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大智の手料理
しおりを挟む夕方、台所から漂ってくる香りに家族全員が驚いた。普段は料理にほとんど触れない弟の大智(母・陽子の体)が、何やらガチャガチャと調理器具を操っている。
「お母さん、大丈夫? 今日はなんか音が大きいけど…」
父親と入れ替わった姉の美咲がリビングから声をかけるが、台所から返ってきたのはぎこちない声だった。
「だ、大丈夫!ちゃんと作ってるから!」
そう言いつつ、大智は玉ねぎを切る手元を気にしながら必死だった。
**「母さんの体なら、料理くらいどうにかなると思ったけど…こんなに難しいのかよ!」**
母親が台所で見せている華麗な包丁さばきを自分もできると思っていた大智だったが、現実はそう甘くなかった。
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**「見た目が問題…?」**
1時間後、なんとか食事が完成した。家族全員がテーブルに座ると、大智は母親の体のまま、大皿に盛った料理をリビングに運んできた。
「はい、今日は僕が…じゃなくて、お母さんが作った特製カレーとサラダ!」
見た目は正直言って、少々微妙だった。サラダの野菜は大きさがバラバラで、カレーのルーには何か焦げたような黒い点が見える。
姉の美咲は箸を持ちながら眉をひそめた。
「これ、本当に大丈夫? なんか…形が変なんだけど。」
父(大智の体)がニヤリとしながらフォローした。
「まあまあ、味が良ければ見た目は関係ないから。」
一方、母(姉の体)は大智を信じて一口食べた。そして、目を見開いた。
「…これ、すごく美味しいじゃない!」
その声に釣られるように、他の家族も恐る恐るカレーを口に運んだ。
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**「美味しさに感動」**
「え、これ大智が作ったの? めっちゃ美味しいんだけど!」
姉の美咲が驚きの表情を浮かべながら、フォークを動かし続ける。
父も「確かにこれは…お店レベルかもしれない」と真顔で評価する。
大智は照れ隠しに鼻をかきながら、さりげなく言った。
「ま、ちょっと研究したからな。味付けはお母さんのレシピ帳を見たけど、俺なりにアレンジしたんだ。」
「このスパイスの使い方、お店の味みたいだわ。」
母が感心しながら言うと、大智は少し嬉しそうに笑った。
「まあ、盛り付けはまだまだだけど、味が良ければいいよな?」
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**「家族の温かい笑顔」**
その後、テーブルを囲む家族の会話は終始和やかだった。美咲は「次はデザートも作ってよ」とリクエストし、父は「これで見た目も良ければ完璧だ」と笑いながらカレーのおかわりを求めた。
大智は心の中で少し誇らしい気持ちを抱きながら思った。
**「料理って意外と楽しいかもな。でも、次はもうちょっと見た目も頑張るか。」**
こうして、母親の体に入った大智は、自分の新たな才能を発見したのだった。
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