75 / 83
インド洋とペリリュー侵攻
しおりを挟む
「今回の作戦も成功だな」
インド洋を航行する空母信濃の艦橋で山口は嬉しそうに言った。
英国機動部隊との海戦に勝利した。
一度空襲を受け、艦載機が並んでいるところへ爆撃を受け、大炎上となった。
だが、装甲化された甲板に被害はなく、消化器を作動させた事によって鎮火。
残骸を海中投棄して甲板を片付けると格納庫の機体を引き出し、出撃させイギリス機動部隊を葬った。
優秀な艦攻による航空雷撃によって英国軍機動部隊は壊滅した。
その後はいつものように、インド洋を暴れ回り、商船団を沈めたり、捕獲していた。
「さすがだな佐久田参謀」
「ありがとうございます」
珍しく佐久田が嬉しそうに言った。
インド洋への侵攻と確保は佐久田の持論であり、成果が出ているのは嬉しい。
英国の商戦団を沈め、インドを封鎖し国力を削ぐ、そして機動部隊の格好の訓練となる。
特に経験のない艦載機パイロット達に実戦経験を積ませるには英国軍相手が丁度良い。
損失も予想の範囲内で終わった。
これならリンガで補充すれば大丈夫だ。
だが、そこへ凶報が流れてくる。
「本土より報告と命令です。敵がペリリューへの侵攻を始めました」
パラオの近く、ペリリュー島とアンガウルへの上陸は始めたのだ。
ペリリュー島は中川大佐以下一万名の日本軍が配備されている。
だが米軍は戦艦五隻、空母三隻、軽空母五隻、護衛空母一一隻、その他艦艇多数の支援の元、海兵隊第一海兵師団、陸軍歩兵第八九師団合計四万八〇〇〇名を投入。
四日間の攻撃で占領しようと計画していた。
「直ちに反転し、ペリリュー救援に向かえとの事です」
「どうする参謀」
「戻るのは構いませんが、無意味でしょう。ペリリューは救えません」
「どうしてだ」
「フィリピンから離れすぎています。航空支援が出来ません。それとウルシーが攻略されたそうです」
報告ではウルシー環礁も占領されたと報告されていた。
近くに戦前から整備されていたパラオ泊地があり、日本軍はウルシーを重要視していなかった。
だが、佐久田は艦隊泊地としてウルシーが最適であり、敵はパラオを攻略せずにウルシーに向かうことを懸念していた。
防備を固めるように要請していたがパラオの防備を優先したため却下された。
結果、アメリカ軍は無血占領でウルシーを手に入れた。
「米軍はここに大量の商船とタンカーを持ち込み、機動部隊の拠点にするでしょう。下手に救援に赴けば攻撃されます」
佐久田の言うとおり、大量の輸送船団と移動式の浮きドックが工作艦と共にウルシー環礁に来航し、米軍機動部隊の一大拠点となった。
「さらにミンダナオ島近くのモロタイ島を占領しました。ここからの航空機の活動は脅威です」
モルッカ諸島の北部にあり、フィリピン諸島に近い位置にあるモロタイ島は、米軍航空部隊がフィリピンを活動圏内に収められる位置にある。
ここが占領し、飛行場を建設したことはアメリカが本格的にフィリピン攻略の準備を始めた証拠だった。
「救援しないのか? 米軍へ反撃せずに良いのか」
「米軍が本格的にフィリピンへ上陸作戦を始めた時に攻撃するべきです。航空艦隊と航空軍の支援の下、攻撃するべきでしょう」
何とか再編なった機動部隊だが、米軍とまともに戦えるとは思えなかった。
今回のインド洋進撃で練度は高まったので、一戦して互角には戦える。
だが、その一戦で艦載機部隊は壊滅して二度と作戦行動は取れないだろう。
「確実に米軍に打撃を与えられる、フィリピンで決戦を行うべきです」
フィリピンでの決戦に佐久田はこだわった。
確実に米軍が襲来する場所であり、無数の島々からなり諸島は飛行場適地が多く、多数の陸上機を配備できる。
深いジャングル内に航空機や整備設備を隠し敵の襲撃に備えることも可能。
来襲すれば圧倒的な航空戦力で襲撃する事も可能だ。
「上手くいくか?」
「行かせなければなりません。でなければシーレーンが遮断され、日本は干上がります」
フィリピンの西側は南シナ海、南方資源地帯から日本本土に物資を送り出す重要な航路だ。
フィリピンが陥落すれば航路は遮断され、日本は戦うどころか、生きていくことが出来ない。
決戦を叫ぼうにも飢え死にする以外にない。
「我が機動部隊も準備を進めるべきか」
「はい、もう暫くインド洋で活動した後、本土に帰還しましょう」
「そうしよう、君の作戦が上手くいくように協力しよう」
山口は作田に行ったが、佐久田は気が晴れなかった。
機動部隊はどうにかなるが、他の部隊が作戦通り動いてくれるか分からなかったからだ。
問題となるのは、米軍が上陸する前に行う、周辺の航空基地への攻撃にフィリピン周辺の部隊がどのように対応するかだった。
