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第一部 日露開戦編
北海道・樺太開拓
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「じゃが、箱館で血が流れんで済んだじゃろう」
「たしかに」
史実では箱館戦争で一三〇〇人以上が戦死し、軍艦の損失、特に当時日本最強とされる開陽が失われた。
それらが龍馬の活躍、箱館仲裁によって失わずに済んだのは良かった。
彼らを北方の防備と開拓に回し、維新で混乱した日本を立て直すスタートアップがスムーズになった。
旧幕府軍を北方防備を兼ねて樺太・北海道の開発に当たらせる事を条件に一種の独立勢力として残すことに成功した。
箱館政府は海援隊から発展した商社、海龍商会――総帥に勝海舟を迎え、実働部隊として海援隊の坂本龍馬の二大トップの名前を付けた会社が後押し、支援した。
そして北海道と日露和親条約で日露雑居地として定められた樺太に入植する計画を龍馬は進めた。
しかし、さすがに未開地の開拓は過酷を極め出費が嵩み海援隊は資金難になった。
だが、別の方面でさらに大きな商機が訪れ龍馬達は資金を得た。
明治維新によって廃藩置県が行われ、日本各地の城郭は不要となり、士族の反乱が起きた時、占拠され反乱が長引くのを防ぐため大部分が破却となった。
龍馬はそこに商機を見た。
破却予定の天守閣や御殿を格安で購入し、フランスなどの欧米へ売却したのだ。
結構な人気で、移築するためフランスへ宮大工を集団で送り出した程だった。
これも武士の誇りを穢すとか言われたが、外貨を獲得できたし風呂屋の薪にされかけた天守閣を救い出せた。
こうして植民計画は続き、樺太と北海道は開拓された。
一方でマヒナと鯉之助はハワイに残され、鯉之助はハワイで育った。
「たまにハワイに帰った時、子供ながら賢い子でのお。昔から才能があると思っていたが、ここまでとは思わなかった」
龍馬は感心するように鯉之助を見た。
前世の記憶が赤ん坊の頃からあったので、多少は賢く動けた。
だが、生まれたのがハワイのような南国なのに、周りに総髪の元武士のような人が多かったので暫く混乱してしまった。
「そんなに凄かったのですか」
秋山は興味津々に尋ねてきた。
「おう、我が息子ながら凄いぞ」
嬉しそうに龍馬は語り始めた。
「あれは明治も数年経った頃じゃ」
スコッチを更に一杯飲み干し、龍馬は語り始める。
「北海道と樺太の開拓を進めていたが大変でのう。現地に抑えが必要で、鯉之助を行かせることになった」
当時四歳になったばかりの鯉之助に統治能力はない。
何故、そうなったかというと当時海龍商会は北海道、樺太開拓を支援していたが困難を極めていたからだ。
武士の商売とあるように元武士の集まりである海援隊に商才は一部の隊員を除いてなかった。
土佐出身の坂本は樺太の事を知らずに入植を進めたが厳しい環境である事を知らず、入植者の生活を改善するための経費ばかりが掛かっていた。
海龍商会もできる限りの援助はしていたが、当時箱館仲裁のためにプロイセン――後のドイツ帝国に多大な借金を負っていて、その返済に財務が悪化していたこともあり、援助に割ける金額が少なかった。
踏み倒せば、質草にした蝦夷地をプロイセンの植民地になって仕舞う可能性が高く、他国へ、特にロシアへ転売されるのは避けたかったので返済せざるをえなかった。
しかも入植者も問題だった。
戊辰戦争が箱館で停戦したが、会津戦争などが起こり東北諸藩は朝敵となった。
彼等の処罰を行う必要があり、彼らは転封が命じられ東北の僻地の他、北海道、樺太へ送り込まれた。
当初の予想より遙かに悪い環境故に彼らは流罪人のような心境を抱いた彼等の不満は大きかった。
開拓者の不満が向いたのは自分たちを朝敵とした明治政府だったが、その手先と見ていた海援隊と海龍商会のに向けられた。入植者を支援して近くに居た分、しかも支援が不十分だったため海龍商会と海援隊は入植者の恨みを買いやすかった。
「そこで鯉之助を送ることになったんじゃ」
鯉之助が送られたのは、不満を持つ入植者に海援隊隊長の息子を送ることで見捨てていない、という証を立てるためだった。
それで少しは入植者の不満は和らいだ。
「本当に目の前が真っ暗になったよ」
だが鯉之助にとって、厳しい環境へ送られることに変わりなく、樺太行きを聞かされた時、本当にショックだった。
温暖な気候のハワイで育ったため極寒の北海道、樺太は地獄も同然だ。
母と共に移住してしまったら、死んでしまうのは確実だ。
そこで母と共に厳しい樺太の環境で文字通り生き抜くために鯉之助は様々な手を打つことにした。
「辛い土地に行くのだから準備させて欲しいと色々頼んだよ」
「それほど大した願いではなかったじゃろう。しかし大した物になったわ。まるで鯉が龍になったようにのう」
龍馬は嬉しそうに言う。
「何をしたんですか」
