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生理になる拓也
しおりを挟む「……なんか変だな……」
会社での業務が一区切りついたころ、拓也はふと違和感を覚えた。体の奥からじわりとした重苦しさと鈍い痛みが広がっている。それは、お腹の下の方から徐々に広がり、今まで感じたことのない不快感だった。
「腹痛か? でも、なんか違う……」
違和感が増していく中で、ふと椅子に座り続けていることが妙に気になった。立ち上がってみると、下着のあたりにかすかな湿り気を感じる。
「まさか……これって……?」
拓也は一瞬、何かが起こっていることに気づいたものの、信じたくなかった。恐る恐るトイレに駆け込み、個室に入って下着を確認すると、目に飛び込んできたのは鮮やかな赤い染みだった。
「うわっ……これが……生理ってやつか……」
目の前の現実に、拓也は一気に顔から血の気が引いた。今まで美咲や他の女性が「生理がつらい」と話すのを聞いても、どこか他人事のように感じていたが、今その現実が自分に降りかかっている。
「どうしよう……どうすればいいんだ……?」
慌ててトイレの中で頭を抱えたが、何も解決しない。とりあえず冷静になるために、スマホを取り出して美咲にメッセージを送ることにした。
**「美咲、助けてくれ! なんか、生理が始まったみたいだ……」**
すぐに返事が来た。
**「落ち着いて。トイレにナプキンがあるから使って。ポーチもカバンに入ってるはず」**
「ポーチ……ナプキン……?」
用語自体は知っていても、実際にどう使うのかは全くわからない。彼は美咲のカバンを探り、ポーチを取り出した。中には見たことのないパッケージがいくつか入っている。
「これか……」
手に取ってみるものの、使い方がわからず、どう扱うべきか悩んだ。パッケージをなんとか開け、中からナプキンを取り出すが、それを下着にどうセットすればいいのか全くの未知の世界だ。
「こんなこと、普段美咲は一人でやってるのか……」
不器用にナプキンを下着にセットし、何とか落ち着きを取り戻そうとするが、体のだるさと鈍い痛みは止まらない。少し歩くだけで下腹部が引きつるように痛み、気分も悪くなってきた。
「こんな状態で仕事してるなんて、女性って本当にすごいな……」
生理のつらさを身をもって体験し、拓也は女性たちが日常的に抱えている負担の大きさを実感した。今までは「大変そうだな」と表面的にしか理解していなかったが、実際に体験するとそのつらさがどれほど重いものかが身にしみた。
「早く戻りたい……自分の体に……」
拓也はトイレの鏡に映る美咲の顔を見ながら、心からそう思った。
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