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ニミッツとマッカーサーの齟齬
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ニミッツはソロモンの時のようにマッカーサーの元に艦艇を送り、沈められるのを恐れた。
実際、アメリカ軍が最も艦艇を失ったのは真珠湾を除いてソロモンだけだ。
いくつかの海戦で米軍は損傷を受けていたが、いずれも軽微だ。
マリアナでの被害も大きいが、長機の消耗戦となったソロモンが一番酷かった。
兵力の集中運用さえ出来れば、被害は未然に防げるとニミッツは考えていた。
それに、最大の敵は日本の機動部隊であり、この撃滅こそが重要とニミッツは考えていた。
日本機動部隊を相手に出来るのは同じく機動部隊だけ。他の部隊では取り逃がしてしまう。
だからマッカーサーの支援の為にフィリピンに貼り付けておくのは、日本機動部隊を取り逃がす、と考えニミッツはマッカーサーへの第三艦隊の指揮権委譲拒否した。
「日本艦隊の接近を阻止していただけるのなら構わないが上陸作戦中第三艦隊が離れるのは困る」
だが、マッカーサーも機動部隊が脅威と考えていた。
フィリピンに上陸する間、自分の盾となる優秀な部隊、最大の脅威である日本機動部隊に対応出来る空母機動部隊、ハルゼー率いる第三艦隊を手元に置きたかった。
「第三艦隊も私の指揮下に入れて貰いたい」
「あなたの元には、すでに第七艦隊を送っている」
既に太平洋艦隊からは戦艦七隻と護衛空母を主力とするキンケイド提督率いる第七艦隊がマッカーサーの支援および護衛の為に派遣されマッカーサーの指揮下に入っていた。
護衛艦艇は豊富で圧倒的な対空砲火で敵航空部隊を撃退する事は可能。
正規空母こそないが、多数の護衛空母が配属されており、日本機動部隊が来ても、かなりの迎撃能力を期待出来る。
ニミッツとしては、上陸支援に十分な兵力を与えており、これ以上艦隊を引き抜かれるのは避けたかった。
特に最大の敵である日本機動部隊に対応するための兵力、ハルゼーの機動部隊を手元に残して置きたかった。
「しかし、空母が勝手に離脱されて上空援護の傘がなくなるのは困る」
だがマッカーサーも空母を手に入れようと必死だった。
ソロモンのように艦隊が空母が勝手に離れられては困る。
最初のガダルカナル上陸では、フレッチャー提督率いる機動部隊が上陸部隊の防空を担っていた。
だが日本軍ラバウル航空隊、精鋭台南空を中心とした部隊による戦闘機掃討戦により米軍艦載戦闘機の損耗が二割を超えた。
そのためフレッチャーは船団護衛任務を放棄して戦場を離脱。
直後、第八艦隊によるガダルカナルへの夜襲が発生し、船団は大損害を受け、上陸部隊はガダルカナルに孤立後に降伏。
作戦失敗の大きな原因となった。
その二の舞を避けるためにもマッカーサーは第三艦隊の指揮権を要求した。
「第七艦隊の戦闘機部隊で十分可能だ」
「第一次ガダルカナル上陸時のように水上部隊も襲撃してきたら大変だ」
「そのために七隻の戦艦を護衛に回している」
「日本海軍の戦艦は一二隻いると聞いているが」
「全ての艦を投入することは不可能と考える整備も含め、投入出来るのはおよそ八隻のみと想定される」
「所属する七隻は旧式戦艦だ」
「近代化改装を終えており新戦艦にも劣らない性能を持っている」
第七艦隊に配属されている戦艦はいずれも海運休日前1920年前後に建造された戦艦であり、二〇年近く前の旧式艦だ。
しかも半分は真珠湾攻撃で損傷を受けている。
だが損傷した事で復旧と共に大規模な改装を行って、両用砲の搭載、旧式装備の撤去、レーダー射撃システムの導入などで新戦艦と同じ能力を持つに至っている。
「これ以上の、戦力引き渡しは過剰と考える」
「万全の態勢を整えるためにも、戦力は一箇所に投入、指揮系統は統一するべきだ」
二人の対立は続き、結局、会議ではラチがあかず上の判断に任されることになった。
ワシントンの合衆国艦隊司令長官キングと参謀本部総長マーシャルの間で協議が行われ、第三艦隊はニミッツの指揮下で、マッカーサー軍の支援を行うことをキングが命令する形で決着が付いた。
「フィリピンに張り付いているというのですか?」
ワシントンの決定をニミッツから聞かされたハルゼーは不満顔だった。
見敵必殺のハルゼーにとって、フィリピン近海に縛られ、見つけた日本艦隊を追いかけられない状況は苦痛だった。
「命令では仕方ない」
ニミッツは諭すように伝えた。
司令長官である以上、上の決定を部下に遵守させなければならない。
「だが日本艦隊を発見した場合、艦隊撃滅を優先せよ」
しかし、ニミッツも海軍軍人であり、日本の機動部隊を最大の脅威と考えていた。
「第七艦隊もいる事だし、マッカーサーの支援は重視する必要はない。君は厄介な山口の機動部隊を仕留めるんだ」
ニミッツは、そう言ってハルゼーへの命令書に自ら<艦隊撃滅を優先して良し>という但し書きを加えて渡した。
「了解しました長官」
