40 / 51
玲奈に相談
しおりを挟む寮に戻ると、結衣は自室に直行したものの、落ち着かない気持ちのままベッドに倒れ込んだ。
(健一から……結婚を前提に付き合ってほしいって……)
何度思い返しても、現実味が湧かない。
バーチャルの世界とはいえ、自分は本来男であり、ここでの生活もあと2か月で終わるはず。それなのに、本気で恋愛をするなんて……。
悶々と考え込んでいると、不意にドアがノックされた。
「結衣~? いる?」
玲奈の声だった。
「……うん、入っていいよ。」
玲奈が部屋に入ってくると、結衣の顔を見てすぐに異変を察したようだった。
「何その疲れた顔? もしかしてデート、上手くいかなかったの?」
「それが……」
結衣は玲奈に今日の出来事を話し始めた。
健一に夜景の綺麗なレストランに連れて行かれたこと。
楽しく食事をしていたら、突然「結婚を前提に付き合ってほしい」と告白されたこと。
どう答えればいいか分からず、とりあえず返事を保留にしたこと――。
一通り話し終えると、玲奈は少し驚いた顔をしてから、クスクスと笑った。
「な、何?」
「いや、ついに結衣もバーチャル恋愛の洗礼を受けたな~って思って。」
「洗礼って……笑いごとじゃないよ!」
玲奈はベッドの端に腰掛けながら、優しく微笑んだ。
「まあ、そりゃあ混乱するよね。でも、結衣にとって健一くんってどういう存在なの?」
「……え?」
「その告白を聞いて、どう思ったの?」
「それは……びっくりしたし、正直困惑してる。でも……嬉しくなかったわけじゃない。」
結衣はぽつりと呟いた。
健一と過ごす時間は楽しくて、彼の優しさや気遣いに何度も救われた。それは間違いない。でも、それが“恋愛感情”なのかどうかは分からない。
玲奈はしばらく結衣の言葉を噛みしめるように考えた後、ぽつりと言った。
「このバーチャルの世界ではね、本当の自分が何者なのか、時々分からなくなることがあるの。でも、それは悪いことじゃないんだよ。」
「……?」
「だって、結衣は結衣として生きているんでしょう? ここで感じること、考えることは、全部本物なの。リアルの性別とか、元が男とか、そういうことをいったん忘れてみたら?」
玲奈の言葉が胸に刺さる。
「私のアドバイスとしてはね……“今の気持ち”を大事にしなさいってこと。もし少しでも彼といたいと思うなら、それを素直に受け入れてみてもいいんじゃない?」
「……私の気持ち……。」
(私は、健一のことをどう思っているんだろう……?)
玲奈の言葉を噛み締めながら、結衣はまだ答えの出ない気持ちを抱えていた。
12
あなたにおすすめの小説
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる