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健一の妊娠中の苦労と出産
しおりを挟む健一が妊娠してから数ヶ月が経過し、彼と真由美は妊娠生活の新たな課題に直面していた。健一にとって、この未知の体験は心身ともに大きな試練であり、同時に驚きや感動の連続でもあった。
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### 妊娠中の苦労
**体の変化への戸惑い**
妊娠初期、健一は自分の体がどんどん変わっていくことに戸惑いを覚えていた。お腹が少しずつ膨らみ始めると、普通の動作がやりにくくなった。階段を登るだけで息が切れ、腰痛に悩まされる日々が続いた。
「おい、これ本当に大丈夫なのか?」健一はベッドで横になりながら、腰をさすりつつ真由美に愚痴をこぼした。
「大丈夫よ、ちゃんと私が調べたから。」真由美は妊娠・出産に関する本を持ってきて、さりげなく健一に見せた。「ほら、腰痛は妊娠中に多い症状って書いてあるわ。クッションとか使えば少し楽になるかも。」
「それはありがたいけど…体のバランスが悪すぎるんだよな。座るのも一苦労だし。」健一は苦笑いを浮かべた。
**食事の変化とつわり**
また、健一は食べ物の嗜好の変化に驚いた。それまで好物だった肉料理が受け付けなくなり、代わりに酸っぱいものや果物が無性に食べたくなる日が続いた。さらに、朝起きると吐き気に襲われる「つわり」の辛さも彼にとって予想外だった。
「これ、こんなに辛いものだったのか…」健一は朝のキッチンで真由美に向かって顔をしかめた。「前にお前が妊娠したときは、こんな風に言ってたっけ?」
「言ったわよ。あのときはあんたが“頑張れ”って軽く言っただけでムカついたの、覚えてる?」真由美はいたずらっぽく笑った。
「…悪かった。今になって分かったよ、どれだけ大変だったか。」健一は深く頭を下げた。
**情緒の不安定さ**
さらに、妊娠中のホルモンバランスの影響で健一の感情は不安定になっていた。些細なことで涙が出たり、急にイライラしたりと、コントロールが難しい日々が続いた。
「健一、どうしたの?」真由美が仕事から帰ると、健一はソファで涙ぐんでいた。
「いや、テレビで子猫の特集見てたら、なんか泣けてきて…」健一は言い訳するように顔を拭った。
「それもホルモンのせいね。」真由美は健一の隣に座り、そっと肩を抱きしめた。「気にしないで。私がいるから、大丈夫よ。」
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### 出産の瞬間
妊娠後期になると、健一のお腹はさらに大きくなり、動くのもままならなくなった。そしてある日の夜、陣痛が始まった。
「真由美!お腹が…痛い!」健一はベッドから声を振り絞った。
「大丈夫、深呼吸して!」真由美はすぐに病院に連絡し、健一を車に乗せて産院へ急いだ。
出産は長時間に及び、健一はこれまで経験したことのない痛みと戦った。隣で手を握る真由美も、その表情を見て何もできないことに歯がゆさを感じていた。
「おい、もう無理かもしれない…!」健一が涙ながらに訴えると、真由美は力強く言った。
「大丈夫!健一ならできるわ。私もずっと一緒にいるから、頑張って!」
数時間後、赤ちゃんの産声が響いた。その瞬間、健一は痛みを忘れて胸が熱くなるのを感じた。助産師が赤ちゃんを健一の腕にそっと乗せると、彼は泣きながら小さな命を見つめた。
「…俺が産んだんだな。」健一は呆然とつぶやいた。
「そうよ。」真由美は笑顔で健一を見つめた。「健一、すごいわ。本当にお疲れさま。」
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### 出産後の生活
赤ちゃんを迎えた二人の生活はさらに忙しくなった。夜泣きに対応する日々やオムツ替えなど、慌ただしい毎日だったが、二人は協力しながら少しずつ新しい日常に慣れていった。
健一は赤ちゃんを抱きながら、不思議そうに小さな手や足を眺めることがよくあった。
「俺がこの子を産んだなんて、今でも信じられないよ。」健一がつぶやくと、真由美は隣で笑った。
「でも、ちゃんとあんたの顔に似てるわよ。どこからどう見ても、あんたの子ども。」
「そっか…そうだよな。」健一は赤ちゃんに微笑みかけた。「この子が大きくなるまで、俺たちでしっかり育てていかないとな。」
「もちろん。」真由美は力強く頷いた。「性別なんて関係ないわ。私たちは親なんだから。」
二人は新しい命を育てる喜びと責任を胸に、未来に向けて新しい一歩を踏み出していった。
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