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ライカVSクロスナー
しおりを挟む私は戸惑っていた。いきなり知らない場所に飛ばされたからだ。カノンやミト、ロミとはバラバラの場所に飛ばされたらしい。ここは広場だろうか。教会の中なのは間違えないと思う。
「外れだな。少女を攻撃するのは気が引ける。」
目の前には大剣を持った男が立っている。
「なあ、嬢ちゃん。大人しく殺されてくれねえか。」
「嬢ちゃんじゃないよ、私はライカ。お兄ちゃんの名前は。」
「はあ。俺はクロスナーだ。」
「なんで私がクロスナーと戦わないといけないの。」
クロスナーと名乗った男はため息をつきながらもこちらに近づいてくる。
「しょうがないが殺らねえと教皇に怒られるからな。恨まないでくれよ。」
クロスナーが大剣を振り上げ、「オラッ」と声を上げて斬る。
私はカノンにもらった小刀を持っているが今まで実践で使ったことはない。
震える手で小刀を握りしめて大剣の斬撃を防ごうとするが、小刀とともに私は数メートルはふっ飛ばされた。
「おいおい、抵抗しないでくれ。しょうがないんだ。」
小刀を探すが、数メートル先に転がっている。取ろうとするが、間に合わない。
クロスナーが私の胸ぐらをつかみ、持ち上げる。
「私を殺したら、次はカノンを殺すの。」
「すまないな。俺たちはカノンたちを殺せと命令されているんだ。」
「本当にそれはクロスナーがしたいことなの。」
クロスナーが私から目を背ける。
「まあ…な。」
「なんで…私はいいけど、カノンがなにをしたっていうの。」
私は死んでもいい。カノンたちには迷惑しかかけていないからだ。いつも自分がいなければよかったと思っている。でもカノンやロミ、ミトには幸せになってほしいと常に思っている。
「そりゃ、カノンとは昔は仲間だったが、今では敵だ。敵は殺すのが当たり前だろ。」
「仲間だったのなら、殺さなくてもいいじゃない。死んだら悲しむ人がいるんだよ。」
「嬢ちゃんの言うことも分かる。だがな、俺は孤児だった。昔は帝国から、今は教会から認められないとまたあの頃の生活に戻ってしまうんだよ。戦場で存在意義を示し続ける必要があるんだ。」
クロスナーは悲しそうに笑った。
「大丈夫だ。すぐにあの世で再会できる。あばよ嬢ちゃん。」
クロスナーにも事情があるのだろう。悪い人とは思えない。
でも私は…私はカノンたちを守りたい。足を引っ張ているけど、私だって仲間なんだ。カノンを守る力がほしい。私がカノンを守る。守るから。
私を光が包む。
「なんだ。おい、何をした。」
クロスナーが大剣で斬るがジャンプして躱す。
どうやら、フェンリルに变化したみたいだ。今までフェンリルになると意思は保てなかったけど、今は意識を持って戦えている。
「クロスナーのことかわいそうだとおもうけど、カノンは私が守る。」
私はクロスナーに飛びかかる。さっきまで大きく見えていたクロスナーが小さく見える。
「くそっ。お前あの森に居たやつだな。油断させるなんて許せねえ。ぶっ殺してやる。」
クロスナーの腕を噛もうとしたが、大剣が飛んできたのでバックステップで躱す。
「それは私じゃない。でもカノンを殺そうとする人は許さない。」
クロスナーに飛びかかり、右脚、左脚で交互に攻撃する。クロスナーの鎧がどんどん削れていく。
「ふざけんな。」
クロスナーは大剣を振るがゆっくり振っている様に感じる。私が速くなっているのかな。
大剣の斬撃を躱し、左腕に噛みつく。
「クソがっ!」
クロスナーの腕を噛みちぎると、血が吹き出る。
「本気を出す。もう一切の同情はなしだ! 」
クロスナーが叫び、魔人化していく。腕も再生して生えてきた。
「こいよ嬢ちゃん。ぶっ殺してやる。」
クロスナーの攻撃速度が上がり、大剣を軽い物を扱うかのように振る。
速いけど、私のほうが疾い。
連続で攻撃を避けて、前脚で振り下ろす。
クロスナーは大剣で受けるが、ノックバックする。
一刻も早くカノンのところに戻らないと。
決めようと連続で前脚で攻撃する。
「それはもう見切ったぜ! 」
クロスナーが前脚を押しのけて腹を斬った。
痛い。痛いけど、いつもカノンは傷だらけになっても私たちを守ってくれた。
今度こそ私が守る番だ。
クロスナーから距離を取る。私には剣が使えないから頭を飛ばすしかない。でもどうやって。戦闘経験のなさが出る。どうやってクロスナーを倒せば良いんだろう。
「なにを考えている。俺からいくぜ! 決着をつけようぜ嬢ちゃん! 」
クロスナーの構えた剣が光る。どうやらエネルギーを貯めている様だ。
「くらえっ! 全てを破壊しろ! 溜め斬り! 」
クロスナーの大剣を振り下ろす速度は速い。
私は反転して尻尾を叩きつける。
「グワッ。」
カウンターが決まった。死角から飛んできた尻尾が直撃する。
尻尾が胸に直撃して、クロスナーが大剣を落とす。手応えがあった。骨は何本か折ったはず。
剣を落とした今がチャンスだ。飛びかかり顔を噛む。
「クソがっ。俺様が負けるだと! 」
首から上を引きちぎった。
広場を静寂が包む。勝った。勝ったんだ。
体の真ん中から力が湧き上がる感覚、無意識に雄叫びを上げていた。
カノンのところに戻ろう。場所はわからないけど、カノンの匂いがする方に進めば迷わずにたどり着けるはずだ。
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