インド洋を航行する空母信濃の艦橋で山口は嬉しそうに言った。
英国機動部隊との海戦に勝利した。
一度空襲を受け、艦載機が並んでいるところへ爆撃を受け、大炎上となった。
だが、装甲化された甲板に被害はなく、消化器を作動させた事によって鎮火。
残骸を海中投棄して甲板を片付けると格納庫の機体を引き出し、出撃させイギリス機動部隊を葬った。
優秀な艦攻による航空雷撃によって英国軍機動部隊は壊滅した。
その後はいつものように、インド洋を暴れ回り、商船団を沈めたり、捕獲していた。
「さすがだな佐久田参謀」
「ありがとうございます」
珍しく佐久田が嬉しそうに言った。
インド洋への侵攻と確保は佐久田の持論であり、成果が出ているのは嬉しい。
英国の商戦団を沈め、インドを封鎖し国力を削ぐ、そして機動部隊の格好の訓練となる。
特に経験のない艦載機パイロット達に実戦経験を積ませるには英国軍相手が丁度良い。
損失も予想の範囲内で終わった。
これならリンガで補充すれば大丈夫だ。
だが、そこへ凶報が流れてくる。
「本土より報告と命令です。敵がペリリューへの侵攻を始めました」
パラオの近く、ペリリュー島とアンガウルへの上陸は始めたのだ。
ペリリュー島は中川大佐以下一万名の日本軍が配備されている。
だが米軍は戦艦五隻、空母三隻、軽空母五隻、護衛空母一一隻、その他艦艇多数の支援の元、海兵隊第一海兵師団、陸軍歩兵第八九師団合計四万八〇〇〇名を投入。
四日間の攻撃で占領しようと計画していた。
「直ちに反転し、ペリリュー救援に向かえとの事です」
「どうする参謀」
「戻るのは構いませんが、無意味でしょう。ペリリューは救えません」
「どうしてだ」
「フィリピンから離れすぎています。航空支援が出来ません。それとウルシーが攻略されたそうです」
報告ではウルシー環礁も占領されたと報告されていた。
近くに戦前から整備されていたパラオ泊地があり、日本軍はウルシーを重要視していなかった。
だが、佐久田は艦隊泊地としてウルシーが最適であり、敵はパラオを攻略せずにウルシーに向かうことを懸念していた。
防備を固めるように要請していたがパラオの防備を優先したため却下された。
結果、アメリカ軍は無血占領でウルシーを手に入れた。
「米軍はここに大量の商船とタンカーを持ち込み、機動部隊の拠点にするでしょう。下手に救援に赴けば攻撃されます」
佐久田の言うとおり、大量の輸送船団と移動式の浮きドックが工作艦と共にウルシー環礁に来航し、米軍機動部隊の一大拠点となった。
「さらにミンダナオ島近くのモロタイ島を占領しました。ここからの航空機の活動は脅威です」
モルッカ諸島の北部にあり、フィリピン諸島に近い位置にあるモロタイ島は、米軍航空部隊がフィリピンを活動圏内に収められる位置にある。
ここが占領し、飛行場を建設したことはアメリカが本格的にフィリピン攻略の準備を始めた証拠だった。
「救援しないのか? 米軍へ反撃せずに良いのか」
「米軍が本格的にフィリピンへ上陸作戦を始めた時に攻撃するべきです。航空艦隊と航空軍の支援の下、攻撃するべきでしょう」
何とか再編なった機動部隊だが、米軍とまともに戦えるとは思えなかった。
今回のインド洋進撃で練度は高まったので、一戦して互角には戦える。
だが、その一戦で艦載機部隊は壊滅して二度と作戦行動は取れないだろう。
「確実に米軍に打撃を与えられる、フィリピンで決戦を行うべきです」
フィリピンでの決戦に佐久田はこだわった。
確実に米軍が襲来する場所であり、無数の島々からなり諸島は飛行場適地が多く、多数の陸上機を配備できる。
深いジャングル内に航空機や整備設備を隠し敵の襲撃に備えることも可能。
来襲すれば圧倒的な航空戦力で襲撃する事も可能だ。
「上手くいくか?」
「行かせなければなりません。でなければシーレーンが遮断され、日本は干上がります」
フィリピンの西側は南シナ海、南方資源地帯から日本本土に物資を送り出す重要な航路だ。
フィリピンが陥落すれば航路は遮断され、日本は戦うどころか、生きていくことが出来ない。
決戦を叫ぼうにも飢え死にする以外にない。
「我が機動部隊も準備を進めるべきか」
「はい、もう暫くインド洋で活動した後、本土に帰還しましょう」
「そうしよう、君の作戦が上手くいくように協力しよう」
山口は作田に行ったが、佐久田は気が晴れなかった。
機動部隊はどうにかなるが、他の部隊が作戦通り動いてくれるか分からなかったからだ。
問題となるのは、米軍が上陸する前に行う、周辺の航空基地への攻撃にフィリピン周辺の部隊がどのように対応するかだった。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説

