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入れ替わりの湯
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恋人同士の浩一と沙織は、山間にある秘湯の温泉宿に来ていた。都会の喧騒を離れ、ゆっくりとした時間を二人で過ごすために計画した旅行だ。
「ここの温泉、すごい評判なんだって!」沙織は興奮気味に話した。「何でも不思議な力があるって言われてるの。」
「へぇ、不思議な力ね。まぁ、癒しの力とかかな?」浩一は軽く笑いながら沙織の言葉を聞き流していた。彼は特にオカルトや不思議な話には興味がなかった。
宿に到着すると、二人はまず部屋に荷物を置き、一息ついた。すると、宿の女将が部屋を訪れ、微笑みながらこう言った。
「今日は特別な日で、秘湯の『入れ替わりの湯』が開いております。よろしければ、是非お二人でお楽しみくださいませ。」
「入れ替わりの湯?」浩一は首をかしげた。
「はい、こちらの混浴風呂では、男女が一緒に入浴すると、何か特別な体験ができると言われておりますよ。」
沙織は興味津々だった。「面白そう!行ってみましょうよ!」
浩一は少し気が進まなかったが、沙織の期待に満ちた笑顔を見ると、断る理由もなく、結局一緒に行くことにした。
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温泉に着くと、そこは小さな隠れ家的な露天風呂だった。木々に囲まれた湯船からは、静かな山の風景が一望でき、自然の静けさが心を落ち着かせる。風呂には誰もいなかった。
「いい場所だな…」浩一は感心しながら服を脱ぎ、沙織もそれに続いて浴衣を脱いだ。二人はゆっくりと温泉に入った。
「気持ちいいね~」沙織は湯の中でリラックスして目を閉じた。浩一も同じように湯の感触を楽しんでいた。
しかし、しばらくすると、浩一は突然体に違和感を感じた。
「…ん?なんか変な感じがするな。」
沙織も目を開け、驚いた顔で自分の体を見た。「えっ、何これ…?」
二人は慌ててお互いを見つめ合った。そして、その瞬間、信じられないことに気づいた。
「俺…お前の体に入ってる!?」
「私も…浩一の体に!?」
二人は完全に入れ替わっていた。沙織は浩一の男性の体になり、浩一は沙織の女性の体に入っていた。最初は混乱し、信じられないような気持ちでお互いの体を確認し合った。
「これは…どういうことだ?」浩一は自分の元々の体を見つめ、何度もまばたきを繰り返した。彼の声は今、沙織の高い声になっていた。
「さっきの『入れ替わりの湯』って、本当に入れ替わるってことだったのね…!」沙織は驚きと興奮を抑えきれず、自分の新しい体を見つめた。
「いや、こんなの冗談だろ!?どうやって元に戻るんだよ!」浩一は動揺して湯から飛び出しそうになったが、沙織が笑いながら止めた。
「落ち着いてよ、浩一。せっかくなんだから、この状況をちょっと楽しんでみない?」沙織は自分の今の男らしい体を軽く動かしながら、不思議そうに言った。「これって、一生に一度の経験よ!」
「お前、本気で言ってるのか?」浩一は戸惑いながらも、沙織の提案に半信半疑だった。
「ちょっと、私の体でどんな感じがするか試してみなさいよ。私もあなたの体を動かしてみたいし!」沙織は興味津々で、湯船の中で男らしく腕を回したり、立ち上がって伸びをしたりした。
浩一は沙織の提案に渋々従い、自分の新しい体、つまり沙織の体を見つめた。彼女の細い腕や小さな手の感覚は、自分とは全く違うものだった。恐る恐る体を動かし、湯の中で足を伸ばしたり、腕を回したりしてみたが、体の軽さに驚いた。
「なんだ、思ったより動かしやすいな…」
「でしょ?」沙織はにっこりと笑い、自分の(浩一の)胸筋を見つめながら、「これ、私の体にはない筋肉だわ!」と感心していた。
二人はしばらくの間、自分たちの入れ替わった体を試すように動かして楽しんだ。しかし、次第に浩一はこの状況に対して少し不安を感じ始めた。
「なあ、沙織、どうやって元に戻るんだろう?」
「うーん、たぶんもう一度この湯に入れば戻れるんじゃない?」沙織は軽く答えたが、少しだけ不安そうな顔をした。
「だといいんだけど…」浩一は湯船の縁に寄りかかり、深呼吸をした。
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しばらく湯船に浸かっていると、再び体に不思議な感覚が訪れた。
「お、また…何か感じる。」浩一が言うと、沙織もすぐに反応した。「私も!」
次の瞬間、二人は再び元の体に戻っていた。
「よかった!戻った…」浩一はほっと胸を撫で下ろした。
「面白かったね!」沙織はまだ興奮冷めやらぬ様子で笑顔を浮かべていた。「もう一回やってみる?」
「いやいや、十分だよ。」浩一は笑いながら手を振った。「もうしばらくは普通の風呂でいい。」
二人はその後も温泉を楽しんだが、入れ替わりの湯での出来事は、二人にとって一生忘れられない不思議な思い出となった。
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### 終
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