性転換カクテル

廣瀬純一

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戻れない夜

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「一度飲んだら、元には戻れないかもしれないよ?」

バーカウンターの奥で微笑むバーテンダーが、不思議な色のカクテルをグラスに注いでいた。青と紫が渦巻く液体が、月明かりの下で不気味に輝いている。

「本当にこれ飲むの?」と、ユウは隣に座るカナに尋ねた。

「興味あるじゃん、面白そうだし!」カナは肩をすくめて笑いながら答えた。「性転換カクテルなんて、普通飲めないよ!お互いどう変わるか試してみたいと思わない?」

ユウは少し迷ったが、カナの楽しそうな顔を見ると、拒否できなくなった。付き合い始めて数年。カナの好奇心に引きずられることが多かったが、それが彼らの関係を常に新鮮なものにしていた。

「じゃあ、やってみようか。」

ユウとカナは同時にカクテルを持ち、乾杯の音と共に一気に飲み干した。

最初は何も感じなかった。だが、数分も経たないうちに、二人は奇妙な感覚に襲われ始めた。

「なんか…変な感じがする。」ユウが言う。

「私も…」カナが自身の体を見下ろすと、その変化が始まっていた。胸が徐々に平らになり、肩が広がっていく。髪も短くなり、身体全体が強く引き締まる感覚に変わる。

「うわ…本当に…変わってる。」ユウもまた、目の前の鏡に映る自分の姿に驚いた。彼の体は徐々に女性的なラインを帯び、声も高くなっていた。

カナは、今や筋肉質で男性的な自分の体を見つめながら、信じられないように笑った。「ユウ、見て!私、めちゃくちゃ男じゃん!」

「いや、私こそ…信じられない。」ユウは新しい自分の体に手を這わせ、その感覚に戸惑っていた。

二人は最初、軽い冗談としてこの奇妙な現象を楽しんでいた。鏡の前でお互いの姿を確認し、体の変化を見て笑い合った。けれど、その興味は次第に別の方向へと変わっていった。

「ねぇ、ユウ…これって、もし…」カナが不意に口を開いた。声は低く、まるで別人のようだった。

ユウも同じことを考えていた。目の前にいる「カナ」は、今や完全に男性で、強い肉体を持っている。そして、自分自身もまた女性としての体を持ち、その感覚に戸惑いながらも、どこか興奮している自分に気づいていた。

「試してみる?」カナがそっと言う。

それは危険な一歩だったが、二人の間にあった緊張感は、理性を超えて彼らを突き動かした。好奇心が理性を飲み込み、彼らはその夜、互いの新しい体を通じて関係を持ってしまった。

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朝が訪れたとき、ユウはベッドで目を覚ました。体の違和感はまだ残っていたが、それよりも心に重くのしかかる感覚があった。昨夜のことが頭をよぎり、彼は隣にいるカナを見た。カナも目を覚まし、しばらく無言で天井を見つめていた。

「戻ってない…ね。」カナがぽつりと呟く。

ユウは小さくうなずいた。二人の体は元の姿に戻っていない。昨夜のカクテルの効力は消えるどころか、完全に定着してしまったようだった。

「どうする…?」カナが不安そうに言う。

「わからない。」ユウは冷たい現実に直面したが、その一方で心の奥にある感情が掻き立てられていた。昨夜、彼女として感じた感覚、そしてカナと新しい関係を持ったことで、どこか自分が解放されたような気がしていた。

「でも…」ユウはそっと微笑みながら言った。「悪くなかったかも。」

カナも、しばらく考えた後、同じように笑みを浮かべた。「そうだね。思ったより…」

その後、二人は元に戻る方法を探さず、ただ新しい自分たちの体で生きることを選んだ。最初は戸惑いも多かったが、次第にその生活に慣れ、互いの新しい役割を楽しむようになった。

そのカクテルは、元の人生を変えてしまったが、彼らはそれに後悔しなかった。興味本位で踏み込んだ関係が、二人にとっての新しい未来を切り開いたのだ。

---

**終わり**
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