秘密のキス

廣瀬純七

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入れ替わった日常

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それから数日、悠と葵の奇妙な生活が始まった。性別が入れ替わる条件が「キス」であることを理解した二人は、なるべく距離を保つよう心がけたが、高校生の日常はそんなにうまくはいかない。

***

### 体育の時間の苦労

「悠、走り方が変だよ!」  
体育の授業中、葵が悠の体で走る姿にクラスメイトたちは首をかしげた。女子の短距離走では1位を争う実力を持つ葵だったが、悠の体で走るとぎこちなく、タイムもいつもの半分以下。

「だってこれ、脚が長すぎて感覚が違うんだもん!」  
悠は抗議するように叫ぶが、その声が葵の高い声で響くと妙に滑稽だった。

一方で、男子バスケの練習に参加していた葵(悠の体)は軽々とシュートを決めていた。  
「お前、なんか今日は絶好調だな!」とチームメイトに褒められ、葵は苦笑いする。

「いや…体が勝手に動いてるだけなんだけどね。」  
心の中でそう呟きながら、ボールを受け取る手の大きさにまだ慣れない自分がいた。

***

### 保健室での危機

「でさ、昼休みにどうやって元に戻るか考えようよ。」  
昼休み、二人は屋上で顔を突き合わせて話していた。が、その途中、うっかり頭がぶつかってしまい――。

「ちょ、悠!顔近い!」  
葵が咄嗟に身を引こうとしたが、すでに遅かった。勢いでまたもや唇が触れてしまったのだ。

「あ…まただ!」  
入れ替わりが起きた瞬間、二人は顔を見合わせて溜息をついた。

「もう、ほんとどうにかならないのこれ…」  
葵は額を押さえ、呆れたように言った。

その後、保健室で先生に怪我の手当てをされることになったが、葵(悠の体)の大柄な体格に対して女性らしい仕草が目立ち、保健の先生が怪訝そうに「君、今日はなんか変ね」とぼやく場面もあった。

***

### 一緒に帰り道

放課後、二人はいつも通り一緒に帰ることになった。街路樹が夕日に照らされる中、二人は沈黙を破るように会話を始めた。

「でもさ、意外と悪くないかも。」悠(葵の体)がポツリと呟いた。

「何が?」  
「お前の視点から世界を見るって、今まで気づかなかったことがたくさんあるんだよな。例えば…歩くときに男子の視線を感じるとか。」

葵は少し赤くなりながら、「そんなの気にしなくていいでしょ!」と返した。

「いやいや、お前だって俺の体使ってバスケ無双してたじゃん!」  
「それは…確かにちょっと楽しかったけど。」  
二人は顔を見合わせて笑い合った。

***

### 二人だけの秘密と絆

「なあ、これってたぶん、誰かに相談するわけにはいかないよな。」悠が真剣な顔で言う。

「当たり前でしょ。こんなこと言ったら絶対変な噂になるし。」葵は肩をすくめた。

「でもさ、これって俺たちにしかできない経験なんだよな。」  
悠のその言葉に、葵は少し考え込んだ。たしかに、奇妙で厄介だけれど、この入れ替わりは二人だけが共有する特別な秘密だった。

「そうだね…でも、もっと上手にやりたいよね。体育とか、学校の授業とか。」  
「それも含めて練習だな。」悠は笑った。

こうして、キスをするたびに性別が入れ替わるという奇妙な運命を共有しながら、二人は少しずつ絆を深めていくのだった。
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