった。
「…すごい、本当に女になってる」
驚きつつも、和真は興奮していた。そして彼は目的地である、未来の自分の住所へと足を向けた。
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未来の自分が住むアパートに着くと、インターホンを押す手が自然と震えた。インターホンの向こうから「はーい」と少し低めの男性の声が聞こえ、和真の緊張がさらに高まる。ドアが開き、未来の和真と対面する。
未来の和真は20代後半の大人びた男性で、何か大きな会社で重要なポジションに就いているような風格があった。彼は目の前に立つ女性、つまり「自分」を見て少し戸惑っているようだった。
「…あなた、どちら様?」
「えっと、あの、初めまして…」
和真は自分の名前を名乗ることができなかった。どう説明したら良いのかわからない。そして未来の自分を前にして、彼の目の奥に確かに見覚えのある不安や悩みの影が潜んでいることに気づく。
「そうだ、良かったら少し話しませんか?」
自分自身と話すという奇妙な状況に心が騒ぎながらも、和真は少しの間未来の自分とカフェに入り、雑談を楽しんだ。
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未来の和真は、どうやらあるプロジェクトのリーダーとして働いているが、過去の自分が抱えていた夢や希望をすっかり忘れてしまったようだった。和真は「自分」が想像していた将来像とは少し違っていることに気づき、複雑な気持ちになった。
最後にカフェを出る前、未来の和真がふと口を開いた。
「君、なんだか不思議な感じがするな。会ったばかりなのに、昔から知っているような気がする。…不思議だなぁ」
和真は笑みを浮かべ、「私もそう思ってた」と応じた。その瞬間、未来の自分に対して小さなアドバイスを言い出そうか迷ったが、それは「現在の自分」に向けられるべき言葉だと思い、黙った。
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元の時代に戻った和真は、再び男性の姿になっていた。そして未来で見た自分の姿が頭から離れなかった。
「未来の自分に伝えたいこと、たくさんあるけど…でも、今を生きていくしかないんだよな」
再び現代に戻り、和真は隆一に「未来の自分に会えたよ」と話すが、彼が何を見て、何を感じたかは秘密のままだった。その日から和真は、少しずつ未来に向けて今の自分を見つめ直していく。
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