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大洋横断飛行計画開始
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「……本気で言っているのかい?」
「はい勿論」
義彦は忠弥に問いかけた。
先日、忠弥がダーク氏との話し合いの席でぶち上げた飛行機を使って秋津から旧大陸まで飛行すると言う宣言。
「飛行機で秋津皇国と旧大陸の間にある大洋を飛び越えます」
秋津皇国と旧大陸の間は、短いところでも二〇〇〇キロ以上ある。
その間をまだ飛んだばかりの飛行機で行くなど無謀に思えた。
「しかし、皇国から飛んで行かなくても良いのでは?」
遠く離れた秋津皇国から旧大陸へ飛ぶことは無謀に思えた。
「ええ、確かに無謀でしょう。しかし、秋津周辺で飛んでいても認める人は世界に少ないでしょう」
今の世界は旧大陸と新大陸が中心となっている。彼らの常識がこの世界の常識だ。
彼らに認めさせないと飛行機は認めてもらえない。
「それに、私は世界中に飛行機を送り出したいんです。新大陸にも旧大陸にも。何処でも飛ばせる事を証明して世界に広げたいんです」
「希有壮大だね」
義彦は呆れつつも、その夢の大きさに胸を熱くした。
「勝算はあるのかい?」
「ええ、ダーク氏は星形エンジンの使用を許可してくれました。自由に作らせて貰いますよ」
軽量で高出力が出せる星形エンジンは忠弥も欲しがっていた。
だが下手に正面から頼めば特許料などの問題が発生する。一機に一基ならともかく数万台の星形エンジンを生産するとなるとライセンス料が馬鹿にならない。
それをダーク氏に認めさせた。
動翼と静翼のライセンスも渡す事になるが些細なことだ。
高出力のエンジンがあれば高性能な機体を作る事が出来る。星形エンジンは円周上に気筒を配置することが出来るので小さい割りに高出力を出せる。これはスペースが限られる航空機に有利だ。空冷の場合だと全ての気筒がエンジンの正面にあるため冷却し易い。
大型化すると断面積が増えて空気抵抗が増す欠点があるが、いまだ低速しか出せない今の航空機のレベルなら暫くは十分に使える。
それに飛行機が世界中で作れるようにするため動翼の特許に関してはフリーにするつもりだった。
「それでここにどうして気球で飛んでいるんだい?」
二人が飛んでいるのはラスコー共和国の沿岸だ。
旧大陸の果てであり海岸線が広がる風光明媚な場所だ。西側は大洋であり、真っ直ぐ進むと秋津皇国へ到達する。
「秋津皇国から飛んで真っ直ぐに旧大陸に向かうと、ここが目標になります。この辺りの海岸線と地形を確認しておけば飛んでくるとき、目印になりますから」
簡単なコンパスしか無いので自分の位置を知るにはつぃたの地形を確認するのが手っ取り早い。一応ジャイロコンパスも開発しているが、十分な精度と軽量化を持ったものはまだない。そのため自分の目で確かめる必要がある。
「着陸目標はパリシイですが、ここに拠点を作っておいて損は無いと思います。旧大陸で秋津に一番近い場所ですし」
「そういうことか」
義彦は納得して、気球を下ろさせると地主の家に向かった。
「ああ、あんたらが新大陸からここまで飛行しようという方々かい?」
「はい、そうです。それで飛行機のための土地を買いにきました」
「ほう、どれくらいいるんだい?」
「六キロ四方です」
忠弥の言葉に地主も流石の義彦も絶句した。
「……なんでそんなに土地が必要なんだ」
忠弥への耐性が付き始めていた義彦が真っ先に立ち直って尋ねた。
「四キロほどの滑走路と進入路の安全地帯の確保に両端一キロ。これで最低六キロは必要です。更に誘導路と駐機場、格納庫、関連施設を建設するとなると六キロ四方は必要です」
「数百メートルで離着陸出来るだろう!」
