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拓也の初体験
しおりを挟む朝日がカーテンの隙間から差し込み、まぶたの裏をじんわりと照らした。拓也はゆっくりと目を開けた。頭がぼんやりしていて、何か妙に体が軽いような気がする。
「ん……なんか、変だな……」
まだ眠気が残っているせいか、体が自分のものじゃないような違和感を覚える。普段よりも腕や足が細いし、手触りも違う。体のあちこちがなんとなく敏感で、皮膚の感覚もいつもとは違う。自分の胸元に視線を落とすと、驚愕の事実に気づいた。
「な、なんだ……これ!?」
自分の胸に、丸くてふくらんだものがある。それは確かに女性の体の象徴――美咲の胸だった。驚きで一気に目が覚め、布団を跳ね除けて体を確認すると、そこにあるのは見覚えのないスレンダーな女性の体。小柄で、曲線のあるボディが布団の中から露わになっている。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! これは……俺の体じゃない!」
慌ててベッドから飛び起きるが、その瞬間、バランスを崩してベッドの端にぶつかりそうになる。体が軽すぎて動き方がよくわからない。さらに違和感が募り、胸の鼓動が早まった。
「なんで俺が、美咲の体に……?」
鏡を探し、部屋の片隅にあった姿見に駆け寄った。そして、映った姿を見た瞬間、息を飲んだ。そこにいたのは、明らかに美咲――自分の彼女の顔だった。いつも見慣れた彼女の姿が、今、鏡の中で自分と同じ動きをしている。
「う、うそだろ……」
拓也は自分の頬をつねったり、手を振ったり、何度も確認するが、目の前にいるのは美咲だ。自分の内側は間違いなく拓也なのに、外見は完全に女性そのもの。
「こんなこと、漫画とか映画の中だけじゃないのか……?」
パニックになりながらも、頭の中で必死に考えを整理しようとする。夢なのか、それとも何かのいたずらか――だが、この感覚が夢とは思えないほどリアルだ。
「これ……本当に美咲の体か……?」
彼は恐る恐る自分の体に触れた。胸に手を当てると、柔らかく温かい感触が指先に伝わる。さらに、髪をかきあげると、美咲の長い黒髪がサラリと肩にかかる。体のどこを触っても、自分のものではない感覚に、背筋がぞっとした。
「まじか……これ、どうすりゃいいんだ?」
その時、携帯が机の上で振動し始めた。急いで画面を確認すると、拓也の名前でメッセージが届いている。慌てて開くと、そこには簡潔な文章が書かれていた。
**「落ち着いて。俺もそっちの体にいる。美咲」**
「なんだって!? 美咲も俺の体に……?」
状況を理解するのに時間がかかったが、ようやく彼は確信した。自分と美咲は、どうやら体が入れ替わってしまったらしい。理由はわからないし、どう元に戻れるかもわからない。しかし、今はまず冷静になるしかなかった。
「とりあえず、美咲と話をしないと……」
拓也は深く息をつき、何とか気持ちを落ち着かせようとした。体が入れ替わったこの状況を受け入れ、次にどうするかを考え始めた。
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