謎の生物

廣瀬純一

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姉の男性化

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翔太は、咲良が無事に回復したことに安心しつつも、心のどこかに不安が残っていた。あの生物の恐怖から解放されたと思ったのに、日が経つにつれて、咲良に何か変わったことが起こり始めたのだ。

ある晩、翔太が勉強をしていると、ふと咲良の部屋から物音が聞こえた。耳を澄ませると、彼女の声が聞こえる。どうやら何か話しているようだった。翔太は好奇心から立ち上がり、そっと部屋のドアを開けた。

「姉ちゃん、大丈夫？」

部屋の中に入ると、咲良はベッドの上で悩んでいるように見えた。彼女の顔は少し青白く、まるで何かに取り憑かれたかのような表情をしていた。

「翔太……なんか変なんだ。体が……」

咲良の言葉が途切れる。彼女は一瞬、自分の腕をじっと見つめた。翔太はその視線の先に目をやると、思わず息を呑んだ。咲良の腕は、明らかに以前とは違っていた。筋肉が少し盛り上がり、皮膚の質感も変わっているように見える。

「何かあったのか？　体調はどうなんだ？」

「わからない。ただ、なんだか体が重くて、力が入らない。しかも、変な感覚がする……」

咲良は一瞬うつむき、次に顔を上げた。翔太は思わず目を瞠る。咲良の顔立ちは以前よりも骨ばって見え、目つきも少し鋭くなっている気がした。

「何か変わったんだ、体が……」

その時、翔太は彼女の声が少し低くなっていることに気づいた。言葉の響きが微妙に異なり、明らかに彼女の体に変化が起きているのだ。

「それって、あの生物のせいじゃないのか？」

咲良は何も言わず、ただうつむいた。翔太は彼女の手を取ろうとしたが、咲良は振りほどくように立ち上がった。

「翔太、私……もしかしたら、本当に変わってしまうかもしれない。私の体、男の子みたいに……」

彼女の言葉が、翔太の心を不安にさせた。咲良はどんどん体が変わっていくのを感じているらしい。今までの彼女の優しい雰囲気が、少しずつ男らしい印象に変わっていくのが分かった。

「姉ちゃん、大丈夫なのか？　医者に行ったほうが……」

「行けないわ。変わりたくないのに、体が私の意思とは逆に変わっていく。どうすればいいのかわからない……」

その夜、咲良は不安そうに床を行ったり来たりしながら、自分の身体を抱えるようにして過ごした。翔太はその様子を見ながら、何か助けになれることはないかと必死に考えた。謎の生物に血を吸われたことが、こんな変化をもたらすなんて信じられなかったが、今は彼女を支えるしかできない。

数日が過ぎ、咲良の体はますます男らしくなっていった。体格がしっかりし、声も低くなり、見た目も少しずつ変わってきている。翔太は彼女にどう声をかければ良いのか分からず、ただ見守ることしかできなかった。

「私はこのままでいいの？　翔太……」

ある晩、咲良がついに声を上げた。翔太は彼女の目を見つめ、「俺は姉ちゃんが誰であっても変わらず好きだよ」と答えた。

咲良は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに悲しげに微笑んだ。「ありがとう、でも私は自分を失っていく気がする。このままではいけないと思うのに、止められないの……」

翔太は思い切って言った。「じゃあ、もう一度あのバスルームに行ってみよう。あの生物がどこにいるのか、何か手がかりがあるかもしれない。あのときのこと、思い出さないと……」

咲良は考え込むようにうなずいた。確かに、あの生物が原因でこんなことになっているのなら、何か解決策が見つかるかもしれない。

翌朝、二人はバスルームに向かった。湿気のある空間は、以前の恐怖を思い出させる。翔太は緊張しながらも、咲良の手を強く握りしめた。

「行こう、姉ちゃん。これが最後のチャンスだ。」

咲良は深呼吸し、バスルームの中に入った。床は湿っていて、先日の出来事が夢のように感じられた。しかし、そこに何かが待っているのかもしれないという緊張感が漂っていた。

「…出てきて！」

翔太が声を張り上げると、何かが動いた気配を感じた。すると、排水口から黒い影が現れた。驚くことに、それはまるでペニスのようだったが、周囲には異様なエネルギーが感じられた。

「これが……あの生物？」

咲良が恐る恐る近づくと、謎の生物はしなやかに彼女の手に寄り添うように動いた。翔太はその光景に驚いたが、咲良はその生物に視線を集中させていた。

「私の体、元に戻して……」

咲良が心から叫ぶと、謎の生物はその瞬間、彼女の腕に吸い付くように張り付いた。翔太は咲良の体を心配しながらも、そのまま見守るしかなかった。

すると、謎の生物が彼女の体に吸い付くと、まるで何かが吸い取られていくような感覚が周囲に広がった。咲良の表情は苦しそうだったが、次第にその顔が穏やかになっていく。

「翔太……！　なんだか、元に戻っていく気がする……！」

その瞬間、咲良の体から光が放たれ、周囲が一瞬にして明るくなった。翔太は目を細めてその光を見つめた。咲良は光に包まれながら、少しずつ元の姿に戻っていくのを感じた。

光が収束し、咲良の姿が元に戻ったとき、翔太は胸が熱くなった。咲良の目は元の優しさを取り戻しており、体も元の細いままで、男性化の影は完全に消えていた。

「よかった……本当に、戻ったんだ……」

翔太は咲良の肩を抱きしめ、二人はお互いに微笑み合った。あの蛭の影響は完全に消えたようだ。しかし、翔太の心の中には、今後も何かが続いていくのではないかという不安が残っていた。

「でも、どうしてこんなことが起きたんだろう？」

咲良は少し考え込み、目を伏せた。「わからない。でも、私たちの家には何かがあるのかもしれない。あの生物も、何かの象徴なのかもしれないわ。」

翔太はうなずいた。彼らはこの出来事を忘れることはできないだろう。今後も、家に秘められた謎に立ち向かっていく必要があるかもしれないと感じた。

「でも、どんなことがあっても、俺は姉ちゃんの味方だからな。」

「ありがとう、翔太。これからも一緒に戦おうね。」

二人は信頼し合い、これから普通の生活これからも続いていくことを決意した。

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