架空戦記 旭日旗の元に

葉山宗次郎

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インド洋方面の戦況と英国の苦境

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 42年後半の日本海軍による第二次インド洋作戦で英国海軍は貴重な空母をインド洋へ派遣した。
 日本海軍は就役直後の大鳳を投入し、英国もイラストリアスとフォーミダブルを投入。装甲空母同士の戦いになった。
 互いに飛行甲板を抜かせず接戦となったが、最終的に艦載機の優劣、優秀な九七艦攻を保有する日本軍がイラストリアスを航空雷撃によって撃沈。英国は空母の損失を恐れて撤退した。
 その後、英国海軍はロンメルが暴れる北アフリカ戦線維持のため地中海で活動し、インド洋は日本軍が好き勝手に暴れる事になる。
 北アフリカの戦況が安定した43年になってようやく余裕が出来た英国は当時保有していた三隻の装甲空母を派遣したが、搭載機の少なさから日本軍に押し負け、二隻を喪失。
 再び撤退した。

「先月のソコトラ島沖の海戦でもインプラカブルが沈められました」

 インプラカブルは格納庫を二段式にして搭載機数を倍に増やしたイラストリアスの改良型であり44年に就役したばかりの英国海軍期待の最新鋭艦であった。
 僚艦であるインディファティガブルと共に投入されたがやはり、艦載機が日本側に比べ劣っていた。
 二段式にするために各格納庫の高さが低くなったこともあり、収容できる艦載機の種類が制限され、日本軍に対して不利となったことも災いした。
 機動部隊の規模も日本に比べて劣っており、結局、この戦いでも二隻を失い英国空母機動部隊はインド洋から撤退した。

「反乱軍の攻勢も強まっています」

 ハリファックス卿がいった反乱軍とはスバス・チャンドラ・ボース率いるインド国民軍だった。
 戦前からインド独立のために活動していた独立活動家であり、インド人の間で人気が高い。
 開戦前はドイツにいたが、日本の快進撃を見て、日本行きを希望。
 身の危険を顧みず、潜水艦を使って、来日するという偉業を成し遂げた。
 日本に来ると南方作戦で捕虜となった英印軍――イギリス領インド人を兵士としイギリス人士官が指揮する部隊のインド人兵士を勧誘、インド国民軍を編成し、ビルマより出撃、インド解放に向かった。
 海上からの日本軍の援護もあり、インド洋沿岸各地に上陸。地元のインド人も参加し、インド国民軍は勢力を拡大していた。
 鎮圧しようにも日本軍の海上封鎖により、兵力移動が出来ない。
 それ以前にドイツとの戦いもあり、英国に兵力を割く余裕はなかった。

「このままではインドは日本の勢力下に収まり、インドは日本へ支援を行い日本の力は増強されるでしょう」

 インドが日本に落ちる事の危うさをハリファックス卿は説明するが、ルーズベルトには最大の植民地を奪われる事へ危機感からわめいているようにしか見えなかった。
 確かにインド方面で日本は進撃しているがそれだけだ。
 他の戦線では縮小している。
 ドイツも北アフリカから撤退し、ドイツ本国へ逃げ始めている。
 42年のように枢軸国が快進撃を続け、日本とドイツが手を繋ぎ連絡を取り合い、共同戦線を構築する恐れはなくなった。
 確かにインドの資源を日本に使われるのは怖い。
 だが、太平洋から艦隊を押し出し直接日本本土に迫る方が有効だとルーズベルトは考えており、インドへ米軍を派遣するつもりはなかった。
 ルーズベルトの無関心さをみたハリファックス卿は奥の手を使うことにする。

「大統領閣下、日本軍の封鎖がこれ以上続くようでは、英国は日本との単独講和を考えねばなりません」

 ハリファックス卿の言葉に初めてルーズベルトは眉をひそめた。
 すでにインド洋封鎖から二年が経とうとしていた。
 時折、日本海軍が機動部隊を引き上げた時を狙ってインドから船団を出しているが、億荒れてくる物資の量はたかがしれている。
 アメリカからの援助で食いつないでいるが、この状況は良いとはいえない。
 レンドリースは無料だが、戦後は有償になる。
 インドからの物流が戻るまでの間にアメリカから借金をすることに、それも国庫が傾くくらいの借金となるだろう。
 事実上アメリカの属国となり英国の権威は地に落ちる。
 何としても大英帝国の復活、戦後復興を迅速に行う為にもインド洋の封鎖解除が必要だった。

「是非とも、米機動部隊派遣を」
「それは無理です。日本軍の機動部隊は容易ならざる相手です。太平洋の空母を回したら日本軍が反撃を仕掛けてきてこれまでの我々の進撃が水疱に帰してしまいます。それに、ノルウェーで勝手な行動をされて後始末が大変です」

 ルーズベルトの言葉にハリファックスは黙り込んだ。
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