上 下
3 / 6

第三話

しおりを挟む
異世界に召喚されてから1週間がすぎた。
その間、私達は様々な知識を叩き込まれた。

 そのおかげか、全員この世界の基本知識はバッチリ、
魔法も魔術も剣術も、それなりには上達した。

「なぁ、そろそろいいんじゃないか?」
ケイが寝っ転がりながら話す。
「この世界のことも大体は知ったし、魔法だって人並みに扱えるようになった。剣術もみんな程々にできるじゃないか」

「そろそろ、火でも雷でも放って逃げようぜ」

 アイが迷うように答える
「確かに、知識 魔法 剣術 ともに基礎はバッチリよね。そろそろ潮時かしら」

 正気だろうか…
「無理でしょ」
私は話を続ける。

「私達の能力は人並みなんだよ?王宮お抱えの魔導士とか騎士達が逃げた私達を追えば半日もかからず捕まえられてここに逆戻りだよ」

 私の発言にみんなは考え込む
「ただし、運に賭けるなら。可能性はあるよ」

「可能性?」

「聞こうじゃないか」

 私は図書室からこっそり盗ってきた地図を広げた。

「まず、逃げるなら1週間後のお披露目パーティーが終わった夜ね。風魔法で一気に城から飛び出て逃げよう」

「それはそうだよ、で俺の作戦はそのまま隣国のアスランまで逃げようって話で…」

「話を最後まで聞けって」
ケンは続けようとした言葉を飲み込んだ。

「逃げるとしたら、隣国じゃない。精霊の森だ」

 みんながポカンとした顔でこっちを見つめる。
「隣国はタザールと友好国だ。隣国に私達がいると知られれば、引き渡されて終わり」

「だから、逃げるなら精霊の森。精霊は中間的な立場だから、私達は異界人。特別な力を持っているって利用価値をアピールしたら匿ってくれるかもしれない」

 みんなの顔に嬉しさが宿る。
「なるほど!じゃあ1週間後のパーティーの夜、精霊の森に夜逃げするってことでいいよな!」

 反対の声はでなかった。

(正直、精霊達が私達を匿ってくれる確率は限りなく低い。でも、可能性があるなら……それに、精霊なら呪いをとく方法も教えてくれるかも)

 
 そうして数日が経ち、パーティー当日になった。
「異界から勇者一同が我々を助けに来てからだぞ!乾杯!」

 意味のわからない自己紹介を沢山受けて、部屋に戻れたのは12時が回るころだった。
 
「事前に決めた2人組になって!はやく!」
ケンがみんなを急かしながら荷物をまとめる。

「窓はもう開けといたよ!風魔法の準備して!」
私も小さい声で叫びながらクラスメイトの先頭に立った

「アマノガワ、時間だ行こう」

 風魔法を唱えて窓から外に出る。

 全員外に出たのを確認して、精霊の森の方向へ全速力で進む。

 5分くらい経っただろうか
「アマノガワ!ケン!後ろから追っ手が…魔導士だ!」

(思っていたより速い…)

「速度をあげて!捕まっても助けてやれないよ!」

 瞬間、後ろから火の球が通り過ぎていった。
魔導士からの攻撃だ。

「全員攻撃が得意じゃない奴は下がれ!」

 そう言いながらケンは魔導士達の前に出た
「水よ!唸れ!」
ケンが水魔法で龍を作り魔導士に差し向ける。

 魔導士はものの数秒で龍を破った。

 私もケンの後に続き、前に出る。
「闇は燃えて光は届かん」
呪文を唱え、闇魔法を魔導士達に差し向ける。
闇魔法はしぶとく残って魔導士の行手を遮った。

「アマノガワ!精霊の森が見えてきた」

 向こうのほうをみると大きな森が見えてきた。
「攻撃はもういいからはやく精霊の森にはいって!」

 次々とクラスメイトが精霊の森に入っていく。
後もう少しというところで、ケンに魔導士の攻撃が直撃した。

 ケンがよろよろと落ちていく。
(やばい!間に合わない!!!)

 その時、大きな鳥がケンを拾って森に連れて行った。
私はスピードを落とさず森にダイブした。

 ……痛い

「ケン!大丈夫?」

「全員夜逃げ成功だ!!」

「アマノガワ、息してる??」

「ん、生きてるよ」
生返事をして起き上がる。
さて、このまま休みたいところだが。まだピンチを逃れたわけではない。

「精霊さん、なんで助けてくれたの?」
大きな鳥に話しかける。

 鳥はこっちに向き頭を下げた。
そして、聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟いた。

「大精霊様方がお呼びです」

 そう言って鳥は翼をこちらに向けた。
どうやら乗れということらしい。

 鳥にまたがるとすぐに鳥は羽ばたいた。

「……つきました」

 見るとそこには6人の精霊がいた。
おそらくこの人たちが大精霊なのだろう。

 6人の1人が跪く。
「お待ちしておりました。精霊王様」
その場にいたのは私と鳥だけ。

「精…精霊王?」

続く
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

性転換スーツ

廣瀬純一
ファンタジー
着ると性転換するスーツの話

異世界帰りの勇者は現代社会に戦いを挑む

大沢 雅紀
ファンタジー
ブラック企業に勤めている山田太郎は、自らの境遇に腐ることなく働いて金をためていた。しかし、やっと挙げた結婚式で裏切られてしまう。失意の太郎だったが、異世界に勇者として召喚されてしまった。 一年後、魔王を倒した太郎は、異世界で身に着けた力とアイテムをもって帰還する。そして自らを嵌めたクラスメイトと、彼らを育んた日本に対して戦いを挑むのだった。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

そんなにホイホイ転生させんじゃねえ!転生者達のチートスキルを奪う旅〜好き勝手する転生者に四苦八苦する私〜

Open
ファンタジー
就活浪人生に片足を突っ込みかけている大学生、本田望結のもとに怪しげなスカウトメールが届く。やけになっていた望結は指定された教会に行ってみると・・・ 神様の世界でも異世界転生が流行っていて沢山問題が発生しているから解決するために異世界に行って転生者の体の一部を回収してこい?しかも給料も発生する? 月給30万円、昇給あり。衣食住、必要経費は全負担、残業代は別途支給。etc...etc... 新卒の私にとって魅力的な待遇に即決したけど・・・ とにかくやりたい放題の転生者。 何度も聞いた「俺なんかやっちゃいました?」       「俺は静かに暮らしたいのに・・・」       「まさか・・・手加減でもしているのか・・・?」       「これぐらい出来て普通じゃないのか・・・」 そんな転生者を担ぎ上げる異世界の住民達。 そして転生者に秒で惚れていく異世界の女性達によって形成されるハーレムの数々。 もういい加減にしてくれ!!! 小説家になろうでも掲載しております

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

処理中です...