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ep2

カラ伝票

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シーナたち三人は、近くの宿に一泊して、翌朝ル・ドマン商会本店に行った。

時刻は朝8時、ル・ドマン商会は、通常どうりに営業を開始していた。

ローズを先頭に店に向うと。
バントウが出てきて

「ローズ様たちは、これより先には行けません」
と言った。

見れば、店頭にルシェリーとラインハルトが睨むようにこちらを見ている。

「どきなさい!」
ローズが少し気を膨らませ、バントウに当てると、バントウは尻もちを着いた。

「ありがとう。バントウ」

ローズはバントウに一声かけて、三人で進んでゆくと

「あんたたちは、なんの権利があって、ここにやって来たのよ。
今すぐここから立ち去りなさい。」

「ルシェリーお義母様。そこにラインハルトがいるってことは、私がなにしにここに来たかご存知ですよね。
このままじゃ、この店はおしまいよ。
あなたたちも、貧乏一直線よ。
それでいいの?」

「そんな、世迷言を信じると思ってるの?
汚らわしい妾の娘ふぜいが」

「おバカな正妻とその息子を助けてあげようと、わざわざ来たのよ。
私を嫌うのは構わないわよ。
でも、商会の経営状態がめちゃくちゃな事にも気づかずに、お気楽にしてて、いいの?
パパがここまでした店は、満身創痍よ。
そして、あなたが保証人の借金がいくらあるか知ってるの?」

「借金?なんの話?」

「渡された書類に、何も考えないで、ホイホイとサインした覚えは無い?」

「それは、バントウを信頼して」

「それが今大変な状態を招いているのよ」


「バントウ!それ本当なの?」

「今、厳しい状態なのは確かですが、これから、まだまだ」

「バカ!何やってるのよ!
アンタに任せて安心してたのに!」

「商売はいつも上手くいくとは限りません。
苦しい時も有れば、順調な時もあるものです。」


「もういいかしら?
もっともらしい事を言ってるけど、バントウ。
あなたが元凶かもと、私は睨んでるのよ。
私は、ルシェリーやラインハルトを追い出す為にここに来たんじゃ無いわ。
折角パパが作った店を潰したくないの。
ルシェリーとラインハルトのことは、見捨てたりしないわ。
そこをどいて!」

ローズの勢いに気圧されルシェリーとラインハルトが道を開けた。

ローズは経理部門に直行した。
まず、現金残高と帳簿があってるかをチェックしするためだ。

日々営業終了時に、帳簿と現金が合ってるかは、どこの商店でもやってるはずだ。
だが、商会は、それさえも大きく違っていた。

「有るはずの金が無いのはどういうこと?バントウ」

「それは、ルシェリー様やラインハルト様に御用達も有りまして」

「それは帳簿にも載ってるわよ。
○月☓日ルシェリー様に1000万御用達
と記してある」

「バントウ。あなたが帳簿を管理しているなら、この差額はあなたに埋めてもらうしかないわよ。
責任とりなさい。」

「このような大金私には…」

「これまで、この差額を知ってて、調べもしなかった罪は?」

「バントウ、本当なの!」
ルシェリーの叱責にバントウは、ただ下を向くだけだった。

次に在庫のチェックを始めると、ここでも不正がボロボロと出てきた。

帳簿より在庫品の数が少ない。
有るはずの資産が無いことになる。

内部に盗人がいて、商品を持ち出している可能性が一つ、そしてもう一つは、空伝票からでんぴょうだ。

仕入れ先から、品物の納入無しで、納入伝票を受取り、支払いを行う。
仕入先は伝票に書いた金額を丸々受取る。
そして仕入れ担当者は、仕入れ先業者からワイロを受取る図式だ。

「この武具の数が随分と数が合わないわね。」

仕入先鍛冶屋から事情聴取をすると、すぐに不正が発覚した。

「あなたが空伝票をきったのは、誰の指示ですか?
嘘はとなりの彼女の『緋の眼』が全て見抜きますので、無駄です」

販売先にも、伝票上は10点納める所、品物は20点納め、浮いた品物代金を販売先と山分けしてる営業担当もいた。

単純に売上をレジではなくて自分のフトコロに入れた者もいれば。

万引とぐるで手引してた者もいた。

シーナの『緋の眼』で次々とこそ泥まがいの従業員も暴かれていった。

約2週間、業務を停止してル・ドマン商会の大手術がローズとシーナにより施された。

ローズの査察が始まると何人か、行方をくらます者もいたが、業務上横領と背任・窃盗の罪でバントウ以下、従業員の半分近くが守備隊に連行されていった。


ルシェリーとラインハルトは、この様を毎日目を丸くして、傍観していた。

「あなた。次は、私たちを追い出すんでしょう。」

「私はローズです。
ローズとお呼び下さい
お義母様」

「ローズ どうなのよ」

「ちょっとつつしんでいただきたい。
それだけで結構です。
ただ」

「ただ何よ」

「お義兄様が商売人としてこの先経営者になる気があるかどうかは確認しておきたいです。」

「どうなのラインハルト」

「母さん、今回のローズの姿を見てて、ぼくには無理だってわかったよ。
ごめん。」

「私があなたのこと甘やかせ過ぎたのね」

「母さんは、悪くないよ、ぼくがしっかりしてなかったんだ」


母子ははこ劇は、そのへんにして。
私も、今日から本宅に住みます。そして、私の友人として、シーナさん、ランランさんも、ゲストルームに泊まってもらいたいと思います。
いいですね。」


「シーナ、サルドラから運んでもらった荷物、やっと出せるわよ。
ちゃんとした値段で、真面目な人たちと、誠実に販売するわ。」

シーナは、商品倉庫で運んで来た品物を出して、目録をローズに渡した。

「はいシーナ。ここまでご苦労さま。」

「これ、約束の代金より多いけど」

「シーナ、お願いがあるのジュピターを譲って。私本当は、シーナたちともっともっと旅がしたい。
でも、この店を放り出しては行けないわ。
一人ぼっちになるのが怖いの、でもジュピターがいてくれれば、心強いわ。
ね。いいでしょ。」

シーナは、ジュピターに念和を飛ばした

ー ジュピター、ローズがあなたを買いたいって。私と別れることになるけど、それでいい?ー

ー ええ、いいわ。
ローズからそう言われてたの。
私は老馬、もう旅はキツイわ。ここに残らせて。娘のアクアを頼むわねシーナ。ー

「そう言うことだったのね。
これで契約成立、ジュピターもあなたの物よ」

「ありがとうシーナ。
所でランラン、あなたはどうするの。これから」

「へっ?わたし?
やだー、もちろんシーナさんについて行きますよ。」

「そっか。羨ましいな。」

「ローズさんは、いつまでも、私の姉弟子ですよ。シーナさんの弟子1号でしょ。」

「フフっ そうだったわね。
シーナに早く胸揉んでもらえるといいわね」

「ローズさん。あのときシーナさんから何をもらったんですか?」

「『愛』かな。具体的には秘密よ」

♤♡♧♢♤♡♧♢

犯罪って、私たちの世界でも無くならないものですよね。
信じる者が救われる
ではなくて
信じる者がハメられる
ちょっと悲しいですよね。

人に優しくありたいです。
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