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不思議な施術
しおりを挟む「自由になる気持ち…?」真由美は半信半疑のまま女性を見つめた。
「そう、自由よ。」謎の女性は微笑みを崩さずに言った。「私の施術を受ければ、あなたたちも自分の体をもっと自由に、思い通りに変えられるようになるわ。」
「施術って何をするんだ?」健一が恐る恐る尋ねる。
女性は意味深に微笑み、彼らを促すように手招きした。「それはやってみてのお楽しみ。でも安心して。痛みもないし、怖いこともないわ。ただ、少しだけ…心を開く必要があるの。」
真由美と健一は一瞬顔を見合わせた。これが冗談やイカサマならば、その場で帰るのも手だ。しかし、彼女が目の前で体を変えた現実を無視することもできなかった。
「どうする?」真由美がささやく。
「俺たち、これまでも色々変化を試してきたんだろ?」健一は苦笑いを浮かべた。「ここまできたら、乗ってみてもいいんじゃないか?」
「…分かったわ。」真由美が深く息を吸い込むと、女性に向き直った。「お願いするわ。」
「賢い選択ね。」女性は満足そうに微笑むと、手を差し出した。「では、こちらへ。」
彼女に案内されたのは、バーの奥にある隠し扉の向こうに広がる秘密の施術室だった。部屋には柔らかな光が差し込み、壁には奇妙な模様が描かれていた。中心には二つのチェアが向かい合うように配置されている。
「座って。」女性が指示すると、二人は言われた通りにチェアに腰を下ろした。
「何をするんですか?」健一が緊張した声で尋ねる。
「ただリラックスして目を閉じて。あとは私が全て導くわ。」女性の声は柔らかく、どこか催眠的だった。
二人が目を閉じると、静かな音楽とともに心が軽くなっていく感覚が広がった。その感覚が頂点に達したとき、二人の体に奇妙な熱とひんやりした冷気が同時に走った。
「これ…何だ?」健一が声を出そうとした瞬間、彼の声は高く柔らかなものに変わっていた。
「健一…?」真由美も自分の声が低くなっていることに気づいた。目を開けた瞬間、二人は自分たちの変化を目の当たりにした。
健一の体はスリムで女性的なラインを持つ体型に変わり、真由美は逆に肩幅が広く、男性らしい筋肉を持つ体へと変わっていた。二人は互いに驚き、同時に声をあげた。
「何これ…!?」
謎の女性は微笑みを浮かべながら答えた。「これがあなたたちの望んでいた新しい自分よ。どうかしら?」
「これって…元に戻れるのか?」健一が動揺しながら尋ねる。
「もちろん、戻れるわ。でも、少しこの状態で過ごしてみるといいわよ。新しい視点でお互いを見つめ直すいい機会になるはずよ。」
真由美は自分の腕を見下ろしながら、慎重に拳を握り締めた。「確かに…不思議だけど、悪い気分じゃないかも。」
健一も自分の髪を触りながら小さく頷いた。「これ…慣れるまで時間がかかりそうだな。」
「大丈夫、あなたたちならすぐに順応するわ。」女性は謎めいた笑みを浮かべながら部屋を後にした。
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