江戸時代改装計画
華研えねこ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。
「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」
頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。
ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。
(何故だ、どうしてこうなった……!!)
自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。
トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。
・アメリカ合衆国は満州国を承認
・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲
・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認
・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い
・アメリカ合衆国の軍備縮小
・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃
・アメリカ合衆国の移民法の撤廃
・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと
確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。

小沢機動部隊
ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。
名は小沢治三郎。
年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。
ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。
毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。
楽しんで頂ければ幸いです!

日本が危機に?第二次日露戦争
杏
歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。
なろう、カクヨムでも連載しています。

皇国の栄光
ypaaaaaaa
歴史・時代
1929年に起こった世界恐慌。
日本はこの影響で不況に陥るが、大々的な植民地の開発や産業の重工業化によっていち早く不況から抜け出した。この功績を受け犬養毅首相は国民から熱烈に支持されていた。そして彼は社会改革と並行して秘密裏に軍備の拡張を開始していた。
激動の昭和時代。
皇国の行く末は旭日が輝く朝だろうか?
それとも47の星が照らす夜だろうか?
趣味の範囲で書いているので違うところもあると思います。
こんなことがあったらいいな程度で見ていただくと幸いです


幕府海軍戦艦大和
みらいつりびと
歴史・時代
IF歴史SF短編です。全3話。
ときに西暦1853年、江戸湾にぽんぽんぽんと蒸気機関を響かせて黒船が来航したが、徳川幕府はそんなものへっちゃらだった。征夷大将軍徳川家定は余裕綽々としていた。
「大和に迎撃させよ!」と命令した。
戦艦大和が横須賀基地から出撃し、46センチ三連装砲を黒船に向けた……。

本能のままに
揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった
もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください!
※更新は不定期になると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる