とある会社の秘密の研修

廣瀬純七

文字の大きさ
4 / 51

鏡の中の自分

しおりを挟む

「ここがあなたの部屋よ、中村さん。」  

先輩社員がそう言ってドアを開けると、そこにはシンプルながらも清潔感のある部屋が広がっていた。二つのベッドに、クローゼット、デスク、本棚。ルームメイトはまだいないらしく、室内は静かだった。  

「じゃあ、ゆっくり荷解きでもしてね。困ったことがあったら、みんなに聞けば大丈夫だから。」  

先輩が優しく微笑む。  

「は、はい……ありがとうございます。」  

結衣——いや、健一はぎこちなく答えた。  

ドアが閉まり、一人きりになると、ようやく少し落ち着いた。  

「……ふぅ。」  

深く息をつき、部屋を見渡す。何もかもがリアルすぎる。手を伸ばせば触れられるし、木の香りすら感じる。これが本当に**バーチャルの世界**なのか?  

ふと、クローゼットの横にある姿見の鏡が目に入った。  

恐る恐る、その前に立つ。  

鏡の中には——見知らぬ美しい女性がいた。  

「……これが、俺?」  

長く艶やかな黒髪。大きな瞳に、繊細な顔立ち。スーツ姿もすらっと決まっているが、自分の動きに合わせて揺れる髪の毛や、かすかに見える首筋のラインが、どう見ても“女性”だった。  

震える手をそっと頬に当てる。柔らかい肌。  

喉をなぞってみる。細く、なめらかな感触。  

次に両手を胸元へ——  

「……っ!」  

驚いて手を引っ込めた。確かにそこに“ある”感触。間違いなく、自分は今、女性の身体になっている。  

**バーチャルのはずなのに——まるで本当に変わってしまったみたいだ。**  

心臓がドクン、と跳ねた。  

自分の身体じゃないのに、自分として動く。言葉では説明できない感覚に、思わず鏡をじっと見つめる。  

「……本当に、三か月間、これで過ごすのか……?」  

現実感のない現実。健一の研修は、まさに今始まったばかりだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

リアルメイドドール

廣瀬純七
SF
リアルなメイドドールが届いた西山健太の不思議な共同生活の話

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

ボディチェンジウォッチ

廣瀬純七
SF
体を交換できる腕時計で体を交換する男女の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

大東亜架空戦記

ソータ
歴史・時代
太平洋戦争中、日本に妻を残し、愛する人のために戦う1人の日本軍パイロットとその仲間たちの物語 ⚠️あくまで自己満です⚠️

処理中です...