魔探偵探偵事務所

カクカラ

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1章4節 幸せの居場所

3-3 (98話)

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偽りじゃないと言ってほしかった。
現実から目を覚まさないでほしかった。
夢だと言ってほしい。
だけど、もうそむけることもできない。
本当の正体を知ってしまったら後はないのだから。

「てめーっ!!俺をおいていくじゃ・・・」

西崎も合流したところですべての結末が見えてしまった。
これが本当の結末だというのだろうか。
目の前にいるのは誰なんだ。
目が獣のような鋭い目つき、背中には黒い羽、顔がどんなのかは確認できなかったが若いイメージがある。
しかし、少しだけ見える隙間からは血のような赤い模様が見える。
それどころか依頼者のおばあさんに乗りかかっている。
本当にこのおばあさんの命を無理矢理にでも奪おうとするつもりなのだろうか。
だとしたらこれは助けなければいけない。
西崎はおばあさんのところに向かおうとするが、シンが目の前に出てきて通してくれなかった。

「今は行かないでください」
「んでだよ!!人の命がかかってんだぞ!!」
「わかってます。でも、これが正しいんです」
「正しいだと!?」

シンの言い分がわからない。
これでいいとはどういう意味なのだろうか。
赤い左目が何を証明しているのかこればかりはシンにしかわからない。

「見ていたらわかります。これが本当の真実でもあり、猪野糸が言ってくれた証言の答えなんです」

その言葉を聞いて大人しくなった西崎は依頼者のおばあさんを見つめた。
何が起こるかわからないのに黙って見ていたらいいなんてどういう神経をしているんだ。
だが、これが真実だというのだから黙って一部始終を見るしかない。

「何が起こるんですか?」

不安そうに見つめる美沙。
何が起こるのか全く想像ができない。
あの影はおばあさんの顔に手をあてて何をしようというのだろうか。
本当に殺そうとしているのだとしたら大変なことになる。
止めなければいけない。
でも、これから先何をするかなんてわかるわけがない。
やはり黙って見ているしかないのか。
すると、風がスーッと入ってきた。
窓は閉まっているはずなのにどうして風が入ってくるのだろうか。
その風に乗せるように声が聞こえてきた。

(誰でもいいから私を・・・)

あの時と同じ声。
あれは間違いなんかじゃなかった。
本当に聞こえてきたんだ。

「さっきの声って・・・」
「おばあちゃん?」
「何?」

どういう事だ。
あの声がおばあさんだったなんて確信が持てない。
シンはあの時何が起こったのかを説明した。

「おそらく、あの影がおばあさんが思っていることを伝えたのでしょう。自分はもうそんなに長くは生きられないということがわかっているのかもしれません。しかし、それを伝えることができなかった。認知が進んでいたせいで伝えられずにいた。それを悔やんでいたおばあさんの思いが伝わってしまったのか、この影が来てしまったんです」

その思いがこの影を連れてきた原因。
しかし、それをいち早く気づいてくれた人物こそが猪野糸だった。
そう、あの時の言葉で。
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