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ユナとサナの学園生活Ⅵカイン議会で発言する

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 翌日、ルノガ―校長からギルドに連絡があり、夕方魔法学校へ来るようにと言われた。

 どうやら先日のルーカス先生の件で、公式に帝国としてルーカス先生を捕縛するためには僕の証言が必要になるらしい。

 アシスト制度の帰りに直接学校へ行かないと約束の時間に間に合わない。

 正装ではなく、冒険者の格好のまま直接向かった。

 一応、ルノガ―校長には許可は取っている。問題はないだろう。

 学校へ行くと、大きな会議室へ通された。

 ルーカス先生は腕と腰に紐を巻かれている。

 「よく来てくれた。カイン先生。それではさっそく始めよう。」

 ルノガ―校長が宣言する。

 魔法学校の先生だけではなく、帝国議会のお偉方も来ているみたいだ。

 正式な議会の決定として必要ではあるが、天下の魔法学校の不祥事だ。

 お偉方としては次のルーカス先生の後釜を自分が推す講師にしたい。という思惑もあるのだろう。

 「今回、ルーカス先生は女子生徒のローブと制服を盗んだ。間違いないな。」

 ルーカスが返事をする。

 「いえ。私は犯人ではありません。」

 お偉方がザワつく。

 「ほう。昨日とは言っていることが違うが、それでいいのだな。」

 ルノガ―校長が凄む。ルーカスがつばを飲む。

 「昨日はカインに無理やり言わされたんだ。オレはやっていない。」

 相変わらずメチャクチャなことを言う。

 発言しようとすると、名家と言われるビショップ家の長男ポナバルトが手を挙げて発言した。

 「ルーカス先生はこう言っていますし、素行の悪いポーン家の恥晒しのカインが脅したのでしょう。ここは不問にしてはいかがでしょうか。」

 ビショップ家はポーン家と犬猿の仲だ。

 中でもポナバルトはオレに対して良い感情を持っていない。むしろ嫌っているのは昔から知ってはいたが、今回はルーカスを推しているのはビショップ家なのだろう。

 ポナバルトがこちらを見て笑っている。

 少しムカつく。

 「僕は脅していませんよ。まさか、ビショップ家がルーカス先生を推しているから庇っているなんてことはないですよね。」

 ポナバルトの顔が笑みからムッとした顔に変わる。

 「そういうところが、お前がムカつくんだ。カイン。公式の場で正装もできない野良犬が。」

 そう言うと、ポナバルトがこちらを睨む。

 「まあ個人的な話は後にしてくれ。それで、ルーカス先生、あなたの研究室にあったローブと制服の件はどう説明する。」

 ルノガ―校長がルーカスに詰め寄る。

 「それはっ…その。」

 「ほう。まさか、帝国議会の場で嘘をつくなんてことはせんだろうな。議会の場で嘘をつくことは大罪だということを知らぬとは言わせないぞ。」

 ルーカスが黙る。

 「分かりました。真相を打ち明けます。カインに盗めと脅されました。」

 何をバカなことを。ルノガ―校長も呆れた顔になる。

 「ほう。そうか。カインがルーカス先生を脅したと。」

 「はい。そうです。」

 「その話だと、ルーカス先生はカイン先生に物理的に脅された。もしくは、何かしらをちらつかされて脅されたということか。」

 「…はい。」

 「はい。じゃわからん。ちゃんと説明してくれ。少なくとも物理的に脅されてギルド職員に負けるような教師が魔法学校Sクラスの担任を務めることはできんだろう。」

 ルーカスはぶつぶつ独り言を言っている。

 こんな子どもじみた言い訳でこの場を乗り切れるわけがない。

 「ルノガ―校長、ルーカス先生の具体的な証拠もなく、カインに脅されたと言っていますし、二人を投獄して拷問してみてはいかがでしょうか。さすれば真実は分かるでしょう。」

 そう言うと、ポナバルトが笑う。

 「ちょっと待ってください。私が、魔法学校に来たのはルノガ―校長から依頼があったからです。それ以前にローブの盗難があったと聞きましたし、制服も私の授業中の盗難です。どうして私が盗難をできましょうか。いえ、盗難することなどできません。それに私に盗難する理由がありません。」