玉虫とその普及型でも五〇〇メートルで十分。その八倍もの滑走路など義彦は不要だと考えていた。
「いえ、今後更に大型の機体を開発することになり、受け容れるための飛行場の確保が必要になります。機体を開発する前に改めて土地を確保するより予め土地を確保しておいた方が良いのです」
「……無茶苦茶を言うな」
二一世紀の世界では技術の進歩により二五〇〇から三〇〇〇メートルの滑走路が基本だ。しかし、七〇年代から八〇年代は機体の大型化に対して機体の能力が足りず四〇〇〇メートルの滑走路が基本だった。
今後短距離離陸の技術を高めていくことになるが、長い滑走路があるにこしたことはない。だから忠弥は四〇〇〇メートルの滑走路にこだわった。
「今必要なのか」
しかし、現在はそんな長い滑走路など不要であるのも確かだ。
「今は仰るとおり数百メートルの滑走路で十分です。付属施設も小さくて済みます。ですがいずれ六キロ四方の土地が必要になるでしょう。今纏めて周辺の土地を買って拡張が必要になったとき拡張できるようにしておいた方が、改めて広大な土地を確保するより簡単で短期間で済むと思います」
「ふむ」
忠弥の言いたいことは分かった。
確かに飛行機がこれ以上大型化するのなら、必要な事だった。
「……わかった。購入しよう。交渉をさせて下さい」
「……面白い人達だな。よし、良いだろう」
「ありがとうございます。あと秋津皇国の沿岸とパリシイ周辺と皇都周辺でもお願いいたします。到着地だけでは飛行機は飛べません出発地も確保しませんと。あ、大東島にもお願いしますね」
五箇所同時に土地を確保しろと命令された義彦は流石に顎が外れかけた。
これまで売り上げたスクーターと飛行機の利益の半分が奪われそうな勢いだ。
「……分かったよ」
だが、忠弥の言葉に従うことにした。
彼の先見の明は卓越している、言っている事が本当であると信じ、土地の取得に当たった。
そして忠弥は飛行場の確保を行い他にも周辺の土地を偵察した後、秋津皇国へ帰還。
大洋横断の飛行機作成に掛かった。
「はい勿論」
義彦は忠弥に問いかけた。
先日、忠弥がダーク氏との話し合いの席でぶち上げた飛行機を使って秋津から旧大陸まで飛行すると言う宣言。
「飛行機で秋津皇国と旧大陸の間にある大洋を飛び越えます」
秋津皇国と旧大陸の間は、短いところでも二〇〇〇キロ以上ある。
その間をまだ飛んだばかりの飛行機で行くなど無謀に思えた。
「しかし、皇国から飛んで行かなくても良いのでは?」
遠く離れた秋津皇国から旧大陸へ飛ぶことは無謀に思えた。
「ええ、確かに無謀でしょう。しかし、秋津周辺で飛んでいても認める人は世界に少ないでしょう」
今の世界は旧大陸と新大陸が中心となっている。彼らの常識がこの世界の常識だ。
彼らに認めさせないと飛行機は認めてもらえない。
「それに、私は世界中に飛行機を送り出したいんです。新大陸にも旧大陸にも。何処でも飛ばせる事を証明して世界に広げたいんです」
「希有壮大だね」
義彦は呆れつつも、その夢の大きさに胸を熱くした。
「勝算はあるのかい?」
「ええ、ダーク氏は星形エンジンの使用を許可してくれました。自由に作らせて貰いますよ」
軽量で高出力が出せる星形エンジンは忠弥も欲しがっていた。
だが下手に正面から頼めば特許料などの問題が発生する。一機に一基ならともかく数万台の星形エンジンを生産するとなるとライセンス料が馬鹿にならない。
それをダーク氏に認めさせた。
動翼と静翼のライセンスも渡す事になるが些細なことだ。
高出力のエンジンがあれば高性能な機体を作る事が出来る。星形エンジンは円周上に気筒を配置することが出来るので小さい割りに高出力を出せる。これはスペースが限られる航空機に有利だ。空冷の場合だと全ての気筒がエンジンの正面にあるため冷却し易い。
