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ロミは魔法学校と別れを済ませる。

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 翌日、そのまま机に突っ伏して寝ていたみたいだ。

 ロミの姿は見えないがシャワーの音が響いている。学校に行く準備をしているのだろう。一応校長だからな。

 ロミがバスタオル一枚で体を隠して風呂から上がってきた。

 「おはよう。カノン。サクッとお風呂に入って準備してほしいのさ。ご飯食べたら、一緒に学校に行こう。」

 オレが先に入り、ライカを起こす。ライカもよく眠っていたがいそいそろ起き上がりお風呂に直行させた。

 冒険者の姿はこの街では目立つからロミにローブを借りた。ローブが少し小さくて膝までしか隠れない。

 「カノンももう大人だね。僕のローブでは全身は隠せていないや。」

 ロミがオレの背丈に合わないローブ姿を見て爆笑している。

 ライカはぴったりサイズのようだ。嬉しそうに何度も鏡の前で自分の姿を見ている。




 朝食を取り、学校に向かう。さっそく校長室に向かい、ソファーに座った。

 「僕は帝都議会に手紙を書いて、職員に報告する義務があるからゆっくりしていてほしいのさ。」

 そう言うと、ロミは校長室から出ていった。

 オレは暇だ。何もすることがない。ロミの家であのまま寝させてもらっておけばよかったな。

 せっかくだ、本棚でも見させてもらおう。教会の歴史という本を手に取り読む。

 ライカに至っては難しい本しかなくて、すぐに横になって寝てしまった。人型では消耗が激しいのだろうか。よく寝るしよく食べる。

 教会の歴史は数百年に渡ると言われているが、チャーチル教が帝国内で一番崇拝されるようになったのは、チャーチル教皇二世が継いだ五年前からみたいだ。

 あり得ない様な速さで布教し、信者を増えていった。今では帝国国民の四分の一がチャーチル教の信者らしい。当時は教会なんて大きな街にしかなかったが、今では教会がない町なんてよっぽどの田舎だけだ。
 
 この本によると、チャーチル教皇は奇跡を起こせるらしい。胡散臭い。どうせ種も仕掛けもあるのだろう。

 チャーチル教の三銃士についても丁寧に写真つきで書かれていた。三兄弟で三銃士。教会の騎士らしい。オレが帝国の騎士をしている時は存在を知らなかったが、どうやら有名人みたいだ。

 魔人に変化するアルスとはまた戦うことになるだろう。立ちはだかるのであれば倒すだけだ。



 数時間経っただろうか。ロミが部屋に戻ってきた。

 「カノン、帝国議会から許可が降りた。職員たちに伝達をしたし、これでいつでも旅立てるさ。いやあよかったよかった。」

 「数時間で許可が降りるのか。ロミはどんな魔法を使ったんだ。」

 ロミが妖しく笑う。

 「僕は賢者様だよ? 研究したいから旅に出る。止めるなら賢者を辞めると言っただけさ。」

 「それはまた…脅しじゃないのか。それに数時間で帝都とどうやって連絡が取れるんだ。」

 「それは簡単さ。僕にはこの子がいるからね。」

 ロミが口笛をピューィと吹くと、カラスが窓から入ってきた。

 カラスがカァと羽を広げて鳴いた。

 「可愛いだろ。名前はクロスケって言うんだ。この子にひとっ飛びしてもらえば帝都まで三十分さ。空には移動しにくい場所はないからね。」

 なるほど。使い魔のカラスに伝達を頼んだのか。さすが魔女。いや賢者だ。

 「まあ交換条件として週に一度の定期報告と、魔術の研究など依頼はこなさなければならないけど、魔法都市に居続ける必要はないしね。これで心置きなく旅に出られるさ。」

 ロミは嬉しそうに笑った。

 「それはよかった。昨日のアドフルには止めなかったのかい。」

 「アドフルは昨日の決闘から自分の研究室にこもっているみたいでね。会えていないよ。でも、他の職員もまあロミ校長なら大丈夫だろうって言ってくれたさ。それで私たちはどこに行くんだい。」

 そうか。アドルフは初対面から高圧的なやつではあったが、大勢の前で漏らしたんだ。強く生きてほしい。

 「一応、二案考えている。砂漠を抜けて西の街サンドタウンに行くか、このまま南に進んで海港の街オーシャンシティに行くかどちらかだな。教会の動きは北から西に進んでいるから、どちらかで次に起きそうだし。」

 「そうだね。だったら間違いなく砂漠の街サンドタウンだろうね。あそこはアラン公国との国境に一番近い街だ。サンドの街は帝国領ではあるがあまり帝国のことを好意的に思っていないし、教会が反乱や工作をするなら格好の場所だろう。」

 ロミが言った。さすがは賢者だ。仮説に説得力がある。

 「そうだな。砂漠を越えるのは少しつらいが、砂漠の街サンドタウンに行こうか。」

 「決まりだね。あそこは遺跡もある。カノンが調査している間、私は遺跡にこもらせてもらうよ。」

 そう言うと、ロミがメガネをくいっと上げた。

 「まあそれは良い。オレも調査だけが目的じゃないしな。オアシスと言われるところでゆっくりしたいんだ。」

 「オアシスかい。いいね~。しまった水着は用意していない。家に取りに帰らないといけないや。」

 「ロミそう急がなくてもいい。砂の街サンドラまで丸一日かかるし、夜は危ないから明日の朝に出よう。」

 「そうかいそうかい。僕はせっかちだと言われるからねえ。それもそうだ。」

 ロミは頭が良いが少し抜けている。いや、自分が関心があること以外には全くと言っていいほど興味がないのだろう。

 「さて、ここでやることはもうないのさ。家に帰って準備でもしようか。」

 「ああ。その前に腹ごしらえしよう。お腹が空いた。」

 「そうだ! 魔法学校の食堂は美味しいんだよ。旅に出るんだ。最後に食べておこうよ。」

 ライカを起こして食堂に向かう。まだ授業中らしくて席はガラガラだ。

 おすすめのオーク定食を頼む。たしかに美味しい。油っこくなくて旨味がすごい。そして何より安い。100Gでこれだけのご飯が食べられるのはすごく学生が羨ましい。

 食べていると、昼休みになったのだろう。生徒たちが食堂に流れ込んできた。

 ロミが旅に出ることは生徒たちに通達されたのだろう。皆に囲まれている。それだけ生徒から愛されているのだろう。

 オレの周りには男の生徒しかこない。

 「昨日はかっこよかったっす。」「アドルフを懲らしめてくれてスカッとしました。」「弟子にして下さい。」などなど好き勝手に言っている。適当に返事をする。

 隣を見ると、女の生徒はライカに集まり可愛がられている。ライカも可愛いと言われてまんざらではなそうだ。デザートを多くもらっていて、すごく嬉しそうだ。

 「ロミ、もう食べ終わっているしそろそろ行こう。準備したいものもある。」

 「そうだね。生徒諸君また帰ってきたらお話しよう。」

 ライカも全てデザートを食べて立ち上がった。三人で学食を出ると、校内放送が響き渡った。
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