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本編_前編_
第92話
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「失礼致します」
軽くノックと共にシェルファは、シルヴァンエルフ兄妹の部屋へと入って来たのである。
「こ、コレは…シェルファ様!このような場に何用でしょうか!?」
思わずとこのような場に来るような方では無いと思いながら、ルシウスは恐縮しながら言った。
「そんなに堅くならなくても構いませんよ。ピュリアーツの森を治めるルシウス村長代理」
「い、いえいえ。我らエルフの頂点に立たれる方ですから。我々はまだまだあなた様の足下にも及ばない若いエルフですので」
確かに言われてみればそうだなとシリウスは心の中で思った。
普通、エルフといったら、100歳越えなのだが、彼らはまだ100歳にも満たないのだ。
幾らエルフの中で、絶滅危惧種に当たるシルヴァンエルフも例外では無いのだろう。
「いえいえ。私はごく普通のエルフですから。あなたたちとは平凡ですよ」
「そうは仰っても…。とにかくと先程は見苦しい場をお見せしてしまい、申し訳ありません」
「そう気にしなくてもいいですよ。私はただ…この方とこの子、フリックに用があって参りましたのよ」
さっきから何も言わずにいる、シリウスに気付いて言ったのである。
「お、俺…!?」
「はい。少し皆さん、席を外してくれるかしら?この子も連れて行っても構いませんから」
今は眠っているとはいえ、気が付いた時に癇癪を起こされては困ることからシェルファは言うと、レイオスはフリックを抱き上げると、彼らはシリウスを残してその場から離れたのである。
「え、えっと…俺に何か用ですか?」
「ええ。あなた………あの時、抽選会場で列の最終尾に並んでいた同じ転生者ですね?」
真っ先にシェルファは、シリウスの正体を見抜いた上で言ったのである。
「は、はい。って…どうして俺が転生者だと分かったんですか?」
「だって…あんなに心の声がダダ漏れしているのは、あなただけだったんですもの。というか、この話し方はしんどいな。素で話していいか?」
先程まで女性らしい話し方と打って変わって、オッサンのような話し方へとなりながらシェルファは言った。
「そ、そうか…洩れていたのか。ってすみません」
「構わん。ここにはオレとアンタしかいないのだからな。何のためにあの子らを部屋から追い出したと言うんだ?」
「そ、それもそうだな。確かに素の口調だとドン引きされるよなぁ…」
あんなに可憐で可愛らしい姿のシェルファが突然とオッサン口調で話し出したとなれば、一気にイメージ崩れというか、信頼は落ちるのは間違いないだろうと俺は思ったのである。
「そういうことだ。さて、要件を手短に済まそう。あの子には時間がないからな…」
「あの子って…?」
「ああ。オレが今、人間の国で何度も往診している子だ。あの子は幼い頃から胸膜炎に煩っていてな。移植が必要な状態なのだが、あの子の型に合う心臓が…フリックなのだ。で、心臓を提供する上で残念なことにフリックには…ってことになることから、お主の魔法の中に蘇生魔法はある筈だ」
「あ、ああ…確かに俺は蘇生魔法って使えるみたいだけど、一度も使ったことがないんだが、まさかと思うけど…俺にそれをさせろってことか?」
「良く分かったな。オレは治療魔法全般と使用出来るが、肝心の蘇生魔法は出来ないからな。何、大丈夫。一度も使ったことが無くともお前には分かる筈だ。この世界の魔法は、イメージだけで構成されていることを…」
魔法を使用する上で必要となるマナと具体的なイメージさえ出来れば、魔法などは容易いモノだとシェルファは、簡潔に説明したのである。
「具体的なイメージねぇ…。それには限度ってのもあるんだろう」
「ああ。使用する側に適性が合わなければ出来ないのが難点だからな…」
魔法には、得手不得手とあるのは仕方ないことだということであった。
「蘇生魔法といえば、俺は…ザ○リクしか知らないんだけど?」
「………国民的RPGは出来ぬぞ。仕方ない。オレの知っている蘇生魔法があるからそれなら大丈夫だろ」
そうシェルファとの話は何とかシリウスは理解すると、明日にはここを発ち、早急に移植手術を行うことを、部屋の外で待機していた、ルシウスたち兄弟に事を急ぐ理由を丁重に
