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赤ちゃんの変化
しおりを挟む健一と真由美のもとに生まれた赤ちゃんは、二人にとってかけがえのない存在となった。新しい命と共に始まった子育ての日々は、苦労が絶えないながらも喜びに満ちていた。しかし、ある日、赤ちゃんに驚くべき変化が訪れる。
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### 子育ての日々
**夜泣きの嵐**
生まれたばかりの赤ちゃんは元気で泣き声も大きかった。夜泣きが始まると、二人は交代で対応することにした。
「真由美、次は俺の番だろ?」健一は眠そうな顔でベッドから起き上がり、赤ちゃんの揺りかごに向かった。
「そうだけど、たまには休ませてよ。」真由美も目をこすりながら起き上がる。
「いや、俺がやるよ。お前は少し寝てろ。」健一は赤ちゃんを抱き上げ、優しくあやしながらリビングへ向かった。
真由美はそんな彼の後ろ姿を見送りながら、静かに微笑んだ。「健一、すっかりお父さんじゃなくてお母さんみたいになったわね。」
**初めての笑顔**
ある朝、赤ちゃんが健一の指を掴んでにっこりと笑った。
「見て!笑った!」健一は驚きと喜びの入り混じった声で真由美を呼んだ。
「本当だ…かわいい!」真由美も駆け寄って、赤ちゃんの顔を覗き込んだ。
その瞬間、二人は疲れも吹き飛び、赤ちゃんの笑顔に癒された。
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### 異変の始まり
赤ちゃんが生後数週間を迎えた頃、真由美はふと気づいた。
「健一、この子のおむつ替えしてたら、ちょっと変な感じがしたのよ。」彼女は少し戸惑いながら言った。
「変な感じって?」健一は赤ちゃんを抱きながら尋ねた。
「いや、最初は女の子だと思ってたけど…どうも、今は男の子みたいなの。」
「えっ?」健一は驚き、赤ちゃんの体をそっと確認した。確かに、性別が変わっているようだった。
「これって、どういうことだ…?」健一と真由美は顔を見合わせ、何が起こっているのか分からず困惑した。
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### 謎の性別変化
翌日、二人は赤ちゃんを連れてかかりつけの小児科医を訪ねた。しかし、医師は検査をしても特に問題は見つけられず、むしろ健康そのものだと太鼓判を押した。
「性別が変わるなんて、医学的にはありえません。でも、この子の体は正常に機能しています。」医師は不思議そうに首をかしげた。
「そんな…原因が分からないんですか?」真由美が問い詰めるように尋ねる。
「現段階では、どう説明したらいいか…ただ、健康には問題ありませんから、あまり心配しすぎないでください。」
二人は家に帰り、再び赤ちゃんの顔を見つめた。
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### 赤ちゃんとの新たな絆
性別が変わったことに最初は戸惑いを隠せなかった二人だが、次第にそれを受け入れるようになっていった。
「性別がどうであれ、この子は私たちの子どもだ。」健一は赤ちゃんを抱きながら言った。「俺たちにとって、唯一無二の存在なんだから。」
「そうね。」真由美も頷いた。「変わる性別に戸惑うことはあっても、愛情は変わらないものね。」
赤ちゃんの性別変化はそれ以降も数週間ごとに起こり、男の子から女の子へ、またその逆へと変わり続けた。不思議な現象ではあったが、二人はこの変化を楽しむようにさえなっていった。
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### 性別を超えた家族の形
「健一、この子、私たちの性別が入れ替わった経験を全部見てる気がするわ。」真由美が赤ちゃんを抱きながら言った。
「そうかもな。」健一は笑った。「この子は、俺たちにとって新しい視点を与えてくれる存在なのかもしれない。」
性別にとらわれない育児を続けながら、二人は赤ちゃんを中心にますます絆を深めていった。性別の境界を超えた家族の形は、これまで誰も見たことのない新しい愛の形を描いていた。
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二人と赤ちゃんの未来は、性別という固定観念に縛られない自由なものであり、同時に深い愛と理解に満ちたものであった。
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