ハルゼーは、日本艦隊撃滅優先のお墨付きを得たと喜んで命令書を受け取り、出撃していった。
かくして、レイテ攻略作戦は開始された。
実際、アメリカ軍が最も艦艇を失ったのは真珠湾を除いてソロモンだけだ。
いくつかの海戦で米軍は損傷を受けていたが、いずれも軽微だ。
マリアナでの被害も大きいが、長機の消耗戦となったソロモンが一番酷かった。
兵力の集中運用さえ出来れば、被害は未然に防げるとニミッツは考えていた。
それに、最大の敵は日本の機動部隊であり、この撃滅こそが重要とニミッツは考えていた。
日本機動部隊を相手に出来るのは同じく機動部隊だけ。他の部隊では取り逃がしてしまう。
だからマッカーサーの支援の為にフィリピンに貼り付けておくのは、日本機動部隊を取り逃がす、と考えニミッツはマッカーサーへの第三艦隊の指揮権委譲拒否した。
「日本艦隊の接近を阻止していただけるのなら構わないが上陸作戦中第三艦隊が離れるのは困る」
だが、マッカーサーも機動部隊が脅威と考えていた。
フィリピンに上陸する間、自分の盾となる優秀な部隊、最大の脅威である日本機動部隊に対応出来る空母機動部隊、ハルゼー率いる第三艦隊を手元に置きたかった。
「第三艦隊も私の指揮下に入れて貰いたい」
「あなたの元には、すでに第七艦隊を送っている」
既に太平洋艦隊からは戦艦七隻と護衛空母を主力とするキンケイド提督率いる第七艦隊がマッカーサーの支援および護衛の為に派遣されマッカーサーの指揮下に入っていた。
護衛艦艇は豊富で圧倒的な対空砲火で敵航空部隊を撃退する事は可能。
正規空母こそないが、多数の護衛空母が配属されており、日本機動部隊が来ても、かなりの迎撃能力を期待出来る。
ニミッツとしては、上陸支援に十分な兵力を与えており、これ以上艦隊を引き抜かれるのは避けたかった。
特に最大の敵である日本機動部隊に対応するための兵力、ハルゼーの機動部隊を手元に残して置きたかった。
「しかし、空母が勝手に離脱されて上空援護の傘がなくなるのは困る」
だがマッカーサーも空母を手に入れようと必死だった。
ソロモンのように艦隊が空母が勝手に離れられては困る。
最初のガダルカナル上陸では、フレッチャー提督率いる機動部隊が上陸部隊の防空を担っていた。
だが日本軍ラバウル航空隊、精鋭台南空を中心とした部隊による戦闘機掃討戦により米軍艦載戦闘機の損耗が二割を超えた。
そのためフレッチャーは船団護衛任務を放棄して戦場を離脱。
直後、第八艦隊によるガダルカナルへの夜襲が発生し、船団は大損害を受け、上陸部隊はガダルカナルに孤立後に降伏。
作戦失敗の大きな原因となった。
その二の舞を避けるためにもマッカーサーは第三艦隊の指揮権を要求した。
「第七艦隊の戦闘機部隊で十分可能だ」
「第一次ガダルカナル上陸時のように水上部隊も襲撃してきたら大変だ」
「そのために七隻の戦艦を護衛に回している」
「日本海軍の戦艦は一二隻いると聞いているが」
「全ての艦を投入することは不可能と考える整備も含め、投入出来るのはおよそ八隻のみと想定される」
「所属する七隻は旧式戦艦だ」
「近代化改装を終えており新戦艦にも劣らない性能を持っている」
第七艦隊に配属されている戦艦はいずれも海運休日前1920年前後に建造された戦艦であり、二〇年近く前の旧式艦だ。
しかも半分は真珠湾攻撃で損傷を受けている。
だが損傷した事で復旧と共に大規模な改装を行って、両用砲の搭載、旧式装備の撤去、レーダー射撃システムの導入などで新戦艦と同じ能力を持つに至っている。
「これ以上の、戦力引き渡しは過剰と考える」
「万全の態勢を整えるためにも、戦力は一箇所に投入、指揮系統は統一するべきだ」
二人の対立は続き、結局、会議ではラチがあかず上の判断に任されることになった。
ワシントンの合衆国艦隊司令長官キングと参謀本部総長マーシャルの間で協議が行われ、第三艦隊はニミッツの指揮下で、マッカーサー軍の支援を行うことをキングが命令する形で決着が付いた。
「フィリピンに張り付いているというのですか?」
ワシントンの決定をニミッツから聞かされたハルゼーは不満顔だった。
見敵必殺のハルゼーにとって、フィリピン近海に縛られ、見つけた日本艦隊を追いかけられない状況は苦痛だった。
「命令では仕方ない」
ニミッツは諭すように伝えた。
司令長官である以上、上の決定を部下に遵守させなければならない。
「だが日本艦隊を発見した場合、艦隊撃滅を優先せよ」
しかし、ニミッツも海軍軍人であり、日本の機動部隊を最大の脅威と考えていた。
「第七艦隊もいる事だし、マッカーサーの支援は重視する必要はない。君は厄介な山口の機動部隊を仕留めるんだ」
ニミッツは、そう言ってハルゼーへの命令書に自ら<艦隊撃滅を優先して良し>という但し書きを加えて渡した。
「了解しました長官」
ハルゼーは、日本艦隊撃滅優先のお墨付きを得たと喜んで命令書を受け取り、出撃していった。
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