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団長エドガーの災難Ⅰ

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 ―――その頃エドガーたちは

 エドガーたちはカノンを降ろした後、馬車を急がせ帝都に向かっていた。

 「おい、オレたちの功績が讃えられて勇者認定されたらどうする。」

 エドガーは勲章が貰えることが楽しみでしょうがない。

 シイナもクロスナーもフラメルも勲章と褒美が楽しみでソワソワして落ち着かないみたいだ。

 「カノンも追放できたし、報酬もたんまりもらえそうだな。」

 元々カノンはいけ好かなかった。生意気なやつだ。オレの言うことを聞きはしない。いい気味だ。

 すると、No.8クロスナーが聞いた。

 「エドガー団長。もちろん報酬は山分けだよな。」

 「もちろんだ。クロスナー。教会から金をもらい次第、分配しよう。」

 クロスナーも笑う。

 昨晩、停戦を祝って酒を飲んでいると怪しいローブをかぶった男がオレに話しかけてきた。身分を確認するとチャーチル教のお偉いさんらしい。カノンを騎士団から追い出せば500万PYNを支払うと言い、最初は相手にはしていなかったが、先に50万PYNをその場で渡すと言われた。

 断ろうと思ったが、教会と仲良くしていて損はない。チャーチル教は帝国で強い権力がある。オレの騎士団での出世も助けてくれるだろうし、金も貰える。まさに一石二鳥だ。オレは承諾した。

 個別にクロスナーとフラメルを呼び出しカノンの追放を説明した。こいつらには合計で100万PYNが貰えると言っておいた。もちろん協力すると言った。

 騎士の給与はそこまで高くはないからな。ありがたい話だろ。この話を持ってきたオレを敬え。

 カノンどうやらおまえは周りから好かれていないみたいだな。

 ざまあみろ。

 最後はシイナだ。カノンと恋仲だと聞いていたが、お金と権力をちらつかせるとすぐに乗ってきた。今日からオレの女だ。明日から帝国でオレは英雄になる。オレにも追い風が吹いてきたな。

 そうして酒を飲み、シイナと寝た。

 今日も表彰されたら可愛がってやろう。

 自分が英雄になることを想像すると、ニヤケが止まらない。これからはオレが女に困ることはないだろう。



 夕方には帝都に着いた。さっそく城へ向かう。

 謁見の間で王様に報告する。将軍である父ルノガ―の姿も見える。

 「只今戻りました。帝国騎士団、第二小隊団長エドガーです。」

 「よくやってくれた。エドガー。そして騎士たちよ。お前たちの活躍で帝国が有利な条件を、憎き共和国と結ぶことができた。数日中には報酬と勲章授与を行う。連絡をするまで体を休めておけ! 」

 「ハッ! ありがたきお言葉。」

 下がって良いと言われ、謁見の間を出る。

 後は父上と話して褒めてもらおうか。

 「父上。今戻りました。戦場で活躍しましたよ。」

 「おお、エドガーよく戻った。それで、カノンはどこにおる。」

 なんでカノンのことを聞くんだ。まずオレを褒めるべきだろ。

 「カッカノンですか。アイツは、戦争が終わり、もう騎士団で働かないと言って、どこかに消えましたよ。なあお前たち。」

 カノンが消えたことは皆と口裏を合わせている。

 父ルノガ―は手で顔を抑え、なんてことをと言っている。

 「No.6のカノンがいなくても騎士団は大丈夫ですよ。お父上。」

 俺は内心でにやりと笑う。ほらオレをもっと褒めろ。

 「大丈夫なわけがあるか。アイツがいたから戦争で負けなかったのだ。本当にアイツが騎士団を辞めると言っていたのだな。」

 はいと返事する。皆も頷く。

 「なんということだ」と言いルノガーは血相を変えて謁見の間に戻っていった。

 想定していた展開と違うが、今日は家でママとパパに褒めてもらえるだろう。パパを待って一緒に家に帰ろう。

 バンと謁見の間が開き、エドガー来いと父が叫ぶ。

 慌てて中に入ると王様に父ルノガ―、そして議会の偉い人が数人集まっていた。

 「エドガー先程の話をもう一度しろ。」

 「はっはい。カノンが馬車で帝都に帰っている道中で、騎士団は辞めると言って出ていったんです。」

 鬼の形相でルノガーがエドガーに詰め寄る。

 「それは本当だな。」

 「はい。本当です。」

 なんということだと言い大人がざわついている。カノンがいないだけでなぜこんなに騒いでいるのかわからない。

 「あの、カノンがいないだけでなにが問題なんですか。」

 「馬鹿者っ! なぜ事の重大さが分かっていないのだ。アイツが一番戦場で活躍していた。アイツがいなかったら、帝国は負けていたんだぞっ。団長として、なぜ引き止めなかった。」

 「あの無能なカノンがですか。リシャール家の人間だし、評判も良くない。いなくても大丈夫ですよ。」

 「もういい。おまえは口を出すな。下がっていろ。早急に捜索隊を出しましょう。愚息の愚行、お詫びの言葉もありません。」

 オレがなぜ褒められず怒られるんだ。意味がわからない。だんだんと苛ついてきた。

 「待ってよパパ。騎士団の団長はオレだぜ。オレがいれば問題ないだろ。」

 「人前で正しい言葉遣いもできんか。もうなにも発するな。下がっていろエドガー。」

 そう言うと謁見の間を追い出された。

 ムカつくがまあいいさ。カノンはもういない。オレが称賛されるんだ。

 そうだ。今日の父上は機嫌が悪かったんだ。実家に帰らずシイナの家にでも泊まろう。

 名誉・地位・女・金これから貰えるであろうものを思い浮かべると笑いが止まらない。

 何が報酬としてもらえろうのだろうか。楽しみだ。

 エドガーのシイナの家に向かう足取りは軽かった。


 その頃、カノンは自分が帝国から捜索が出されたことを知る由もなかった。
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