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ep4

ウブなシーナ

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シーナは中々寝付けなかった。

告白されて、彼に抱きついた。
GPの体はゴツゴツしていて、逞しかった。
思いだすだけで、体温が上がるきがした。





GPも又眠れぬ夜を過ごしていた。
ランに半ば脅されて、シーナに告白してしまったが、まさかのOKがもらえたのだ。

あの時もっと大げさに喜べばよかったんだろうか。
抱き締めたシーナの体は柔らかかった。髪からはいい臭いがした。
フリット元船長と戦った時のシーナとは別人に思えた。
ああ、可愛いシーナ、大好きだ!

その時突然頭の中にシーナの声が聞こえた。

ー GP 聞こえる?まだ起きてる?ー

部屋の中をキョロキョロ見回してもシーナの姿は無かった。

ー 嬉しくて、舞い上がったかな?気のせいかな。シーナの声が聞こえた気がした ー

ー 気のせいじゃないわよ。さっき渡したのがこの能力、念じるだけで喋らなくても、相手に言葉が届くのよ。
GP 私のことを思って、話してみて ー

ー シーナは、可愛い。大好きだ ー

ー んあっ!
ずるい。そんなこと言って ー

ー これ、便利だな。どれくらいの距離迄届くのかな?ー

ー さぁね。オルカ号とここ位は軽く届くと思うけど ー

ー シーナ以外の人にも、言葉を送れるのかな ー

ー 相手がこの馬語(念話)を使える人限定よ ー

ー 馬語?ー

ー そうよ。そもそもこの頭に話しかける念話は、馬に教わったのよ ー

ー じゃあぼくも、馬と話せるのかな? ー

ー たぶんね ー

ー 話してみたいなぁ ー

ー ねぇ 私とは?
私より馬と話したいの? ー

ー そ そんなこと無いよ
シーナ船長が一番に決まってるじゃないか。バカだなぁ~ ー

ー 酷い ー

ー えっ ぼく何か気に障ること言った?ー

ー もういい。お休みなさい。話しかけないで。ー



GPは、一気に混乱した。
なんで急にシーナの機嫌が悪くなったのか、全く分からなかった。
直前まで楽しく話ができてたのに。







シーナも、自分のざわつく気持が何なのかよく分からずにいた。
馬語を私が使えるようにしてあげたのに、他の人とか馬と話したいなんて。
それに二人だけの会話でシーナ船長って言ったわ。
もうあなたのシーナなのに。
GPのバカ!
シーナは、馬語のチャンネルを閉じて話しかけられても通じないようにして、寝ようとした。
隣のベッドではランが気持良さそうに、寝息をたてて寝ている。

