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ep2

無名で居たいのに

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「仕方無いわね、相手をしてあげるわ」

シーナがそう言うと、相手の男たちは殺気を増した。

「でもこんな町中じゃあ迷惑でしょ。
場所を変えましょう」

すると野次馬の中から
「闘技場を使えよ!」
と声があがった。

声のかかった方を見ると身なりのいい若者がいた。
彼は数人の黒服に護られるように囲まれている。

ー また厄介な人が来たわね。カネ持ちの坊っちゃんよね ー

「えっ!」とロゼが小さく声を出して、下を向いた。

「ぼくが、スポンサーになろう。
闘技場の使用料と君たちへのファイトマネーを出そう。
勝ったチームには1000万
負けたチームにも200万
出そう」

さっきより増えた野次馬からどよめきが起こった

「おい、勝ったら1000万だとよ、スゲー」
「なぁ、あの女たち『千のギフトをもつ魔術師とその弟子』じゃないのか」
「そうだよ、きっとそうだよ。あんな男たちが挑戦するんだぜ。
間違いないよ。」


「俺たちは、それでいいぜ。
闘技場で、やってやる。1000万は俺たちが貰うぜ、お前たちは俺たちの踏み台になって貰う。」

「私は嫌よ、そんならやんない。」

「ズルいぞ、さっきは、相手してあげるわ とか場所を変えましょう とか言ってたじゃないか
その通りなんだから、逃げるなよ。」

「見世物になるのが嫌なのよ。
縁もゆかりもない人が、こうして絡んでくるのも嫌よ。
名が売れ顔が売れると、そう言う輩が寄ってくるのよ。
闘技場は、断固拒否!
やるなら今ここで!
それ以外は認めない!」

「それじゃあ、折角の1000万が」

「バカね、本気で勝てると思ってるの?
5秒数えるから
やる気が有るならかかって来なさいよ。

野次馬はさがって!
ロゼ・ランランさがらせて」

「クソっ!やってやる」

「5・4・3・2・1
参りました。」

「なに?」

「降参って言ったのよ。これで、あなた達の勝ちよ。
あなた達は『千のギフトをもつ魔術師とその弟子』かも知れない、私たちに勝ったのよ。
好きなだけ言いふらして自慢しなさいよ。」

「こんなのってあるか!」


野次馬からもブーイングが飛ぶ
「そうだそうだ!やれやれ!」
「逃げるのか、きたねーぞ」

シーナはヤジった人をキッと睨みつけ

「あんた、ここに出てきて私と戦いなさい。
シバいてやるから!」

「俺は関係無いだろ!」

「私だって関係ないわ!歩いてたら、いきなりこの人たちに、戦いを申し込まれたのよ。
どこが違うって言うのよ。」

「ごちゃごちゃと よくしゃべる女だなぁ
ごたくはいい、降参は、認めない。行くぞ」

シーナが手を横に振り払うと、三人の男たちは急にコケた。

シーナは『再構築』で彼らのズボンをキツキツのパッツンパッツンにして歩けなくしたのだ。

シーナが目配せするとロゼ、ランランも動いて
三人の男たちの首筋には短剣が添えられていた。

「まだやる?」

「くっ 殺せ!」

「まったく。私が降参したところでやめてたら、よかったのにね。
お互い。」

「お互い?」

「これでまた、あんたたちみたいなのが寄ってくるのよ。
そっちが勝ったことにしてもいいわよ。」

「馬鹿にするな!
俺たちは、お前らの命を狙ったんだぞ、殺せ!」

「いい加減にしてよ、勝手に突っかかってきて、負けたから殺せって?
人殺しなんて絶対嫌よ。」

シーナは、いつの間にか羽織ったローブをバサッと翻し

「ロゼ、ランラン行くわよ。」

身体強化してダッシュでその場を離れた。

「も~~~イヤ!
ロゼ! わかる!
大金持ちとか、やたらと強いとかは、厄介事を呼び込むのよ!」

「そんなこと言ったって、私金持ちの家にたまたま産まれただけだし
それでなにかと狙われるのは、仕方ないってわかったわよ。」

「だったら、ワガママは控えてよ。
海沿いルートなら今頃首都についてたんだから。」

「シーナ それ言うのはズルいわよ。
あなただって、納得の上でここに来て、『極楽極楽』とかお風呂で言ってたじゃない」

「シーナの負けですね~」
ランランの一言でこの場は収まった。



ゴタゴタから逃げたいとも思ったが、既に昼過ぎの時刻で出発するには遅過ぎるとシーナは思った。

「クサツルンで、もう一泊するわよ」

「やった~」
「ふふ 楽しみ」

こうして、この日は思いっきりグレードを下げて、『古びた』と言うか、地震でもきたら倒れそうな宿をとった。

「シーナ いくら目立ちたく無いからって、ここはどうかと思うわ。
なんか部屋もカビ臭くない?」

「私は、昔を思い出します。
チョイの間の客だと宿に泊まれないので、空家に忍び込んで、夜露を凌いでました。」

「ランラン 辛かったなあ。よくここまで我慢して生きてきた。
お嬢様とは大違いだね」

ロゼは、むくれてソッポ向いている。

「ロゼさぁ この旅が終わるのも、もうすぐよ。
終わったら、また金持ちのお嬢様の生活が待ってるんだから、いいじゃない」

「そんなこと、わかってるわよ!
貧乏人体験、楽しいなぁー」

その宿では、5~6人入れるこじんまりした内風呂があるだけで露天風呂とかは無かった。

三人で湯に浸かっていると

「やっぱり、ここに泊まってよかったわ」

「ロゼ どうしたのよ?」

「いいお湯じゃない。
硫黄の臭いがする。
いかにも温泉に来たって感じるわ」

「そうね。確かに。
明日出かける前に朝風呂もいいわね」

「賛成」
「わたしも賛成」

「こんな『隠れ家』また来たいなぁ」

ロゼのその言葉には、シーナもランランも、ツッコミを入れなかった。
彼女も少しずつ、変わってきてるんだと見守っていた。


♤♡♧♢♤♡♧♢

ローズが少しづつシーナとの旅の中で成長していきます。
ワガママお嬢様は、実は大事な使命を
この先もお楽しみに。
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