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未来の自分
しおりを挟む#### 1. 友人の発明
大学生の新(あらた)は、いつも通り親友の智也(ともや)の研究室に足を運んでいた。智也は工学部の天才と呼ばれるほどの知識を持っており、大学の研究課題から個人的なプロジェクトに至るまで、好奇心の赴くままに新しい装置を作り上げていた。
その日も、智也は妙に興奮した様子で新に声をかけた。
「見てくれ!ついにタイムマシーンを完成させたんだ!」
「タイムマシーンって…まさか、また冗談じゃないだろうな?」
「いや、本物だ。ちゃんとした原理に基づいてるんだぞ。」
半信半疑だったが、智也の熱意と説明を聞くうちに、新もだんだんとその気になってきた。「ちょっとだけ未来に行って、未来の自分と会う」という智也の提案に従って、新はマシーンの中に入った。
「タイマーを5年後に設定しておくからな!じゃあ、行くぞ!」
智也の言葉とともに、タイムマシーンのボタンが押され、新は一瞬の眩暈に包まれた。そして、次の瞬間、目の前の景色が急に変わり、見知らぬ部屋に立っていた。
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#### 2. 未来の「自分」
新が現れたのは、どうやら5年後の自分の自宅のようだった。周りを見渡しながら、やや落ち着かない気持ちで未来の自分を探していると、背後から足音が近づいてきた。
「誰…かしら?あなた…だれ?」
声の主を見て、新は一瞬息を呑んだ。そこに立っていたのは、見知らぬ女性だった。しかし、どこかで見たことがあるような親近感を覚える顔立ちだった。
「えっと…もしかして、俺のことがわかる?」
女性は目を見開き、驚いたように新をじっと見つめた。次の瞬間、驚きが感嘆に変わる。
「あぁ、もしかして…私が5年前にタイムマシーンを使ったときの私ね?」
「えっ…待ってくれよ、つまり…君が俺の…未来の姿?」
彼女は困ったように笑って、ゆっくりと頷いた。「そうみたい。どうやら、性別が変わる『副作用』があったらしいの。」
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#### 3. 性転換の「副作用」
未来の自分、いや「未来の彼女」は、新に事情を説明してくれた。どうやら、智也が作ったタイムマシーンには予期せぬ副作用があったらしい。タイムトラベルの際に微細なエネルギー波が人体に影響を与え、その結果として性別が変わってしまうというのだ。
「驚いたでしょ?5年前の私も最初はかなり戸惑ったわ。でも、慣れれば意外と悪くないものよ。」
新は頭が混乱しつつも、未来の自分の堂々とした姿にどこか安心感を覚えた。「…そうなのか。じゃあ、君…いや、俺は、こんな風に生きてるんだな。」
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#### 4. 新たな自分への理解
未来の「自分」との会話を通じて、新は彼女の生活や考え方、そして変わっていった価値観に触れていった。彼女は自分が女性になったことを受け入れ、それに合わせて新しい自分の生き方を築いてきたという。
「性別が変わったからって、自分の本質が変わるわけじゃないのよ。」未来の彼女は微笑みながら言った。「むしろ、いろんな経験をすることで、自分の可能性が広がるって気づけたの。」
新はその言葉に考えさせられた。自分が変わっても、自分は自分のままでいられるのかもしれない――そんな風に思えるようになってきた。
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#### 5. タイムマシーンの帰還
そろそろ元の時代に戻らなければならない時間が近づいてきた。新は少し名残惜しい気持ちで未来の「自分」に別れを告げることにした。
「また君に会えるのかはわからないけど、もし戻ってきたら、よろしく頼むよ。」
未来の彼女は新に微笑みかけた。「きっと大丈夫よ。またあなたの道を、しっかり歩いていってね。」
そう言われて、新はタイムマシーンに乗り込み、元の時代に戻った。
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#### 6. 元の時代への帰還
元の時代に戻った新は、タイムマシーンの副作用を恐れながらも、自分の成長を期待するようになっていた。いつか未来の自分に再び会える日が来るのだろうか――その時を思い描きながら、新はこれからの人生に向けて歩み始めた。
智也には、もちろんタイムマシーンの「副作用」についての調整を求めるつもりだが、それでも未来の自分との出会いは、何か新しい発見と勇気を与えてくれる貴重な経験になっていたのだった。
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