兄になった姉

廣瀬純一

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「俺の服と姉の服」

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姉の真奈美が催眠術で自分を「男」と思い込むようになってからというもの、家の中は何かと騒がしい。服装もすっかり男っぽくなって、前まではスカートやワンピースが大好きだった姉が、今ではジーンズにTシャツ、時には僕が着るようなジャージまで好んで着ている。姉自身はその姿に満足しているようで、すっかり馴染んでしまった。

ある日、僕が学校から帰ると、姉が部屋の前で腕を組んで待っていた。

「おかえり、健太」と姉は言った。

「どうしたの?」と僕が尋ねると、姉は少し考え込んだような表情を見せてから、「今日、お前の服をちょっと貸してほしいんだ」と言い出した。

普段から僕の服を借りることもあるので、特に気にすることなく「いいよ、何でも持ってって」と言った。しかし、姉の次の言葉に驚いた。

「じゃあ、今日はお互いの服を交換してみないか?」

僕は一瞬、どう返事をすればいいのかわからなくなったが、姉が面白がっている様子を見ると断るのもなんだか変な気がして、結局交換に同意した。

僕は姉の服を手に取り、自分の部屋で着替えることにした。見た目は男っぽくても、やはりサイズや形が違っていて、着てみると意外とぴったりしていて窮屈だ。それでも、不思議と着ているうちに何だか新しい自分になった気がしてくる。

一方、僕の服を着た姉は普段以上に堂々としていて、すっかり「兄」になりきった様子だった。僕のTシャツを着て、手を広げながら「どうだ、似合ってるだろ?」と笑顔を見せた。僕も思わず笑ってしまい、「案外似合ってるかもね」と返した。

その後、二人で鏡を見てみると、なんだか不思議な光景だった。姉が僕の服を着て僕らしく、僕が姉の服を着て姉らしく――というより、お互いにお互いの一部を取り入れたような感じがした。

その日は、姉とお互いの服を着て家の中で過ごし、家族も驚きつつも笑って見守ってくれた。姉は自分が「男」だと思い込んでいるけれど、少しずつ今の自分を受け入れつつあるようだ。これからも、姉とこんな風に気ままに一緒に過ごしていけるのかなと思うと、なんだか嬉しくなった。

やっぱり、姉は姉で、僕の大切な家族だ。
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