美咲の初体験

廣瀬純一

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拓也の妊娠

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「体調が最近ずっとおかしい……」

数日間、体のだるさや疲労感が続き、どうにも調子が上がらない拓也は、自分の体――美咲の体に何か異変があることに気づいていた。いつもなら少し休めば回復するはずなのに、今回は違う。さらに、食欲が増してきたり、逆に特定の食べ物を見るだけで気持ち悪くなったり、感情の起伏も激しくなっている。

「ストレスかな……? でも、美咲の体でこんなに疲れるなんて……」

オフィスで書類を整理しながらも、頭の中で違和感がぐるぐると渦巻いていた。お腹のあたりに不思議な重さを感じるようになり、何かがいつもと違う。だが、原因が全くわからないまま、彼は次第に不安を抱き始めていた。

その夜、家に帰ってきた拓也は、ソファに倒れ込むように座り、スマホで「女性の体調不良 原因」と検索を始めた。すると、あるキーワードが目に飛び込んできた。

「妊娠初期の症状……?」

画面に表示されたリストには、自分が感じている症状が次々と当てはまっていた。倦怠感、吐き気、感情の起伏の激しさ――まるで自分の状態を正確に説明しているかのようだ。

「まさか……そんなはずないだろ……」

自分が男性であるという感覚が、妊娠という現実を信じることを拒否していた。しかし、今は美咲の体で生きている。彼は急に心配になり、考え込んだ。

「まさか、本当に……?」

不安が頭をよぎり、彼はすぐに近くの薬局で妊娠検査薬を購入してきた。帰宅後、緊張しながらトイレに入り、指示に従って検査薬を使う。

しばらく待った後、彼は結果を見るために目を閉じていた瞼をゆっくりと開いた。

「……うそだろ……」

検査薬に表示されたのは、はっきりとした「陽性」のマークだった。

心臓が止まりそうになった。手が震え、体全体に冷たい汗が流れる。現実感がなく、足元がふわふわと浮いているような感覚に襲われた。

「俺が……いや、美咲が……妊娠している……」

自分の体が妊娠していることを知った瞬間、何がどうなっているのか理解できなかった。頭の中は混乱でいっぱいで、ただその事実を受け入れるしかなかった。

「でも……これ、どうするんだ……?」

拓也は混乱の中で立ち尽くした。自分の中にもう一つの命が宿っている――いや、美咲の体に、である。体が入れ替わったまま、この命をどう守っていけばいいのか、どんな未来が待っているのか。

彼は急いで美咲にメッセージを送り、事の重大さを伝えた。すぐに返信が返ってきた。

**「妊娠!? 本当に!?」**

「そうだ……お互い、元に戻る方法を探さないと……」

拓也は、これからどうなるかを考えながら、深い不安と責任感に押しつぶされそうになりながらも、何とか冷静さを保とうとした。
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