より興味を強めた秋山が尋ねると龍馬は大げさな動作で語り始めた。
「鯉之助が最初欲しいと言ってきたのがウサギじゃった」
「たしかに」
史実では箱館戦争で一三〇〇人以上が戦死し、軍艦の損失、特に当時日本最強とされる開陽が失われた。
それらが龍馬の活躍、箱館仲裁によって失わずに済んだのは良かった。
彼らを北方の防備と開拓に回し、維新で混乱した日本を立て直すスタートアップがスムーズになった。
旧幕府軍を北方防備を兼ねて樺太・北海道の開発に当たらせる事を条件に一種の独立勢力として残すことに成功した。
箱館政府は海援隊から発展した商社、海龍商会――総帥に勝海舟を迎え、実働部隊として海援隊の坂本龍馬の二大トップの名前を付けた会社が後押し、支援した。
そして北海道と日露和親条約で日露雑居地として定められた樺太に入植する計画を龍馬は進めた。
しかし、さすがに未開地の開拓は過酷を極め出費が嵩み海援隊は資金難になった。
だが、別の方面でさらに大きな商機が訪れ龍馬達は資金を得た。
明治維新によって廃藩置県が行われ、日本各地の城郭は不要となり、士族の反乱が起きた時、占拠され反乱が長引くのを防ぐため大部分が破却となった。
龍馬はそこに商機を見た。
破却予定の天守閣や御殿を格安で購入し、フランスなどの欧米へ売却したのだ。
結構な人気で、移築するためフランスへ宮大工を集団で送り出した程だった。
これも武士の誇りを穢すとか言われたが、外貨を獲得できたし風呂屋の薪にされかけた天守閣を救い出せた。
こうして植民計画は続き、樺太と北海道は開拓された。
一方でマヒナと鯉之助はハワイに残され、鯉之助はハワイで育った。
「たまにハワイに帰った時、子供ながら賢い子でのお。昔から才能があると思っていたが、ここまでとは思わなかった」
龍馬は感心するように鯉之助を見た。
前世の記憶が赤ん坊の頃からあったので、多少は賢く動けた。
だが、生まれたのがハワイのような南国なのに、周りに総髪の元武士のような人が多かったので暫く混乱してしまった。
「そんなに凄かったのですか」
秋山は興味津々に尋ねてきた。
「おう、我が息子ながら凄いぞ」
嬉しそうに龍馬は語り始めた。
「あれは明治も数年経った頃じゃ」
スコッチを更に一杯飲み干し、龍馬は語り始める。
「北海道と樺太の開拓を進めていたが大変でのう。現地に抑えが必要で、鯉之助を行かせることになった」
当時四歳になったばかりの鯉之助に統治能力はない。
何故、そうなったかというと当時海龍商会は北海道、樺太開拓を支援していたが困難を極めていたからだ。
武士の商売とあるように元武士の集まりである海援隊に商才は一部の隊員を除いてなかった。
土佐出身の坂本は樺太の事を知らずに入植を進めたが厳しい環境である事を知らず、入植者の生活を改善するための経費ばかりが掛かっていた。
海龍商会もできる限りの援助はしていたが、当時箱館仲裁のためにプロイセン――後のドイツ帝国に多大な借金を負っていて、その返済に財務が悪化していたこともあり、援助に割ける金額が少なかった。
踏み倒せば、質草にした蝦夷地をプロイセンの植民地になって仕舞う可能性が高く、他国へ、特にロシアへ転売されるのは避けたかったので返済せざるをえなかった。
しかも入植者も問題だった。
戊辰戦争が箱館で停戦したが、会津戦争などが起こり東北諸藩は朝敵となった。
彼等の処罰を行う必要があり、彼らは転封が命じられ東北の僻地の他、北海道、樺太へ送り込まれた。
当初の予想より遙かに悪い環境故に彼らは流罪人のような心境を抱いた彼等の不満は大きかった。
開拓者の不満が向いたのは自分たちを朝敵とした明治政府だったが、その手先と見ていた海援隊と海龍商会のに向けられた。入植者を支援して近くに居た分、しかも支援が不十分だったため海龍商会と海援隊は入植者の恨みを買いやすかった。
「そこで鯉之助を送ることになったんじゃ」
鯉之助が送られたのは、不満を持つ入植者に海援隊隊長の息子を送ることで見捨てていない、という証を立てるためだった。
それで少しは入植者の不満は和らいだ。
「本当に目の前が真っ暗になったよ」
だが鯉之助にとって、厳しい環境へ送られることに変わりなく、樺太行きを聞かされた時、本当にショックだった。
温暖な気候のハワイで育ったため極寒の北海道、樺太は地獄も同然だ。
母と共に移住してしまったら、死んでしまうのは確実だ。
そこで母と共に厳しい樺太の環境で文字通り生き抜くために鯉之助は様々な手を打つことにした。
「辛い土地に行くのだから準備させて欲しいと色々頼んだよ」
「それほど大した願いではなかったじゃろう。しかし大した物になったわ。まるで鯉が龍になったようにのう」
龍馬は嬉しそうに言う。
「何をしたんですか」
より興味を強めた秋山が尋ねると龍馬は大げさな動作で語り始めた。
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