ジェンダーレス社会

廣瀬純七

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20xx年

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性転換パンストが発明されてから、世界は大きく変わった。それまでのジェンダーの概念は一変し、誰もが自由に性別を変えることができる「ジェンダーレス社会」が実現した。

このパンストは、履くだけで体の性別を物理的に瞬時に変化させるという革命的な技術だ。最初は奇抜なアイテムとして、マニアの間で流行したが、瞬く間に広まり、今ではほとんどの日常生活に取り入れられている。

パンストを履くことで、骨格や体つき、声質、さらには内臓までが変わり、完全にその性別の体になる。脱げば元に戻るので、一時的な変化も可能だ。履く人の意識に基づいて性別が決まるため、自分がどちらの性別を望んでいるかをはっきり認識していれば、その通りの体に変わる。そして一度変化すれば、その性別での生活が可能になる。

この技術の普及により、性別に基づく制約は消え、例えば、職場や学校では「男性専用」「女性専用」といった区分は消滅した。多くのトイレや更衣室は男女共用となり、性別による分断は過去のものとなった。また、スポーツ界でも新たなルールが設けられ、性別に関係なく能力が評価される仕組みが整えられている。

都市の風景も変わった。ショッピングモールでは「女性向け」「男性向け」といったセクションが無くなり、全ての服やアクセサリーは性別を問わず自由に選べるようになった。美容院では髪型のカタログもジェンダーレスだ。「女性的」「男性的」といった概念自体が薄まり、人々は自分が好きなスタイルを気軽に選ぶ。

社会の中では、パンストの使用を頻繁に切り替える人々も増えた。たとえば、平日は男性の体でビジネスに勤しみ、週末は女性として友人とショッピングを楽しむ。家族や友人もそれを自然に受け入れ、「今日はどっちの体?」と会話が交わされることが普通だ。性別が変わることはもはや驚くべきことではなく、むしろ「個人の選択」として尊重されている。

また、パンストの使用は個人のプライバシーにも配慮されており、誰かが今どの性別でいるかを他人が判断する手段は存在しない。性別が周囲から判断されないことで、性的なハラスメントや差別は大きく減少し、人々は自分自身をより自由に表現できるようになった。

ただし、社会の全てが完全に順風満帆ではない。パンストを使わない「固定性別派」の人々も一定数存在し、彼らは自分の性別を変えずに生きることに誇りを持っている。ジェンダーレス社会への急速な変化に対して、伝統的な価値観を守ろうとする運動も根強く存在し、特に年配層の間では「パンスト依存は個性を失う」といった懸念も聞かれる。

一方で、性別という枠に囚われないことが、新たな個性の形を生んでいるという声もある。人々はジェンダーに関わる固定観念から解放され、自分自身の価値をより深く見つめるようになった。性転換パンストは単なる道具ではなく、自己表現の自由を象徴する存在となっている。

未来のジェンダーレス社会は、パンストによって性別の垣根が無くなったことで、個々の才能や魅力が性別に関わらず評価される新しい時代へと進化していく。人々は自分の生き方を選び取り、その日、その瞬間の自分を自由に表現できる。性別という概念が、今やただの一つの選択肢に過ぎなくなったこの世界では、何が本当の「自分」なのかが、より重要な問いとなっているのかもしれない。
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