交換ノート

廣瀬純一

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ノート9

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ある日、家族全員が集まったリビングで、弟のたかしが古びたノートを見つけた。

「これ、何だろう? お姉ちゃんの部屋にあったけど」

姉のさやかはびっくりして、それを奪い返そうとするが、たかしは面白がってノートを広げてしまった。そこには「顔交換ノート」と大きく書かれている。

「顔交換ノート? なんだこれ、めちゃくちゃ怪しいじゃん!やってみようよ!」

父のひろしも母のゆかりも、最初はあまり興味を示していなかったが、たかしがしつこく「ちょっとだけやってみよう」と言うので、家族みんなで試すことに。

「じゃあ、最初はお父さんとお母さんだ!」たかしが大笑いしながらノートに二人の名前を書いた。すると、ノートがピカピカと光り始め、次の瞬間、二人の顔が入れ替わってしまった。

「おい、たかし! 何をしたんだ!」とひろしの声が、母の顔から発せられる。

「えええ、なんで私の顔にあなたの髭が!」ゆかりも驚いている。

たかしは大笑い。「おもしろすぎる!次はお姉ちゃんと僕!」

ノートに二人の名前を書き込むと、今度はたかしとさやかの顔が入れ替わった。弟の顔で「お姉ちゃん、これやばいね」と話すさやか。たかしは姉の顔で何度も鏡を覗き込みながら「僕、こんな顔してたんだ」と興味津々。

「ちょっと待って、どうやって元に戻すの?」ゆかりが焦り始めた。「このままじゃ外にも出られないわよ!」

「えっと、戻し方は……」たかしがノートを調べてみるが、戻し方に関する説明はどこにも書かれていない。

その瞬間、家族全員に冷たい空気が流れた。これ、ひょっとして戻れない? 次第にその可能性が現実味を帯びてきた。

「えー、そんな!私このまま弟の顔で生きるの!?」さやかが頭を抱える。

ひろしは新しい自分の顔を触りながら「まあ、これはこれで面白いかもしれない」と言い出した。「毎日違うことを経験できるかもな。夫の顔で母親をやるのも悪くない」

ゆかりも最初は抵抗していたが、次第に「まあ、子どもたちが学校でどうなるかは心配だけど、私はひろしの顔でもいいかもね」と冷静になり始める。

たかしも姉の顔を撫でながら「これはこれで面白いかも。僕、学校でみんなを驚かせられる!」と大笑い。

こうして、家族は顔が元に戻らないまま、それぞれ新しい顔で生活を続けることに決めた。

それから数日が過ぎ、周囲の人々は最初は驚いたが、家族全員が意外にも楽しんでいる姿を見て、次第に慣れていった。お父さんはお母さんの顔で仕事に行き、たかしはお姉ちゃんの顔で友達と遊び、お母さんはお父さんの顔で近所の人たちと談笑し、さやかは弟の顔で学校に通った。

「顔なんて、結局ただの見た目だし、家族は家族だよね」と笑うさやかの言葉に、家族全員がうなずいた。

その日から、顔は入れ替わったままでも、家族の絆はより一層強まったのだった。
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