大型化すると断面積が増えて空気抵抗が増す欠点があるが、いまだ低速しか出せない今の航空機のレベルなら暫くは十分に使える。
それに飛行機が世界中で作れるようにするため動翼の特許に関してはフリーにするつもりだった。
「それでここにどうして気球で飛んでいるんだい?」
二人が飛んでいるのはラスコー共和国の沿岸だ。
旧大陸の果てであり海岸線が広がる風光明媚な場所だ。西側は大洋であり、真っ直ぐ進むと秋津皇国へ到達する。
「秋津皇国から飛んで真っ直ぐに旧大陸に向かうと、ここが目標になります。この辺りの海岸線と地形を確認しておけば飛んでくるとき、目印になりますから」
簡単なコンパスしか無いので自分の位置を知るにはつぃたの地形を確認するのが手っ取り早い。一応ジャイロコンパスも開発しているが、十分な精度と軽量化を持ったものはまだない。そのため自分の目で確かめる必要がある。
「着陸目標はパリシイですが、ここに拠点を作っておいて損は無いと思います。旧大陸で秋津に一番近い場所ですし」
「そういうことか」
義彦は納得して、気球を下ろさせると地主の家に向かった。
「ああ、あんたらが新大陸からここまで飛行しようという方々かい?」
「はい、そうです。それで飛行機のための土地を買いにきました」
「ほう、どれくらいいるんだい?」
「六キロ四方です」
忠弥の言葉に地主も流石の義彦も絶句した。
「……なんでそんなに土地が必要なんだ」
忠弥への耐性が付き始めていた義彦が真っ先に立ち直って尋ねた。
「四キロほどの滑走路と進入路の安全地帯の確保に両端一キロ。これで最低六キロは必要です。更に誘導路と駐機場、格納庫、関連施設を建設するとなると六キロ四方は必要です」
「数百メートルで離着陸出来るだろう!」
玉虫とその普及型でも五〇〇メートルで十分。その八倍もの滑走路など義彦は不要だと考えていた。
「いえ、今後更に大型の機体を開発することになり、受け容れるための飛行場の確保が必要になります。機体を開発する前に改めて土地を確保するより予め土地を確保しておいた方が良いのです」
「……無茶苦茶を言うな」
二一世紀の世界では技術の進歩により二五〇〇から三〇〇〇メートルの滑走路が基本だ。しかし、七〇年代から八〇年代は機体の大型化に対して機体の能力が足りず四〇〇〇メートルの滑走路が基本だった。
今後短距離離陸の技術を高めていくことになるが、長い滑走路があるにこしたことはない。だから忠弥は四〇〇〇メートルの滑走路にこだわった。
「今必要なのか」
しかし、現在はそんな長い滑走路など不要であるのも確かだ。
「今は仰るとおり数百メートルの滑走路で十分です。付属施設も小さくて済みます。ですがいずれ六キロ四方の土地が必要になるでしょう。今纏めて周辺の土地を買って拡張が必要になったとき拡張できるようにしておいた方が、改めて広大な土地を確保するより簡単で短期間で済むと思います」
「ふむ」
忠弥の言いたいことは分かった。
確かに飛行機がこれ以上大型化するのなら、必要な事だった。
「……わかった。購入しよう。交渉をさせて下さい」
「……面白い人達だな。よし、良いだろう」
「ありがとうございます。あと秋津皇国の沿岸とパリシイ周辺と皇都周辺でもお願いいたします。到着地だけでは飛行機は飛べません出発地も確保しませんと。あ、大東島にもお願いしますね」
五箇所同時に土地を確保しろと命令された義彦は流石に顎が外れかけた。
これまで売り上げたスクーターと飛行機の利益の半分が奪われそうな勢いだ。
「……分かったよ」
だが、忠弥の言葉に従うことにした。
彼の先見の明は卓越している、言っている事が本当であると信じ、土地の取得に当たった。
そして忠弥は飛行場の確保を行い他にも周辺の土地を偵察した後、秋津皇国へ帰還。
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