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シイナとの再会

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 スラム街にある宿とは言え、すごく綺麗だった。

 将軍が用意してくれた冒険者の格好に着替える。帝都には冒険者が多くいるので紛れられるだろう。


 早速、見られることを警戒しながら研究所を向かう。ロミの妹レミが所長を務めているらしい。

 「キミがカノンかい。キミがライカでキミがミトだね。ささっ、中にはいってくれよ。お姉ちゃんもよくきたね。」

 驚いた。髪型から顔までロミそっくりだ。口調もそっくりで、違っているのは格好くらいだろう。研究者らしく白衣と言われる物を着ている。着る服を変えたらどちらがロミか分からないかもしれない。

 研究所の中にはレミを除いて五人いる。所狭しと書類と何かわらかない器具が置かれている。


 「早速座ってくれ。姉と将軍から話は聞いている。」

 「ありがとうレミ。それで古文書から何がわかったんだい。」

 ロミがメガネをくいっと上げる。好奇心が抑えられないようだ。

 「ああ。百年前の文字だから、全部は終わっていないんだ。古代文字は私の専門外だからね。」

 「なるほど。そこは僕が協力しよう。」

 「私も力になるわ。サンドタウンでは古代文字が石碑に書かれていたから多少なら力になれる。砂漠のことも伝承に書かれてるんでしょ。魔法具があったわけだし。」

 「ありがとう。ミト助かるよ。後、ライカにも手伝ってほしいことがあるんだ。古文書には狼の伝説が書かれていてね。ちょっとだけ実験に付き合ってほしい。」

 「オレは何をすれば良い。」

 「そうだね。カノンは休んでいてほしいさ。これからはひっきりなしに教会と争うことになるだろう。束の間の休息を味わってくれよ。指輪だけは置いていってくれ。研究に使うからね。」

 ロミがオレに言った。

 「私も賛成! カノンは最近忙しくしてたから休んで。その分、私が働くから。」

 ライカにまで言われたらしょうがないな。

 「満場一致だ。カノンは夜ご飯までに宿にご飯を買って帰ってきてくれ。そこで報告するよ。」レミが言う。

 「わかった。オレがご飯を買っておくよ。研究は任せた。」

 皆が頷き、書類を見合わせながら話を始めた。

 仲間たちには申し訳ないが、オレだけが暇になった。何をしようか。このままここに居ても邪魔になりそうだ。
 
 少し街に出てくるとよ。と言いローブを頭から被り研究所を後にした。


 帝都の街は二年ぶりだ。騎士になり戦場に行ってから一度も戻っていないからな。

 変わっているようで何も変わっていないな。

 何をしようか。宿で休んでもいいが、そこまで疲れてはいない。エマと行っていた孤児院に顔を出そうか、いや教会とのゴタゴタに巻き込んではダメだ。

 オレは訓練に明け暮れてほとんど帝都で遊んでいなかったから、どこに行けば良いかわからなかった。

 そうだ。鍛冶屋だ。鍛冶屋に向かおう。

 ドワーフのノーマさんがやっている鍛冶屋に向かおう。

 「ノーマさんいるか。」

 「ああ。誰だ。おまえ、カノンか! 大きくなったな。てっきり顔を見せなかったから死んだと思っていたぜ。」

 ノーマさんがオレの肩を強く叩き笑った。

 「ご無沙汰しています。ノーマさん。お変わりないですか。」

 「もちろんだぜ。それにそんな下手くそな敬語を使わなくてもいい。いつも通りでいいさ。」

 「ありがとうノーマさん。数年ぶりだしオレも緊張したんだ。」

 「ほう。それで今日は何のようだ。なにかあってきたんだろ。」

 「この剣を見てもらえませんか。」

 草薙の剣を机に置く。

 「ほう。これは魔剣だな。禍々しいオーラを放ってやがる。」

 「ええ。そうみたいです。剣から魔法が放たれるなんて見たことがなくて、ノーマさんなら何か知っているんじゃないかと思いまして。」

 「オレは鑑定士ではないからな。だが、魔剣は扱いに気をつけることだ。対価が必要だからな。」

 「対価ですか。」

 「ああ。それは使うものの寿命だったり、金だったり、魔石だったりすると聞くぜ。」

 「たしかにこの剣から魔石が欲しいとは言われました。」

 「それだろうな。寿命だったら大変だが、魔石だったらお前の強さなら大丈夫だろ。」

 「そうですね。安心しました。」

 世間話もして、良さそうな武具を紹介してもらうがオレがほしいものはなかった。

 お礼を言って鍛冶屋を出る。

 暇だ。

 結局スローライフを楽しむと言いながらも騎士を追放されてから忙しくしている。

 オレには忙しいのが似合っているのかもしれないな。

 スラム街をあてもなく進む。

 「お兄ちゃん、これ渡せって。」

 少女が手紙を差し出した。

 「ありがとう。どんな人だった。」

 手紙を見ると宿の名前と部屋番号が書かれている。

 「女の人だったと思う。」

 お礼に銀貨数枚を渡す。少女は去っていった。罠だろうか。襲うつもりならこの場で襲うだろう。

 警戒しながら行ってみるか。


 警戒して、紙に書かれていた宿に入るが人影はなかった。罠か。念のため一階を探ったが魔法陣や爆発物などは見当たらなかった。警戒のし過ぎか。

 部屋が三〇一合室。

 中の様子を見渡すが、人は誰もいない。いたずらか。

 まだ奥に部屋があるみたいだ。剣に手をかけて警戒しながら開ける。

 ベッドの中に入っているが、シイナは裸のようだ。シーツで隠しているが肩が見えている。

 「カノン、よく来たわね。」

 「オレを呼んだのはシイナなのか。」

 驚いた。顔もやつれていて、以前の様に覇気がない。

 「ええ。さっきあなたを見かけてね。良かった二人っきりになれて。私が全部間違っていたの。」

 「そうか。」

 「ねえ、カノン。また昔みたいに私たち戻らない?」

 「また急だな。何を企んでいるんだシイナ。」

 オレは椅子に腰掛ける。

 「私が悪いの。エドガーにも騙されて、帝国にも騙されていたのよ。カノン教会に一緒に行きましょうよ。」

 「教会…今、教会と言ったのか。」

 帝国を裏切った騎士というのはシイナのことだったのか。

 「そうよ。私たちは帝国に騙されていたの。抱いていいわ。カノン。その代わり一緒に教会にいきましょう。全てを許してくれるわ。」

 「断る。寝言は寝てから言ってくれ。メギツネなんてごめんだ。」

 オレは椅子から立ち部屋を出ようとする。

 「カノン。あなたがいけないよの。あなたが居なくならなければこんなことにはならなかった。」

 「オレはお前たちに追放されたんだ。次見つけたら殺すからな。」

 後から叫び声が聞こえたが無視して建物から出た。オレがわざわざ殺す必要などない。どうせ帝国によって処刑される。


 
 スラム街にある宿は小汚いがセキュリティ万全だ。一階が飯屋に偽造してある。裏口から入ればバレない。オレは買い出しをして宿に戻った。
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