説明したのである。
軽くノックと共にシェルファは、シルヴァンエルフ兄妹の部屋へと入って来たのである。
「こ、コレは…シェルファ様!このような場に何用でしょうか!?」
思わずとこのような場に来るような方では無いと思いながら、ルシウスは恐縮しながら言った。
「そんなに堅くならなくても構いませんよ。ピュリアーツの森を治めるルシウス村長代理」
「い、いえいえ。我らエルフの頂点に立たれる方ですから。我々はまだまだあなた様の足下にも及ばない若いエルフですので」
確かに言われてみればそうだなとシリウスは心の中で思った。
普通、エルフといったら、100歳越えなのだが、彼らはまだ100歳にも満たないのだ。
幾らエルフの中で、絶滅危惧種に当たるシルヴァンエルフも例外では無いのだろう。
「いえいえ。私はごく普通のエルフですから。あなたたちとは平凡ですよ」
「そうは仰っても…。とにかくと先程は見苦しい場をお見せしてしまい、申し訳ありません」
「そう気にしなくてもいいですよ。私はただ…この方とこの子、フリックに用があって参りましたのよ」
さっきから何も言わずにいる、シリウスに気付いて言ったのである。
「お、俺…!?」
「はい。少し皆さん、席を外してくれるかしら?この子も連れて行っても構いませんから」
今は眠っているとはいえ、気が付いた時に癇癪を起こされては困ることからシェルファは言うと、レイオスはフリックを抱き上げると、彼らはシリウスを残してその場から離れたのである。
「え、えっと…俺に何か用ですか?」
「ええ。あなた………あの時、抽選会場で列の最終尾に並んでいた同じ転生者ですね?」
真っ先にシェルファは、シリウスの正体を見抜いた上で言ったのである。
「は、はい。って…どうして俺が転生者だと分かったんですか?」
「だって…あんなに心の声がダダ漏れしているのは、あなただけだったんですもの。というか、この話し方はしんどいな。素で話していいか?」
先程まで女性らしい話し方と打って変わって、オッサンのような話し方へとなりながらシェルファは言った。
「そ、そうか…洩れていたのか。ってすみません」
「構わん。ここにはオレとアンタしかいないのだからな。何のためにあの子らを部屋から追い出したと言うんだ?」
「そ、それもそうだな。確かに素の口調だとドン引きされるよなぁ…」
あんなに可憐で可愛らしい姿のシェルファが突然とオッサン口調で話し出したとなれば、一気にイメージ崩れというか、信頼は落ちるのは間違いないだろうと俺は思ったのである。
「そういうことだ。さて、要件を手短に済まそう。あの子には時間がないからな…」
「あの子って…?」
「ああ。オレが今、人間の国で何度も往診している子だ。あの子は幼い頃から胸膜炎に煩っていてな。移植が必要な状態なのだが、あの子の型に合う心臓が…フリックなのだ。で、心臓を提供する上で残念なことにフリックには…ってことになることから、お主の魔法の中に蘇生魔法はある筈だ」
「あ、ああ…確かに俺は蘇生魔法って使えるみたいだけど、一度も使ったことがないんだが、まさかと思うけど…俺にそれをさせろってことか?」
「良く分かったな。オレは治療魔法全般と使用出来るが、肝心の蘇生魔法は出来ないからな。何、大丈夫。一度も使ったことが無くともお前には分かる筈だ。この世界の魔法は、イメージだけで構成されていることを…」
魔法を使用する上で必要となるマナと具体的なイメージさえ出来れば、魔法などは容易いモノだとシェルファは、簡潔に説明したのである。
「具体的なイメージねぇ…。それには限度ってのもあるんだろう」
「ああ。使用する側に適性が合わなければ出来ないのが難点だからな…」
魔法には、得手不得手とあるのは仕方ないことだということであった。
「蘇生魔法といえば、俺は…ザ○リクしか知らないんだけど?」
「………国民的RPGは出来ぬぞ。仕方ない。オレの知っている蘇生魔法があるからそれなら大丈夫だろ」
そうシェルファとの話は何とかシリウスは理解すると、明日にはここを発ち、早急に移植手術を行うことを、部屋の外で待機していた、ルシウスたち兄弟に事を急ぐ理由を丁重に
説明したのである。
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