 さすがに犯人に仕立て上げられるのは困る。

 「理由ならあるだろう。お前が変態だからだ。」

 ポナバルトがニタっと笑う。忌々しいやつだ。

 「ふむ。困ったの。たしかに、ルーカス先生がやったという証拠はない。」

 そうルノガ―校長が言うと、お偉方がざわざわと騒ぎ出す。

 その時、ドアがノックされる。

 「今は、大事な会議中だ。後にしてくれ。」

 ルノガ―校長が叫ぶ。

 その声が聞こえたはずだが、またノックする音が聞こえる。

 ルノガ―校長が席を立ち、扉を開ける。

 そこにはガレリア王とユナが立っていた。

 「会議中にすまんな。娘から面白い会議があると聞いての。予にも参加させてくれないか。」

 「もちろんです。ガレリア王。すぐに椅子を用意します。」

 ルノガ―校長が指示を出し、別の先生が椅子を用意する。

 「ふむ。感謝する。それでは予がいないものとして続けてくれ。」

 ガレリア王が手で払う仕草をした。

 ルノガ―校長が咳をして続ける。

 「ルーカス先生、カインが盗みの真犯人だと言っておるが、証拠はあるのか。」

 「いや…その。」

 さすがのルーカスもガリレア王が来るとは思っていなかったのだろう。ポナバルトが助けて有耶無耶にすると思っていたに違いない。

 「ふむ。黙っていてはわからん。ちゃんと説明してくれ。」

 「その…カインに脅されたんです。」

 ルーカスの歯切れが悪い。

 王様の鋭い眼光がルーカスを刺す。
 
 「予がルノガ―に紹介したカインが脅したと、お主は申すか。」

 「いや…そういうわけでは。」

 「ではどういう訳か聞かせてもらおう。」

 「待って下さい。ガレリア王。お言葉ですが、それは尋問ではないでしょうか。」

 ガレリア王が、発言したポナバルトを見据える。

 「ほう。ポナバルト。お主は予に意見するか。偉くなったものだ。もしやお主も犯人を庇うとなれば、どうなるかは分かっているだろう。」

 そう言うと、ポナバルトは俯き黙った。貴族が犯罪に関わっているとなれば、最悪、貴族を剥奪されることになる。

 正直、いい気味だ。

 「ルーカス先生と言ったか、予からのお願いだ。真実を語ってはくれぬか。手荒なことはしたくない。」

 ガレリア王からのお願いとあっては、嘘をつけばどうなるか想像がつくだろう。

 ルーカスは助けを求めてポナバルトを見るが、ポナバルトは目を合わせない。

 「はい…私がやりました。」

 「そうか。素直に言ってくれて助かった。ありがとうルーカス先生よ。」

 そう言うと、ガレリア王は立ち上がり、ルーカスの肩を叩いた。

 「これから数年は監獄で反省してから、帝国のためにまた尽くしてほしい。」

 ルーカスは泣き崩れた。

 「はい…ガレリア王。ご迷惑をおかけいたしました。」

 「誰にでも魔が差すことはある。素直に認めれくれて良かった。後のことは帝国で引き受けよう。」

 ガリレア王が手をたたくと、騎士が二名入ってきた。

 その内の一人はサーレムさんだ。オレにだけ分かるようウインクして、ルーカスを連れて出ていった。

 「ふむ。一件落着だな。ポナバルト後で話がある。親父さんと共に予のもとに来るように。」

 ポナバルトが何か言おうとしたが、下を向いてかしこまりました。と言った。

 「皆、議会の邪魔をしてすまなかったな。予はこれで失礼する。これからも帝国のために尽力してくれ。」
 
 そう言うとガレリア王は去っていった。

 「ふむ。議会はこれで終わりじゃ。皆ありがとう。解散してくれ。」

 ルノガ―校長が宣言した。

 皆部屋から出ていく。ポナバルトは心ここにあらずでトボトボと出ていく。さっきまでの威勢はどこにいったのだろうか。

 僕はルノガ―校長に話しかける。

 「ルノガ―校長。今日はありがとうございました。肝を冷やしましたよ。」

 「ワシもじゃ。どうなるかと思ったがなんとかなったのう。」

 ルノガ―校長がにやっと笑う。ガレリア王を呼んだのはルノガ―校長なのだろう。

 「ポナバルトも痛い目に合いましたし、万事解決ですね。」

 「ほう。カインも人間じゃったか。そのようなことを主から聞けるのも珍しいのう。」

 「さすがに真犯人に担ぎ上げようとされたんです。これくらい思ってもいいでしょう。」

 たしかになと言いルノガ―校長が笑った。

 「忙しいところ、呼び出してすまなかった。昨日もメンゼフ坊やにカインを学校くれと言ったのだが、どうも首を縦に振ってはくれぬ。」

 ルノガ―校長から見るとメンゼフさんですら坊や扱いだ。

 「僕はギルド職員なので。仕事がまだ残っていますので、そろそろ失礼しますね。」

 頭を下げて、部屋から出ると、

 パシャリと音がした。眩しい。

 「カイン先生ですよね。」

 「そうだが。キミは。」

 「私は魔法学校の新聞部部長ミールです。妹のロールがSクラスで実践魔術を教えてもらっていると思います。」

 ロールの姉のミールらしい。隣にはユナさんもいる。

 「それで、新聞部のミールが僕に何のようだい。」

 「何のようではありません。今、魔法学校では付き合いたい人ランキングナンバーワンのカイン先生が、盗難事件を解決したんですよっ! こんなニュースほおっては置けません。」

 「はぁ。」

 取材ということか。それにしても近い。

 「ちなみに、ユナ様との教師と生徒の禁断の恋の噂もあるんですが、本当ですか。」

 ユナが慌てて会話に入る。

 「なっなに言ってるんですか。カインさんと私なんて釣り合いませんよ。」

 必死に否定をする姿はかわいいが、姫様と付き合おうなんてことをすればガリレア王とサーレムさんに間違いなく殺される。

 「その噂は全くのデマだ。ユナさんに失礼だよ。」

 ユナが少し寂しそうな顔をする。

 「とにかく、今回の騒動は校長も大きく取り上げてほしくないと思うし、僕もまだギルドに仕事が残っている。適当に書いてくれないか。ユナさんとの恋愛など噂になるようなことは書かずにね。」

 「分かりました。誠心誠意書かせていただきますね。」

 そう言うと、僕はユナさんとミールに挨拶して学校を後にした。




 翌日、夕方にサナがギルドに飛び込んできた。

 「お兄様。大変です! これを見て下さい。」

 そこには昨日の新聞部が書いた魔法学校新聞を手に持っている。

 なになに。

 『カイン先生大手柄! 盗難の犯人を確保。次は女子生徒の心を盗難か。』

 頭を抱える。なにを書いてもいいと言ったが、そういう訳では言っていない。

 「カインファンクラブに女子生徒が全員殺到しております。さすがお兄様ですわ。」

 サナが嬉しそうに笑っているが、何も発言する気にはならない。

 次にミールに有ったら絶対に説教しようと心に誓うカインだった。
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