シーナは何だか悔しくなって、ランの布団をめくって、横向きになってるランの尻を叩いた。

「痛~~い!何すんのよシーナ!気持ちよく寝てたのにぃ~」

「私が全然寝られないのに、気持ちよさそうに寝てるなんて、ずるいわ。
ランが私をこんな気持ちにさせたんでしょ。付き合いなさいよ。」

「それ、私じゃないわ、GPよね」

「ランがキッカケを作ったから!」

「はいはい。いいわ。それで?」

シーナは、馬語一連の話をした。

「嫉妬心ね。自分だけ見てて欲しいのに、他の人に目が行く彼にね。」

「そうなの?」

「そうよ。でもそのくらいは、許さないと身がもたないわよ。
男なんて皆、デート中でも、すれ違う女の子の品定めをするものよ。」

「それって、隣の彼女が可哀想じゃない。」

「男は、そう言う生き物だから仕方ないのよ。
シーナだって、どこに行っても男の視線を集めてるでしょ。」

「うん まぁ見られてるのは感じるけど、それって警戒されてるんじゃないの」

「違う違う、品定めしてるのよ。胸やお尻や生足を見られてるでしょ」

「戦って勝てそうな相手かチェックしてるんじゃないの?」

「勝てそうじゃないわよ
ヤレそうかよ。それは、もちろん無理だけど、勝手に視姦してるのよ。
私もシーナも男たちの頭の中では、もう何度も丸裸にされてるわよ。」

「え~~~ GPは、そんなことしないわ。して欲しくない。」

「悪意は無いのよ。それが普通の男性なのよ。
試しに明日彼と町でデートしてみたら?」




翌日

シーナは、ランに言われたようにGPをデートに誘おうと思って、GPの部屋の前に来たが、何故か恥ずかしくなってたたずんでいた。

5分程もじもじしてると、ドアが開いてGPが出てきた。

「あっ!」

「あっ!」

シーナは、走って逃げた。
GPは、シーナを追いかけた

「シーナ 待ってよ。
何で逃げるんだよ。ハアハア」

GPは、どんどん引き離された。

シーナが突然立ち止まり、振り返るとアカンベーをして、また逃げ出した。
シーナは逃げながら、笑っている。

少しずつシーナのスピードが落ちてきて、GPはシーナに追いついて、シーナの腕を掴んだ。

「捕まえた。ハアハア」

「捕まってあげたのよ。」

「何で?ハアハア」

「GP 走るの遅いから。」

「じゃあ何で逃げたの?」

「逃げたかったのよ」

その時GPは、シーナをぐいっと引き寄せ抱き締めた。

「もう離さないよ。」

「んあっ なんでそう言うことサラッと言うかなぁ。
恥ずかしくなるわ。」

「シーナ 大好きだ!」

シーナは、頭から湯気が出そうなほど体が熱くなり、顔は真っ赤になった。

「離して」

「嫌だ!」

「恥ずかしいから」

「もう少しだけ」

「もう~~~」


「ぼくの部屋の前で待ってたの?」

「うん」

「声かけてくれればよかったのに」

「うん」

「何か用があったの?」

「うん。
そろそろ離してくれない」

GPが抱擁を解くと

「GP 私の買い物に付き合ってくれる?」

「買い物?まぁいいけど。
ぼくは荷物持ちかな。」

「荷物?
ああそうね。お願いするわ。」

宿を出ると直ぐに
「シーナ 手を繋いでいい?」
とGPが言ってきた

「えっ う うん いいわよ」

二人は手を繋いで歩きだした。

シーナは繋いだ手にばかり意識がいってしまった。
何だか汗ばんでいるようで、
GPが嫌だと思わないか気になった。
シーナは、繋いだ手を離して

「ゴメンね。私手に汗かくタイプだから」

「シーナが好きだから、ぼくは、シーナの汗は気にならないけど、それだったら」

GPはひじを曲げて、エスコートする姿勢をみせた。

「えっ!? うん ありがとう」

ピッタリと寄り添い歩く二人は、道行く人の注目を集め、シーナの顔はますます赤くなった。

ー 早く買い物して、荷物持って貰えば、くっついて歩かなくていいわよね ー

シーナはGPを引っ張るように、服屋へと急いだ。
服屋では、適当に買い物を済ませるつもりだったが

「シーナ、君にはこれも似合うと思うよ。
そうだなぁ。赤もいいけど、紫も似合うよ。
そうだ。両方買おうよ。」

GPのリクエストに応じてシーナは着せ替え人形のようにアレコレ試着を繰り返した。
そして

「シーナの服に合わせた服をぼくも買わなきゃ」

とGPの買い物が始まった。
海賊にしては、いつも清潔な感じの彼は、服選びも大好きなようだ。

「これなんかどうかなぁ~
シーナどっちがぼくに似合うと思う?」

「もうどっちでもいいわぁ~
これで12回目よ、全部買ったら」

「そんな、冷たいなぁ~」

「だって、お腹減ったもん
服はもういいから、何か食べに行こうよ~」

その後二人は、ちょっとオシャレな店で食事をして大漁亭に戻った。

「シーナ 今日のデートは、とても楽しかったよ」

GPは、そう言うとシーナを抱き寄せた。

「ゴメンナサイ。
ちょっと待って、まだ早いって!」

シーナは、また逃げるように自分の部屋に戻った。

「あ~~ 疲れた~~」

「あれ?シーナ。
デートして来たんじゃ無いの?」

「そうよ。なんで。」

「恋する女の顔してないから。」

「どんな顔なら恋する女なの?」

「今別れたばかりなのに、もう会いたいとかは?」

「ん~無いかな」

「デートでのこと思い出して、ポーっと体が熱くなったりする?」

「それも、特には」

「キスはしたの?」

「彼がしようとしたから、抵抗して逃げて帰って来ちゃった」

「シーナ、だったら、あなたGPのこと、好きじゃ無いのかも。」

「えっ そんなこと」

「明日も彼とデートしたい?」

「ん~ 明日はまだしたくないかな」

「GPが可哀想だから、付き合うの終わりにしたら。
シーナはGPに好感は持ってても、恋愛感情は無いことがよくわかったわ。
これが事実よ。受け入れなさい。」



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