謎の生物

バスルームの探索

翔太は咲良のことが気がかりで、何度も部屋を振り返りながら家中を調べ始めた。窓やドアの隙間、通気口など、謎の生物が入り込む可能性のある場所を見つけようとするが、特に異常は見当たらない。外はまだ静かで、朝の光が淡く差し込んでいるが、心の中の不安はどんどん大きくなっていく。

「どこから……こいつは一体どこから来たんだ？」

バスルームに戻ると、昨夜の出来事が鮮明に蘇る。蒸気で曇った鏡、湿った床、そしてあの謎の生物が張り付いていた空間。翔太はその場で立ちすくみ、心の中に奇妙な疑念が湧いてきた。まさか、このバスルームが何かに関係しているのではないか？

バスルームの床に目をやると、湿ったタイルの隙間には、薄い血のような赤い痕跡がわずかに残っている。それはまるで、あの生物がここで咲良の血を吸った証のようだった。

翔太は恐る恐る浴槽の排水口を覗き込んだ。そこには、薄暗い水がたまり、ゆっくりと渦を巻いている。普通なら見過ごしてしまうような何でもない光景のはずだが、翔太はそこに何か不吉なものを感じた。

「まさか、ここから……？」

彼は排水口の周りをよく観察すると、そこに奇妙な模様が刻まれていることに気づいた。普段は見落としていたその模様は、まるで古い呪術か儀式のような不気味な形をしていた。翔太はぞっとしながら、排水口をさらに覗き込んだ。突然、冷たい風が頬を撫で、翔太は反射的に後ずさった。

その瞬間、排水口から小さな音が聞こえた。「ぬちゃ……ぬちゃ……」と、何かが蠢いているような音だった。翔太の心臓が跳ね上がる。音は徐々に大きくなり、まるで何かがこちらに迫ってくるかのようだ。

「やばい、ここだ……」

翔太はすぐにバスルームから飛び出し、扉を閉めた。心臓が激しく鼓動しているのが感じられる。これ以上は耐えられなかった。何かがおかしい、この家全体がどこか異常だ。

咲良の部屋に戻ると、彼女の股間には謎の生物が張り付いたまま横たわっていたが、呼吸は浅く、苦しそうな様子だった。翔太は無力感に打ちひしがれながらも、必死に考えを巡らせた。

「何とかして、この家から出ないと……」

だが、次の瞬間、咲良が微かに声を上げた。「翔太……出られない……」

翔太は驚いて彼女の顔を覗き込んだ。咲良の目はかすかに開いているが、焦点は合っていない。まるで遠くを見つめるように虚ろな表情だった。

「出られないって……どういうことだよ、姉ちゃん！」

「この家……生物が……私の……」

咲良は途切れ途切れに言葉を発しながら、再び目を閉じた。翔太の心臓は一気に冷え込み、恐怖が再び全身を駆け巡った。咲良の言葉は、ただの錯乱状態によるものではない。本当にこの家そのものが、この生物と何か関係しているのかもしれない。

翔太は咲良をこのまま放っておけないと決心した。彼女を助けるためには、この家の秘密を突き止める必要がある。そして、何かが彼女を苦しめているのであれば、それを破壊しなければならない。

彼は再びバスルームに向かい、排水口を封じる方法を考えながら、家の奥にある古い地下室を思い出した。地下室には、家の由来に関する古い文書や道具が保管されているという噂があった。もしかすると、そこにこの生物の謎を解く手がかりがあるかもしれない。

「地下室だ……」

翔太は決意を固め、地下室への階段に足を向けた。そこに何が待ち受けているのかは分からないが、姉を救うためには進むしかなかった。