龍馬の息子 知識チートで海援隊と共に明治を駆け抜け日露戦争を楽勝にする!

葉山宗次郎

文字の大きさ
上 下
16 / 50
第一部 日露開戦編

朝鮮半島の情勢

しおりを挟む
 英国出張で手に入れた秘蔵の酒、最高級スコッチを沙織に出されて鯉之助は渋面になりながらも口に入れて気分を良くする。
 イギリス海軍の伝統を注ぎ込んだ海軍と海援隊は艦内での飲酒は許可されている。
 量に関しては当直以外は任務に支障の無い範囲に留めること、という紳士的な束縛があるだけだ。
 海上自衛隊のように乗艦中は許可の無い時以外は禁酒、ではないので当直明けならば飲酒しても問題は無い。
 そもそも海自が禁酒にしているのはアメリカ海軍が禁酒の規則を作っていたためだ。その米海軍にしても禁酒法時代に禁酒の規則を作ったので、むしろ禁酒の方がおかしい。
 海援隊の中には酒豪も多いことだから、禁酒など言いだしたら、なんでそんなつまらない規則を作るんだと文句が出るだろう。

「あとは、朝鮮半島を確保できるかが問題だな」
「大韓帝国を味方、勢力下に収めることが出来るかどうかが、この戦争の勝敗の分かれ道だ」

 秋山の言葉に鯉之助は同意する。
 日露戦争は朝鮮半島を日本が確保するためにロシアと始めた戦いだった。
 幾世紀にもわたり進められたロシアの南下政策。
 だが一九世紀後半から黒海、中央アジア方面で南下に失敗してたいたロシアは矛先を朝鮮半島に向けていた。 
 朝鮮半島をロシアに支配されれば、半島の先にある日本は多大な影響を受ける。
 樺太、千島で江戸時代から接触、時に衝突していた日本にとってロシアは宿敵とも言える存在だ。
 特に樺太と北海道に植民し絶えずロシアの脅威にさらされた海援隊には脅威であり、心身に刻み込まれていた。
 ロシアの脅威から日本を守る為に、日本はロシアからの防波堤となる朝鮮半島を支配下に置きたかった。
 だから朝鮮半島に陸上部隊を上陸させなければならない。
 開戦と同時に仁川に陸軍と海兵隊、海援隊を上陸させたのは、そのためだった。

「朝鮮半島を握れるかどうかが、今現在の戦争の焦点だ」

 当時の朝鮮半島は李氏を皇帝とする大韓帝国が支配していた。

「日清戦争の日本の勝利により一応の独立国となった朝鮮王国だが、事大主義――大国に付き従う朝鮮の方針により、衰退した清国から日本へ主を移り変えた」

 酒が入ったせいか、疲労で鈍っていた頭の回転が少し良くなったようで、鯉之助は語り始めた。

「だが、三国干渉以降、情勢は変わった」

 ロシアを筆頭とするフランス、独逸による遼東半島撤退勧告、いわゆる三国干渉でを引き下がった日本を見た朝鮮王国、今度はロシアに鞍替えした。
 特に乙未事変で朝鮮の王后である閔妃が殺害されてから王国は混乱し各国が朝鮮を手に入れようとしていた。
 そんな1896年の二月、朝鮮国王が日本によるクーデターを恐れロシア領事館へ逃げ込む事件<露館播遷>が発生。
 領事館内で朝鮮国王はロシアに有利な法令を出す事態となった。
 二一世紀で言えば、アメリカ主導のクーデターを恐れた韓国大統領が中国大使館に逃げ込んでそ、大使館から中国寄りの政務を行うようなモノか。
 当然、朝鮮半島は大混乱になる。
 翌年になってようやく国王は王宮へ戻り、朝鮮王国は名を変えた大韓帝国になった。
 だが、国王が領事館に逃げ込むのを見た各国は朝鮮に主権国家としての資格はないと見なした。
 そのため日本が朝鮮を支配することを認める――大韓帝国より日本が支配した方がマシだという空気も流れていた。
 しかし、腐っても鯛ならぬ独立王国である朝鮮に日本が理由もなく平時に出兵することは出来ず、開戦と同時に進駐することになった。
 仁川で勝利し、朝鮮半島を日本の勢力下に収めた成果は大きい。
 大韓帝国は局外中立で日露戦争を乗り切ろうとしているが、いつロシアに寝返るか分からない。
 それに日本の大陸の防壁、策源地、後方支援基地としての価値が大きすぎる。
 開戦劈頭に朝鮮半島を確保できるかどうかは日本の死活問題だった。

「仁川から上陸しソウルを制圧、大韓帝国を確保すれば、この後の戦いがやりやすくなる。補給路を確保するためにも、なんとしても半島を手に入れたい」
「すでに手に入れちょるぞ」

 公室に聞き慣れた声が響いた。

「総帥」

 鯉之助は立ち上がり、自分が所属する組織のトップであり父親である坂本龍馬に敬礼した。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

架空戦記 旭日旗の元に

葉山宗次郎
歴史・時代
 国力で遙かに勝るアメリカを相手にするべく日本は様々な手を打ってきた。各地で善戦してきたが、国力の差の前には敗退を重ねる。  そして決戦と挑んだマリアナ沖海戦に敗北。日本は終わりかと思われた。  だが、それでも起死回生のチャンスを、日本を存続させるために男達は奮闘する。 カクヨムでも投稿しています

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

風を翔る

ypaaaaaaa
歴史・時代
彼の大戦争から80年近くが経ち、ミニオタであった高萩蒼(たかはぎ あおい)はある戦闘機について興味本位で調べることになる。二式艦上戦闘機、またの名を風翔。調べていく過程で、当時の凄惨な戦争についても知り高萩は現状を深く考えていくことになる。

武蔵要塞1945 ~ 戦艦武蔵あらため第34特別根拠地隊、沖縄の地で斯く戦えり

もろこし
歴史・時代
史実ではレイテ湾に向かう途上で沈んだ戦艦武蔵ですが、本作ではからくも生き残り、最終的に沖縄の海岸に座礁します。 海軍からは見捨てられた武蔵でしたが、戦力不足に悩む現地陸軍と手を握り沖縄防衛の中核となります。 無敵の要塞と化した武蔵は沖縄に来襲する連合軍を次々と撃破。その活躍は連合国の戦争計画を徐々に狂わせていきます。

異世界日本軍と手を組んでアメリカ相手に奇跡の勝利❕

naosi
歴史・時代
大日本帝国海軍のほぼすべての戦力を出撃させ、挑んだレイテ沖海戦、それは日本最後の空母機動部隊を囮にアメリカ軍の輸送部隊を攻撃するというものだった。この海戦で主力艦艇のほぼすべてを失った。これにより、日本軍首脳部は本土決戦へと移っていく。日本艦隊を敗北させたアメリカ軍は本土攻撃の中継地点の為に硫黄島を攻略を開始した。しかし、アメリカ海兵隊が上陸を始めた時、支援と輸送船を護衛していたアメリカ第五艦隊が攻撃を受けった。それをしたのは、アメリカ軍が沈めたはずの艦艇ばかりの日本の連合艦隊だった。   この作品は個人的に日本がアメリカ軍に負けなかったらどうなっていたか、はたまた、別の世界から来た日本が敗北寸前の日本を救うと言う架空の戦記です。

処理中です...